回復傾向にある世界の旅行需要をCriteoのデータに基づいて分析した「Criteo Travel Insights2022 Q2」。①ではホテルやレンタル、エアラインの予約状況がコロナ前の水準に戻りつつあることを確認しました。②では、レンタカーやクルーズの予約状況とともに、旅行に関するマインドについての調査結果を紹介します。
1.レンタカー&クルーズ予約
レンタカーの予約は引き続き好調
2022年春、レンタカー予約台数は世界的に前年同期と同じペースで推移しており、予約レベルは一貫して新型コロナウイルスの感染拡大前を上回っています。
アメリカ
同調査で、この先1年の米国の旅行者の5人に3人は、レンタカー会社のウェブサイトから直接予約する可能性が最も高いことがわかりました。
一方で、アメリカにおいてもクルーズ予約は低迷が続いています。2022年4月の米国クルーズ予約は、2019年の実績をわずかに下回りました。翌5月には実績差が拡大し、22週目の予約は2019年のベンチマークを33pt下回った状態となっています。
EMEA
コロナ関連の規制が解除されたことで、ヨーロッパではレンタカーの予約増が加速しています。2022年第22週は2019年の同週を65pt上回っており、より多くの旅行者がレンタカーで移動していることがわかります。
なお、この先1年間の個人旅行でレンタカーを使う際の予約方法について聞いたところ、最も多かったのが「レンタカー会社のWebサイトで直接予約する」で全体の59%、次いで代理店のWebサイト42%、レンタカー会社のアプリ31%と続きました。
また、EMAEでは、クルーズの予約についても回復傾向が加速しています。2022年4月上旬には予約が2019年の水準と同じペースになり、5月中旬にはベンチマークを超え始め、下旬には前年同期比85%増を記録しました。
APAC
APACにおいても、レンタカーの予約は順調に回復しつつあります。ただし、原油高の影響でガソリン価格の高騰が続いていることから、移動手段をレンタカーから列車に変更する人が、今後は増えてくるかもしれません。なお、APACにおいても、この先1年間のレンタカーの予約方法で最も多くの人に支持されたのは、「レンタカー会社のWebサイトで直接予約する」で56%、列車予約についても「鉄道会社のWebサイトで直接予約する」が55%。いずれのエリアでも、旅行関連の予約は旅行代理店などを介さずに、直接サービス提供会社のWebで行う人が多いことがわかりました。
2.旅行マインドに関する調査結果
ここからは、旅行に関する意識にどのような傾向がみられるのか、地域別にどのような違いが生じているのかについて、Criteoのデータ分析から探っていきましょう。
アメリカ
アメリカを対象とした調査で、この先3ヵ月以内に旅行の計画があるかどうかを聞いたところ、「YES」と答えた人は、全体の61%でした。世界平均(67%)には及びませんでしたが、アメリカでも今年の夏の旅行需要は堅調に推移するものと見られています。
旅行意欲の高まりを背景に、旅行関連商品の売れ行きも好調です。アメリカでは2022年5月の旅行かばんやバッグの売上が、前年比21pt増、旅行用枕は前年比17pt増を記録しています。
なお、この夏に旅行を計画している人の半数以上が、その目的を「家族や友人に会いに行く」と回答、「レジャー」や「ビジネス」を上回りました。この夏は、長引くコロナ禍で会いに行けなかった人たちとの再会を楽しむ人が増えそうです。
なお、少し意外に思われるかもしれませんが、旅行中の二酸化炭素排出量を削減する意向は、米国人旅行者は他の国の旅行者と比べて著しく低いこともわかりました。
一方、アメリカの旅行者の間でもコロナウイルスへの懸念はいまだに根強く、旅行中に新型コロナウイルスに感染することを心配していると回答した人は、全体の55%に上りました。
続いて、検索~予約に至る経緯についてみてみると、ほとんどのアメリカ人がモバイルウェブで旅行検索を開始。半数がモバイルアプリまたはデスクトップで旅行予約を完了していることがわかりました。なお、旅行の検索に使うデバイスは平均2.3個、予約に使うデバイスは平均1.8個でした。
EMEA
EMEAでも、この夏の旅行意欲の回復は著しく、調査対象の4人のうち3人が、この先3ヵ月間に旅行を計画していると回答しています。旅行の目的としては、春の終わり~夏の期間は「家族や友人に会う」を挙げる人が多く、レジャー目的の旅行は7月と8月に活発になると見られています。
なお、EMEAでは環境意識の高まりを背景に、二酸化炭素削減に意欲的な人が多く、EMEAの旅行者の約2人に1人が「旅行中の二酸化炭素排出量を削減する意向がある」と回答しています。
また、EMEAにおいても新型コロナウイルスへの懸念は根強く、ドイツを除くEMEA諸国では半数以上が「旅行中の感染が心配」と回答しています。
特に高年齢層は非常に慎重で、EMEAのベビーブーマー世代とサイレント世代の61%が「旅行先での感染が心配」と回答しました(X世代は53%、Z世代とミレニアル世代は48%)。
続いて、検索~予約に至る経緯について見てみると、EMEAの旅行者のほとんどがモバイルウェブで旅行の検索を開始し、3分の2がデスクトップで予約を完了させていることがわかりました。なお、旅行の検索に使うデバイスは平均2.3個、予約に使うデバイスは平均1.9個で、アメリカの調査結果と大きな差は見られませんでした。
APAC
APACでは、今夏の旅行意欲について国によって大きな違いがみられ、二極化が進んでいます。インドと韓国では旅行への関心が高まっているのに対し、シンガポールと日本はやや低い傾向にあるようです。
旅行の目的についての調査結果は、アメリカやEMEAと同じく、APACにおいても「家族や友達に会う」が最も多く、5人のうち2人が、「この先2~3か月の間に家族や友達に会うために旅行を計画している」と回答しています。
二酸化炭素削減についての意識は、国によってかなり温度差があり、インドでは76%が「旅行中の二酸化炭素排出量を減らしたい」と回答しているのに対し、日本は44%、オーストラリアは43%にとどまっています。
また、他の地域と同様にAPACでも新型コロナウイルスへの懸念は根強く、特にインドとシンガポールにその傾向が強く見られ、インドでは75%、シンガポールでは74%が「旅行中の感染が心配」と回答しています。
続いて、検索から予約に至るまでの経緯についてみてみると、APACではほとんどの人がモバイルウェブで旅行の検索を始め、3分の2の人がモバイルアプリで予約を完了していることがわかりました。なお、検索に使うデバイスの数は平均2.5個、予約に使うデバイスは平均2個でした。
まとめ
以上、世界の主要な地域の旅行に関するCriteoの調査結果をご紹介しました。今回の調査では、新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いてきていることもあり、2022年の春はほぼすべての地域で旅行意欲の高まりがみられ、ホテルやエアライン、レンタカーなどの予約数も増加傾向にあることが確認できました。コロナウイルス以外にもロシアによるウクライナ侵攻や物価高、原油価格の高騰など、懸念すべき要素は多いものの、今のところ、世界的に今夏の旅行市場は前年よりは盛り上がりが期待できそうです。
その一方で、今回の調査では、ほぼすべてのエリアで新型コロナウイルスへの懸念は払しょくされておらず、旅行中の感染を懸念する人が多いことも明らかに。旅行関連のビジネスでは、この夏も引き続き、コロナウイルス感染対策を徹底してその旨をしっかり顧客にアピールすることが、プロモーションの大前提となりそうです。