Criteo は2018 年10 月3日、都内で「Criteo Brand Summit 2018」を開催。国内外の主要ブランドを展開する企業向けに、Criteo の最新のビジョン、戦略、ソリューション、事例などを、ゲストスピーカーの講演も交えながら、共有しました。そのイベントの内容を2回にわたり、ニュースレターの形でお届けします。
Criteo は月間アクティブユーザー数が14 億以上という世界最大規模のオンライン上の消費者行動データを保有しており、そのユーザーごとに数百もの購買シグナル*を取得しています。こうした膨大な消費者データをAI が学習・分析するエンジンを構築、「この顧客は次に何を買うか」を予測して一人ひとりに最適化した購買体験を提供しております。
新規顧客や離脱顧客など、商品やサービスへの認知のレベルが異なるそれぞれの層に、高い確度でリーチするには、リターゲティングなど一つの手法に絞らず、エンゲージメントレベルに合ったアプローチの仕方が求められます。こうしたお客様の声をもとに、Criteo はマーケティングのファネルを3 つの段階に分け、そのすべてを段階的にカバーすべく、「フルファネル」へとサービスを拡大しました。
Criteo のAI を活用した主力ソリューションには次の3つがあり、これらすべてを兼ね揃えたのがフルファネルとなります。
サイトを訪問したことがあり、需要が顕在化している層を効率よく刈り取るCriteo Dynamic Retargeting(クリテオ ・ダイナミック・リターゲティング)、1 回目に購入した顧客が2 回目も購入する「F2 転換」やロイヤルカスタマーを育てるCriteo Audience Match(クリテオ・オーディエンス・マッチ)、新規見込み客を予測しターゲティングした上でリーチするCriteo Customer Acquisition(クリテオ・カスタマー・アクイジション)という3つのソリューションを、各ファネルの顧客に合わせて、フルに活用することで、種をまいて刈り取りながら新しい顧客を開拓していく取り組みの精度と効率向上を図れます。
2018 年、Criteo をご利用の広告主において、リターゲティングからフルファネルへの動きが活発になった背景には、「獲得効率はよくても、獲得数が頭打ちになる」や、「より一層の成長への期待」が挙げられます。「まだ商品やサービスを知らない人たちに知ってもらい、興味・関心を持ってもらうための施策が求められる」というマーケティング担当者が直面する課題に応えるサービスとして、フルファネルの展開に力をいれておりま
す。
当社の国内セールス部門統括コマーシャルディレクターの小野 良一は、「顕在化している顧客を刈り取るばかりでは焼き畑の状態になる」と述べ、「膨大な消費者データをどのように運用に落とし込むかが競争力につながる」と強調しています。
*購買シグナルとは、EC サイトで、顧客が何と何を比較して、何を悩んで何を最終的にカートに入れたかという購買の意思決定のサインをさす。
Case Study:株式会社 三越伊勢丹様 Criteo のソリューションをフルファネルで導入
~株式会社三越伊勢丹 百貨店事業本部EC 事業部 事業部長 吉田尊弘様 ご講演内容要約~
三越伊勢丹グループの流通革命
2018 年8 月、三越伊勢丹グループがCriteo のフルファネルのソリューションを導入した。Criteo のCustomer Acquisition で新規EC 顧客の取り込みをはかり、EC サイトを訪問した人にはDynamic Retargeting で再訪/獲得を促進、そして店舗のみで購入している利用者にはCriteo Audience Match でEC サイトへの訪問を促す。同社はCriteo のフルファネルソリューションを文字通りフ ルに活用し、自社のデジタルトランスフォーメーションを推進している。
フルファネルを導入した背景として「長い歴史をもつ三越伊勢丹は今、リアル依存から脱却し、デジタルフォーメーションが必要。それをどう実現するかが鍵になる」と、吉田様は話す。
百貨店の三越は、1673 年、江戸時代に呉服販売の「越後屋」として創業し、店前現銀無掛値(たなさきげんきんかけねなし)というスローガンのもと、「店頭販売」で町人の心を掴んだ。当時は大名や名家などの裕福層から前もって注文を聞き、後から品物を持参する「見世物商い」や商品を屋敷に持参販売する「屋敷売り」で支払いは盆暮れや12 月のみの掛売りが慣習だった。掛売りの金利がかさむため商品価格も高かった。そこへ商品の値段を下げた定価制、店頭での現金取引を促し、流通革命の先駆けとなった。
