偶然知った商品を躊躇なく買う人が増えている
これまでネットでのショッピングでは、気になる商品を見つたら、じっくりとスペックや品質について説明やレビューを読み、類似商品と比較検討、割引価格や特典付きで売っているショップをみつけて・・・・と、一連のいわゆる「カスタマージャーニー」を経るのが一般的でした。
しかし、オンラインショッピングが「当たり前」になり、24時間いつでもスマホから買い物ができる環境が当たり前となった今、 人々の消費行動には、これまでにない変化が起きています。
Googleでは、この変化について、以下の3つのトレンドを指摘しています。
- 買う瞬間まで知らなかった商品を買うことに躊躇しなくなっている
- 何かを買うために店やECサイトに行く時点で、具体的に買うものを決めていない
- 暇つぶしにスマホを眺めているときに偶然知った商品を買うことに躊躇しなくなっている。
Googleでは、この新しい消費の形を「パルス型消費」と呼び、これまでのカスタマージャーニー型の消費とは区別して考えるべきだと指摘しています。
しかし、「たまたま知った商品をすぐに買う」というのは、いわゆる「衝動買い」と同じでは?と思ってしまいますよね。この点についてGoogleでは、「パルス型消費は衝動買いとは別物」として定義しています。
その理由は、いわゆる衝動買いが、趣味的な商品に対する非日常的な買い物であることが多いのに対し、パルス型消費は、日常的に消費する商品に対して行われるから。さらに、パルス型消費は、その商品に出会う前に「なんとなく気になって」、オンラインで調べていたものや事柄に左右される点でも、衝動買いとは異なっています。なんとなく気になっていることを調べている途中、偶然目にした情報がきっかけで、突発的に購買意欲が高まり、「その刺激が一定以上に達した場合に、その場で購入に踏み切るケースが増えている」とGoogleでは分析しています。
さらにGoogleの分析によると、特定の商品を購入する意図を持たずに始まることが多いのも、パルス消費の特徴の1つ。
たとえば、リモートワーク用の家具について何となく調べていたAさんが、家具を検索しているうちに、偶然、リゾートホテルのワ―ケーションプランを利用している人のブログを読み、とっさにそのプランに申し込む・・・というようなケースです。快適にリモートワークをしたいという欲求を「家具の新調」という選択肢で解決しようとしていたところ、偶然「ワ―ケーション」という新しい選択肢を発見し、それまで想定していなかった購買行動に踏み切った、というわけです。Aさんの意識の中に「快適にリモートワークがしたい」というニーズがなければ、いかに魅力的な写真や文章の広告を見ても、ワ―ケーションプランを申し込まなかったに違いありません。
パルス型消費を起こす6つのトリガー
Googleでは、パルス型消費を引き起こす「トリガー」として、以下の6つの直感センサーを挙げています。
- セーフティー:より安全なものに反応する直感センサー
- フォー・ミー:「より自分にぴったりだと思うもの」に反応するセンサー
- コストセーブ:「お得なもの」に反応するセンサー
- フォロー:「売れているもの」や「第三者が推奨するもの」に反応するセンサー
- アドベンチャー:「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応するセンサー
- パワーセーブ:「買い物の労力を減らせること」に反応するセンサー
商品との偶然の出会いによって、これらの直感センサーが働いたときに購買意欲が急激に高まり、人々は「パルス消費」をすると見られています。ただし、常に同じ直感センサーが働くとは限りません。自分自身を振り返ってみても、普段は「安全なものを食べたい」と思っているのに、レビューで絶賛されている大人気のジャンクフードを買ってしまったり、安さにひかれてオーガニックではない商品を選んだりしてしまう経験をしたことのある人は少なくないはずです。
消費行動は「Explorer⇒Hit⇒Action」へ
トリガーがなんであるにせよ、パルス型消費は、なんとなくネットをみている⇒(Explorer)⇒出会う(Hit)⇒買う(Action)という流れで起きる消費行動であり、これまでの、知って(Aware)⇒調べて(Research)⇒買う(Action)という消費行動は全く異なっていることがわかります。Googleでは、「この新たな消費行動をいかにして自社の商品やサービスのマーケティング戦略に織り込んでいくか。このことが、今後のマーケティング活動における重要な課題として問われている」と指摘しています。
特に直感センサーを発動させる出会い=Hitをどう作るのかが、極めて重要になってくるでしょう。先に述べたとおり、パルス型消費は、「なんとなく気になっていることを、暇なときに調べる」ことから始まっています。つまり、「なんとなく気になっていること」を的確に読み取ってリーチできれば、消費者の直感センサーを刺激できるということです。