「明日の問題」ではないクッキーアポカリプス:マーケターが今から備えておくべきこと

更新日 2023年02月22日

「クッキーアポカリプス」をめぐるパニックは、かつて大騒ぎとなった西暦2000年(Y2K)問題を思い起こさせます。コンピューターのバグにより、金融機関から航空会社、原子力発電の管理に至るまで、あらゆるものを制御するデジタルシステムに不具合が発生するのではないかと、当時は誰もが不安を覚えたものです。しかし、Y2K問題とサードパーティCookie廃止を控えた現在の状況には、大きな違いが1つあります。それは、Y2Kによる実害はほとんどなかったのに対し、クッキーアポカリプスはオンラインのエコシステムを根本から覆すような問題を確実に引き起こすであろうという点です。

特にデジタル広告に関しては、この変化が広告業界全体に現実的かつ広範囲に影響すると見て間違いありません。またY2K問題とは違い、今すぐ準備を開始しなければどのような問題が起こるかが予めわかっており、しかもその影響は甚大です。たとえば、マーケターはパーソナライゼーション不足をはじめ、アドレサビリティの制限、最適化効果の低減、消費者のショッピングジャーニーに対する可視性の低下、パフォーマンス測定精度の低下といった影響を被るものと考えられています。一方、メディアオーナーはオーディエンスに対する深い理解や、高品質な顧客体験を現在と同レベルに維持・両立できなくなり、結果として貴重な収益源を失ってしまうおそれがあります。

とはいえ、広告業界がサードパーティCookieに代わる機能をシームレスに導入し、こうした影響に対処しながらY2Kで懸念されたような大惨事を回避できれば、進化の過程でより一層プライバシーが確保されたサービスを展開していけるようになります。そうすれば、消費者とマーケター/メディアオーナー間での公平な価値交換が成立すると同時に、消費者には自身のデータに対する透明性とコントロールが確保されるようになるでしょう。つまり、このエコシステムを構成するすべてのプレーヤーは公平であり、全プレイヤーにインターネットの次の変革で先陣を切るチャンスが与えられているということです。

Googleは先日、Cookieの完全終了を2023年後半まで延期するとしました。廃止までの猶予期間は必要とはいえ、いつまでも「明日の問題」として先延ばしできるわけではないため、これはデジタル広告の新時代に向けて準備し、強固な基盤を構築するチャンスと捉えるべきです。

Criteoは「すべてのお客さまに豊かな体験をお届けする」を、この先2年間のビジョンとして掲げています。これには個人データがどのように、どの範囲で共有されるのかを消費者がコントロールでき、その見返りとして豊富な選択肢や高品質のコンテンツ、柔軟性といった価値を、安心して手にできるようにすることも含まれます。そこでCookie廃止を控える今、マーケターがY2Kのような混乱を回避するために今から準備できる3つの対策をご紹介します。

1. ファーストパーティデータ戦略を立てる

ファーストパーティデータとは、マーケターやメディアオーナーがつながりのある消費者から直接受け取る情報のことです。データの共有に同意(オプトイン)した消費者には、パーソナライズド広告や商品レコメンド、優れたサイト体験、メッセージを届けることができます。

ファーストパーティデータは以前から重視されてきましたが、サードパーティCookieの廃止に伴い、ますます重視されるようになっています。というのも、マーケターが個々の消費者のショッピングジャーニーを把握するには、オンラインで消費者を発見・リーチする新たな手法が必要になるからです。また、メディアオーナーもサイトでの収益化および優れたユーザー体験の提供を継続的に行うために、ファーストパーティデータが必要です。

そこでCriteoは、先日2021年の「Best First-Party Data Strategy」を受賞した「First-Party Media Network」をマーケターとメディアオーナーの双方に展開することによって、プログラマティック広告の新時代のニーズにお応えします。このネットワークは、デマンドサイドとサプライサイドの深く直接的な統合に加え、卓越したコマースデータと先進のAIを組み合わせて構築されており、包括的なオーディエンス戦略を通じて優れたコマース成果を生み出します。

2. ID変革に備えて先手を打つ

社内でファーストパーティデータを蓄積することも重要ですが、そのデータをファーストパーティ・メディア・ネットワークを通じて拡充すれば、今後のIDアップデートに左右されることのない耐久性に優れたIDにより、消費者とのつながりから最大限の価値を引き出すことができます。これらのIDには、ファーストパーティの匿名ID、ハッシュ化されたメール、暗号化された電話番号・郵便番号・世帯ID、そしてRampID、netID、Unified ID 2.0といった、サードパーティIDを通じて渡されるデータが含まれます。

また、消費者が自分のデータをマーケティング担当者やメディアオーナーと共有することをオプトイン(またはアウト)するのに役立つ「シングルサインオン(SSO)ソリューション」をテストして、独自のID基盤を構築することもできます。OpenPassを利用すれば、ログイン中のユーザーだけでなく、ログインしていない消費者にもオープンなインターネット上でリーチすることが可能です。オープンソースのソリューションとして開発されたOpenPassは、prebid.orgを通じて業界全体で幅広く利用できるようになっています。OpenPassが目指すのは、より軽いパーソナライズ設定を選択した未ログインの消費者に対しても、「有料の壁」や「ニュースレター登録の壁」に阻まれることなく、優れた広告や特典オファー、コンテンツを配信し、より充実した体験を提供することです。

3.オーディエンスを増やす

サードパーティCookieが廃止されるまでの間、同時進行する形で広告活動の目標達成、および新規オーディエンスへのリーチをサポートする代替ID、およびターゲティングソリューションをテストすることも重要です。まだサードパーティcookieが利用できる今のうちに、cookie廃止後の世界がどのようなものになるのかを知ることは可能です。

その方法として、たとえばCookieに依存することのない1対1のターゲティングが可能なソリューションや、コホート/コンテクスチュアルターゲティングをテストすることなどが考えられます。また、オムニチャネルソリューションを活用した類似モデリングを用い、顧客の属性と実店舗での購入履歴を共有しながら、理想的な潜在顧客に合わせてキャンペーンを高度に最適化することも可能です。これらの準備や変更を今すぐ適用・実践し、新しいインマーケットなソリューションをテストしておけば、より多くの情報をもとに戦略を策定することができます。

サードパーティCookieへの依存から脱却するための次のステップ

マーケターやメディアオーナーにとって、強力なファーストパーティデータ戦略の構築が最重要課題となっていますが、戦略の第1歩はファーストパーティデータをファーストパーティメディアネットワークに渡すことです。また、データを実際にアクティベートし、コンテクスチュアル、コホート、オムニチャネルキャンペーンに活用して新規ユーザーを発掘するなど、サードパーティCookieが使えなくなるまでにファーストパーティのオーディエンスを拡大しておくことも可能です。

今後、Y2Kレベルのパニックが起こることは避けられませんが、今から変化に備えておけば消費者にプライバシー保護と優れた関連性を提供し、消費者を喜ばせながら競争優位性を確保するチャンスは得られるはずです。

ファーストパーティ・メディア・ネットワークにデータをオンボーディングし、Cookie廃止後の世界で成功を収める方法について、Criteoのエキスパートにご相談ください

メーガン・クラーケン

Megan Clarkenは、Criteoの最高経営責任者(CEO)です。 Criteo入社前は、NielsenのGlobal ...

最高経営責任者(CEO)