広告業界ではサードパーティ・クッキーの廃止に向けて、ライバシーサンドボックスのテストが進行中です。このテストで有意な効果を引き出すためには規模が必要である理由を、当社 CPO トッド・パーソンズが詳しく説明します。
2024年の年始に、Google が Chrome トラフィックの 1% でサードパーティ・クッキーの制限を開始するという、極めて重要な出来事が起こりました。 この瞬間から、クッキーに基づく広告が提供されるオーディエンスと Google プライバシーサンドボックスの API ツールに基づく広告が提供されるオーディエンスとの間での広告パフォーマンスを比較する、5か月間のテスト期間が正式に始まりました。 Chrome トラフィックの 1% を対象としたこのテストは5月まで続き、今年後半に予定されているサードパーティ・クッキーの完全廃止後のステップを決めるため、英国の競争・市場庁(CMA)による評価の基準として提供されます。
このようなテストは今後の広告エコシステムに必要不可欠です。しかし、最近少し気がかりだと感じているのは、テストを行うテクノロジー・プロバイダーではなく、広告主に当事者意識や責任を求める業界の声が多いということです。 マーケティング担当者も A/B から コンバージョンの最適化まで、テストと無関係というわけではありませんが、プライバシーサンドボックス API のテストを担ってもらうには、テストを行うだけでなく、適切な分析や優位な統計結果を示すという面で大きな負担がかかります。 また、いろいろな広告主と話す中で率直に感じるのは、広告主は全く新しいシステムでテストを行うためのリソースを持ち合わせていない、ということです。 このため、テストから正確で有意な結果を得る責任は、テクノロジーに関する深い知識や経験を携えており、プライバシーサンドボックス API を実装する能力を備えテクノロジー・パートナーが負うべきでなのです。
また、プライバシーサンドボックスのテストを単独で行うのではなく、アドレサビリティを支援する他のツールと比較できる状態で行うことが重要です。 この件に関しては今後の記事で詳しく説明します。まずはプライバシーサンドボックスのテスト手法を見ていきましょう。
テストのスケジュールと指標
以下は今後半年間で Criteo が行う主なテスト段階をまとめたものです。 現在当社はイテレーション期間に先立って1月初頭にテストを開始しています。すべてのテストメカニズムが正しく機能し、正しい測定基準を取得できていることを確認するため、引き続き評価を行います。 その後、3月中旬から2か月の非公開テスト期間に入り、遅くても6月15日に予定されている英国の競争・市場庁(CMA)に提出する最終データ報告書の基礎となるテストを実施します。 これまでと同様、報告書を作成する過程では、皆様に進捗状況を都度ご報告する予定です。
当社のテスト手法と方法論:当社はクライアントやパートナー、ひいては業界全体に対し、広告の経済性が今後も機能し続けることを保証する責任があります。 このため、当社で分析するグローバル指標は CMA だけに向けたものではなく、業界全体の利益を追求したものであり、広告パフォーマンスの向上を目指すものです。 当社のテストは広告支出に対する継続的なリターン率と、これがパブリッシャーの CPM に与える影響に重点を置いています。 広告主にとって、ポジティブな ROAS を維持することは非常に重要であり、パブリッシャー CPM の健全性は ROAS にかかっています。 ROAS が低下すれば、マーケティング担当者は予算を減らすかパフォーマンスを予測できる他のチャネルに投資を再配分するため、CPM も低下します。 当社で詳しく評価する指標には他に広告ボリュームに関する指標、収益、1ドルあたりのクリック数とコンバージョン、インプレッションあたりのクリック数、レイテンシと入札リクエスト数などが含まれます。
テストの対象分野について
新しい API のテストは標準的な技術インテグレーションのセットアップとは異なり、非常に複雑で、エンジニアリングへの膨大な投資が必要です。 Criteo ではプロダクトチームと研究開発チームに1,000人の従業員を抱えていますが、その多くが Google プライバシーサンドボックスを含む、今後のアドレサビリティ・ソリューションの開発と評価に従事しています。 Google と長年提携している当社は、過去3年間にわたり、週2回ほど顔を合わせて打ち合わせを実施し、計画や戦略管理を行っています。また、数多くのワークショップに参加して、技術的なテーマについて掘り下げるだけでなく、API 設計のレビューや作成を行ってきました。
1% のクッキー廃止に備えるに当たり、当社のチームは Protected Audience API、Topics API、Attribution Reporting API などのプライバシーサンドボックス API との統合を含めた設定を問題なく終えるため尽力してきました。 また、新しい専用の入札モデルおよび入札インフラストラクチャに加え、ユーザーのショッピング行動を収集して保管するための対応策を開発し、Protected Audience API の興味・関心グループに導入する予定です。 さらに、新たな専用のレポート・パイプラインとインフラストラクチャに加え、Protected Audience に対応した新しい商品レコメンド機能も開発しました。
当社は、このプロジェクトにおけるイノベーションを通じて、プライバシーサンドボックスに関する取り組みにおける当社のリーダーシップを強化し、自信を持ってテストに当たるための備えを実現できたことを誇りに思っています。 しかし、テスト結果の質が、当社のイノベーションや方法論だけでなく、サンプルや数字の標準化によって変わってくることも、ここで強調しておきます。
統計的有意性の実現