1904 年には日本で初めて「デパートメントストア宣言」をし、百貨の品揃えを「陳列販売」スタイルに切り替えた。百貨店でエスカレーターを導入したのも三越日本橋本店が国内初。多くの消費者がエスカレーター試乗に来店するなど顧客の関心を引きつけてきた。
こうしてリアルな接客を通じて、優秀な販売員は顧客の購買行動を捉え、販売テクニックを高め、商品をどう並べればよく売れるかという陳列のノウハウを蓄積した。伊勢丹では1997年にEC事業を開始。2002年に日本でリスティング広告をスタートしたGoogle が誕生したのは1998 年。まさにインターネット黎明期に、三越伊勢丹グループのオンライン展開が始まった。
デジタルで一元管理する販売ノウハウや顧客情報を、いかに活かすかー。来店しない顧客をも取り込める、デジタル戦略に重点を置いて20 年。現在、三越伊勢丹グループは、デジタルやウェブを活用したリアル店舗とオンラインのシームレス化に取り組んでいる。
「人と時代を繋ぐ」4つのEC プラットフォーム
三越伊勢丹グループは、オムニチャネル展開として国内外のあらゆるいいモノを世界に販売するEC プラッ
トフォームを提供している。伊勢丹では最先端のファッションや流行、三越では五月人形や呉服が売れる。このように客層が異なる伊勢丹と三越はそれぞれにオンラインストアを構える。3つ目に、購入は年に数回に限られるような高額商品の品揃えを誇る「ISETAN MITSUKOSHI LUXURY」がある。4つ目が越境プラットフォームの天猫国際(Tmall Global)、京東(JD Worldwide)での出店だ。
百貨店はその名の通り、多種多様な品揃えであるため、老若男女、様々な世代の顧客が来店する。オンラインストアの利用は30 代から40 代の利用比率が高いが、50 代から60 代も一定の利用者がいる。注目すべきは1 回しかオンラインストアを利用しない顧客が多いことだ。ここにCriteo のフルファネルを採用した狙いがある。
同社は、オンラインストア離脱顧客への再訪促進を目的にCriteo Dynamic Retargeting(クリテオ ・ダイナミック・リターゲティング)を2014 年に導入。2 年間の運用の後、新規顧客との接点拡大は難しいと判断し、Criteo サービスの利用をストップしたものの、2018 年8 月には、顧客リテンションと、リピート購入を促しロイヤルカスタマーを育てるCriteo Audience Match(クリテオ・オーディエンス・マッチ)、同年9 月には新規顧客への認知と興味を促すCriteo Customer Acquisition(クリテオ・カスタマー・アクイジション)を導入し、フルファネル化に踏み切った。
店舗(オフライン)のみの利用者増に勝機
もともと同社のオンラインストアの動向としてはギフトを購入する際に利用されることが主流だったのだが、ここ5 年ほどでファッションなど日用品購入が顕著に伸びている。
現在、同社では、①店舗利用者によるオンラインストア利用促進 ②三越伊勢丹を利用したことのない消費者にオンラインストア利用促進を図っている。
購買データを見ると、残念ながら店舗をご利用いただきながら、オンラインストアをご利用いただけていない方の割合がとても多い。一方、金額ベースでは当然「店舗のみ利用者」「EC のみ利用者」に比較して「EC購入&グループ基幹店舗購入者」の方が圧倒的に多く、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)が高い。「店舗のみ利用者」のLTV の伸び代は大きく、EC 利用を促すことの重要性が明らかとなった。
百貨店だからこそ重要視する顧客生涯価値。同社では、店舗への来店顧客には積極的にEC 利用を促しつつ、新規顧客との接点拡大のハードルが低いオンラインストアへの集客に力を入れる。
百貨店に並ぶ高額な商品は、日用品のように気軽とはいかず、慎重に購入を検討される。「例えば10万円の商品の購入を悩む顧客は、ネット検索もして検証する。そんな時にCriteo のフルファネルを活かせれば」と同社の吉田様は話す。
同社の今後の展望として、「顧客セグメントX 商品カテゴリー」ごとに細分化した施策のほか、各顧客セグメントの需要に対し商品価値の伝え方を工夫するなどの施策を展開する。「高額な商品は陳列しているだけでは売れない。年に数回しか買われない商品については、その価値をしっかりと説明していく」と吉田様。こうした施策をオンラインストアで展開するため、リアル店舗とオンラインのシームレス化に挑む。