新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的に長く低調が続いていた旅行業界。2022年の年明け以降は、感染が縮小傾向にある一部の地域では旅行需要が回復しつつあるものの、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けている地域もあり、世界的に見ると地域によって明暗が分かれているようです。そこでCriteoでは、世界の旅行トレンドを探るべく、このほどアメリカ、EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)、APACなど地域別に旅行関連の予約状況に関する調査を実施しました。本ブログでは、その結果の概要をかいつまんでご紹介します。
1.ホテルとレンタル
ホテルとレンタルの予約は、概ねパンデミック前の水準を上回る
結論を先に言うと、ホテルとレンタルの予約は、大多数の地域で、新型コロナウイルス感染拡大によるパンデミック前の水準を上回るまでに回復しつつあります。地域別に予約状況を詳しく見ていきましょう。
アメリカ~ホテル・レンタルの予約は春に減速
まず、アメリカは、2019年第15週と比較して、2022年4月と5月の予約数が減少しています。これは、新型コロナウイルスの感染者が増加したことや、ガソリン価格の上昇により旅行意欲が低下したことが原因と考えられます。
また、今回の調査で「この先1年間に個人旅行をする場合、どのようにホテル/宿泊施設を予約する可能性が最も高いですか?」と聞いたところ、アメリカの旅行者は、旅行会社のアプリ・Webサイト・電話による予約よりも、ホテル/宿泊施設のWebサイトで直接予約することを好む傾向にあることがわかりました。
EMEA~スペインを除き、ホテル・レンタルの予約は、コロナ前の水準で推移
EMEA全体では、ホテルとレンタルの予約は、ベンチマークとしている2019年春の水準とほぼ同じレベルにまで回復しています。ただし、スペインは回復が遅れており、予約水準は2019年の同時期よりも20ポイント近く下回っています。
なお、この先1年に個人旅行をする場合の予約方法については、「旅行会社のアプリ・Webサイト・電話による予約」と回答した人の割合と、「ホテル/宿泊施設のWebサイトで直接予約する」と回答した人の割合はほぼ同じでした。また、
次の旅行で利用したい宿泊施設の種類を聞いたところ、EMEA全体でも、国別でも、最も多い回答は「ホテル」でした。
APAC~予約状況は順調に回復
APACは他の地域よりも大きく回復しており、コロナ禍前の水準を大きく上回っていることが見て取れます。他の地域と同様にAPACでも、この先1年の個人旅行の予約方法を聞いたところ、最も多かったのは「ホテル/宿泊施設のWebサイトで直接予約する」で全体の53%、次いで「旅行会社のアプリ、Webサイト、電話による予約」(同48%)でした。
地域別・国別 ホテル予約状況
2022年5月の地域別のホテル予約状況を見てみると、2019年に比べて最も順調に回復を見せているのは、APACで、特に新型コロナウイルスによる行動制限がなくなった日本では100ポイント近く伸びています。一方、EMEAではスペインを除いて概ね順調ではあるものの、昨年の水準を割り込んでいます。この背景には、新型コロナウイルスの感染の再拡大や、ロシアによるウクライナ侵攻の影響があるものと見られています。また、アメリカ大陸(南北アメリカ)および米国でも、原油高や物価高騰の影響で旅行を控える傾向が指摘されており、今年5月のホテル予約は昨年同時期を下回りました。
地域別・国別 ホテル・レンタルのサイトトラフィック
続いて、地域別・国別にホテルとレンタルのサイトトラフィックを見てみましょう。こちらも、ヨーロッパの一部の国を除いて回復傾向にあり、特にコロナによる落ち込みが激しかった日本を始め、APACの国々での回復は目覚ましいものがあります。
2.エアライン
世界の航空予約数が過去最高の伸びを記録
続いて、エアラインの予約状況を見ていきましょう。
新型コロナウイルスの感染拡大により航空機の利用が大きく落ち込んだ2年間を経て、今、世界のほぼすべての地域で航空予約はコロナ前の水準を上回っています。アメリカ大陸(南北アメリカ)とAPACは2022年第22週で2019年レベルを43pt上回り、EMEAは5月最終週で前年比55%増という目覚ましい伸びを示しました。
では、地域別に予約状況を詳しく見ていきましょう。
アメリカ~パンデミック前の水準を上回る状況が続く
米国での航空予約数は大きく増え続けています。特に2021年春にエアラインを使った旅行が回復傾向になってからは増加が加速し、2022年もコロナ禍前・2019年時点の水準を大きく上回る水準で推移しています。
また、この先1年間の個人旅行で航空機を使う場合、どうやって予約するのかを聞いたところ、「航空会社のWebサイトで直接予約する」が最も多く(全体の60%)、「旅行代理店経由で予約する」を上回りました。
EMEA~順調に回復、一部の国ではベンチマークを上回る勢い
飛行機を使った旅行への関心は、確実に高まってきています。2022年春、フランスの航空予約は、2019年春の水準を50ポイント近く上回りました。スペインでも、前年比30ポイント増を記録、2019年とほぼ同水準まで戻ってきています。イギリスでも回復が目覚ましく、2022年春の航空予約は前年比で約130ポイントの増加、2019年と比べても70ポイント近く伸びています。
なお、EMEAでは、ホテルや航空券だけでなく、パッケージツアーや貸別荘などすべての旅行カテゴリーで、サイトトラフィックを上回る予約数が記録されており、コンバージョン率の高さが際立っています。
なお、予約方法については、アメリカと同様に「航空会社のWebサイトで直接申し込む」が最も多く、全体の52%を占めましたが、「旅行代理店のWebサイト」との回答も50%あり、EMEAでは旅行代理店の人気も根強いことがわかります。
APAC~ホテル・エアラインともにパンデミック前を上回る水準に
APACでも航空関連のコンバージョンレートが大幅に向上しています。2022年春のエアラインの予約は前年同期比で377%増、航空各社のサイトトラフィックも同235%増と、飛躍的な伸びを記録しました。
なお、この先1年間の個人旅行で航空機を使う場合の予約方法について聞いたところ、APACでも最も多かったのは「航空会社のWebサイトで直接予約する」で、全体の57%を占めました。
地域別・国別 エアライン予約状況
世界中ほぼすべての地域で、2022年5月の航空予約は2021年の予約を上回り、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年5月の水準を20pt以上、上回りました。
地域別・国別 エアラインのサイトトラフィック
エアライン関連のサイトトラフィックも、スペインを除くすべての調査対象国・地域で前年を大きく上回っています。特にイギリスの伸びは大きく、前年を80ポイント以上、上回りました。
このように、前年に比べ大きく回復したホテル・エアライン市場。ウクライナ侵攻やコロナウイルスの感染再拡大、物価高騰や原油高などいくつかの懸念はあるものの、このままの状態が続けば、夏休みの旅行需要も順調に回復するものと期待が高まっています。