テストの準備段階の初期から発見したことの一つに、プライバシーサンドボックスの被験者は一人ひとり異なっているため、被験者の規模が重要だということがあります。 たとえば、当社を利用いただいている広告主クライアントは220社の小売業者やブランドセーフティが確保されたオープンインターネットのプレミアム・パブリッシャー1,200社を含む18,000社にわたり、週当たりのインプレッション数は1億件にも及ぶため、統計的有意性が増します。 ただし、プライバシーサンドボックスに参加している小規模な DSP や個人広告主にはそのようなリーチがなく、有意な測定結果を実現する上で必要なテスト結果を得ることは困難です。 また、統計的有意性の基準に達することが可能な独立したトラフィック量を抱えるパブリッシャーはほとんどありません。
今回のテストの、Chrome トラフィックの 1% という割合は(Chrome ユーザー約3,200万人とはいえ)小さく思えますが、広告インベントリを大規模に購入していない小規模な DSP ではデータを収集する機会が圧倒的に少なくなり、統計的有意性の確保に苦労する可能性があります。 DSP が苦労するということは、個人の広告主も同じ問題をより大きな規模で経験することになります。 当社では、大規模なテスト環境の必要性を検討しながら、十分なデータを積極的にテストし、収集しています。 必要とされる基準値に達したら、初期段階で得られた情報をすべて共有さいたします。
「当社はクライアントやパートナー、ひいては業界全体に対し、今後も広告の経済性が機能し続けることを保証する責任があります。」
正確で有意なテストを行う上で考慮すべきことがもう一つあります。それは、参加する DSP すべてが比較可能な環境を用意するということです。 参加者同士の環境に差異があると結果の有意性がなくなり、バイアスの影響を受けやすくなります。 たとえば、複数の DSP が、サードパーティ・クッキーもプライバシーサンドボックス API も利用できる環境に置かれたユーザーの扱いについて合意しない場合、結果が不正確でゆがんだものになってしまう可能性があります。
こういった差異が見落とされないよう、当社では、Google や CMA と頻繁にコミュニケーションを取り、参加するテスターが整合性のある環境で差異を回避できるよう、テスト期間中サポートし続けます。
プライバシーサンドボックスでアドレサビリティ戦略を補完
先ほどこの記事で述べた通り、プライバシー・サンドボックスに関して Google と連携することは、当社アドレサビリティに関する問題を解決するための多角的なアプローチにおける1つの柱に過ぎません。当社では、ファーストパーティ・データ・ソリューションに加え、小売業者のeコマースサイトやソーシャルチャネルといったクローズド環境の活用も重視しています。 こういった多様なソリューションを、コンテクスチュアル、およびその他のクッキーレス・コマースシグナルを AI を通して恒常的な統合型プロダクトに融合させることで、クライアントはパーソナライズされた広告を利用して業績を上げるだけでなく、新規顧客を獲得できます。
当社では、Chrome の変化の可能性に備えておくことがクライアントのマーケティング活動を活かす上で、また、パブリッシャーの収益化において必要不可欠だと考えています。 プライバシーサンドボックスのテストが予定通り進めば、エコシステム全体の利益になるよう、確実に変化への備えを推進します。 当社がこのテストを深刻にとらえているのはこのためです。
ともにテストを進める
プライバシーサンドボックス・ツールは複雑で実装しにくいものです。 当社はすでに方法論や有意な規模という点で抜きんでているため、広告主やパブリッシャー、その他の大規模な DSP には当社のパートナーとなっていただき、マーケティング目標に合わせて投資を最大限に有効化していただくことをお勧めします。 テストで利用できるのが Chrome トラフィックの数パーセントだけだとしても、Google の提案を具現化する上で当社の結果の裏にある影響力は多くを語ります。私たちは、業界全体のクライアントを継続してサポートしていきます。
現在、Criteo では、すでに機能している Google プライバシーサンドボックス・インテグレーションに加え、ファーストパーティ・データを有効活用してクローズド環境でキャンペーンを実施することができます。つまり、バランスの取れたアドレサビリティ戦略をクライアントの皆さまに代わって実行することができます。 通常の Criteo をご利用中のパートナーの皆さまは、適切な実装さえ行ていただければ、特に対応を行っていただかなくても自動でテストに参加できます。 Criteo のキャンペーンは Chrome でのアドレサビリティを将来的にも実現するための対策が自動的に施されます。 当社の最適化エンジンと業界最高クラスの AI は、利用可能でかつプライバシーに配慮した情報に基づき、適切なアドレサビリティ・ソリューションを適切なタイミングで選択して、ユーザーレベルまたは関心ベースのターゲティングを可能にします。お客様がどの API を使用するかを決める必要はありません。
半年ほど経てば、プライバシーサンドボックスの今後に関すてより多くのことが分かるはずですが、それまでの間、広告主の皆さまはテクノロジー・パートナーが統計的有意性を備えた結果の基準を満たすかどうかをご評価ください。 企業や小売業者の皆さまは、テクノロジーに関する非常に複雑な問題の解決に時間を費やすことなく、商品の作成や販売、企業の成長に注力できます。 そのような問題の解決は、常日頃から解決に取り組んでいる当社にお任せください。
サードパーティ・クッキー廃止後の世界で役立つ次世代広告ツールについて詳しくは、アドレサビリティハブをご覧ください。ブックマークしていただくと、2024年を通して最新情報をご確認いただけます。