インフルエンサーの4割超が「ステマを依頼された経験あり」
本当は広告であることを隠し、あたかも個人の感想や口コミであるかのように情報を拡散する「ステマ(ステルスマーケティング)」。いわゆるインフルエンサーやタレントに謝礼を払った上で自社製品を使ってもらい、SNSなどで「この化粧品、すっごく良かった!」というような感想を投稿してもらう手口がよく知られています。ステマは、「好きな著名人と同じものを買いたい・使いたい」というファン心理を利用しつつ、その裏でファンをだます行為とも言えるため、発覚して「炎上」してしまうケースもよくあります。しかし、その「炎上」によってかえって商品が注目を集めるという「効果」もあり、炎上のリスクを冒してでもステマを行う企業は後を絶ちません。
実際、SNS・インフルエンサー事業を展開する株式会社リデルが2022年に国内のインフルエンサー300人を対象に行った調査で、ステマを広告主から依頼されたことがあるかどうかを聞いたところ、「ある」と回答したインフルエンサーは全体の41%。そして、そのうち「依頼を一部受けたことがある」と回答した人は42.3%に上りました。
ステマ=不当表示として法規制の対象に
このように日本ではいまだ日常的に行われている「ステマ」ですが、欧米ではステマを法規制の対象とする国が増えています。
消費者庁によると、OECD加盟国のうち名目GDP上位9カ国のうち、ステマの法規制がないのは日本のみで、日本の消費者のみがステマのリスクにさらされているのが現状です。実際、グローバルの事業者が日本の消費者に対してのみ、ステマを行った事例も報告されています。
こういった現状を重く見た政府は、2022年12月に有識者検討会の提言をまとめ、消費者庁が主体となってステマへの法規制を強化する方針を明らかにしました。現状の景品表示法では、ステマのように広告である旨の表示がない広告については、不当表示に該当する文言がなければ規制できないことになっていますが、同検討会ではステマそのものを不当表示とする方針を示し、2023年夏ごろをめどに、同法が定める「不当表示」に、「事業者による商品・サービスの表示であることを消費者が判別するのが困難であるもの」を追加することを明らかにしました。ここでいう「事業者による商品・サービスの表示」とは「広告」のこと。つまり、「広告であることを明確に表示していない広告」を「不当表示」として規制対象にすることが示されたのです。
具体的にどのような表示が「ステマ」とされるのか、消費者庁では今後、運用基準を策定することになっていますが、主に以下のような例を想定していると言われています。
- 電子商取引(EC)サイトの出店事業者が顧客に依頼や指示をしてレビューを書かせた場合
- (他社製品を貶める書き込みを含む)
- 企業がSNS(交流サイト)でインフルエンサーやタレントに金銭や物品、イベント招待など経済上の利益を提供し、目的に沿った書き込みをさせた場合
- 「広告」と「第三者の感想です」の表記が入り混じっていて、広告かどうかの判断が難しい場合
なお、ステマと認められた場合は、景品表示法違反として消費者庁が再発防止を求める措置命令を出し、広告を依頼した事業者名を公表。従わなければ2年以下の懲役または300万円以下の罰金または併科とされることになっており、両罰規定で法人も最大3億円が科される可能性があるとされています。
ようやく欧米並みにステマ規制が強化されることになった日本。意図的にステマを行っている企業はもちろん、結果としてステマに繋がるような行為(インフルエンサーとの連携、商品開発など)を行っている事業者は、その行為が結果として消費者を欺くことになっていないかどうか、今一度、慎重に見極める必要があります。