「オンラインで注文→ドローンで配送」の日も近い!? 現実味を帯びてきたドローン物流とは?

使ってみたいドローンのサービスは「配送」

もともと軍事用に開発され、今では映像制作や農業など幅広い分野で活用されているドローン。2022年にはドローンの操縦ライセンスが国家資格となり、操縦ライセンス(一等資格)取得者が国の認証を受けた機体を操縦する場合に限り、第三者の上空を飛行することができるようになる予定で、配送業務や災害救助など、より広い分野での活用に期待が集まっています。

日本トレンドリサーチ(運営会社:株式会社NEXER)が2022年2月におこなった「ドローンの活用に関するアンケート」で、「ドローンによるサービスで知っているもの」を尋ねたところ、最も多かったのは「空撮撮影」(86.9%)、次いで「農薬散布」(52.4%)、「災害時の調査探索」(50.5%)でした。

一方、「ドローンで利用してみたいサービス」について聞いたところ、「災害時の支援物資の配送」(42.1%)が最も多く、次いで「日用品の配送」(27.4%)、「食事の配送」(25.6%)、「医薬品の配送」(23.3%)と、ドローンによる配送関連のサービスに期待している人が多いことがわかりました。たしかにドローンで物を運ぶことができたら、近隣に商店がなくて日用品の買い物ができない、いわゆる「買い物難民問題」の解決にも繋がりますし、事業者側にとっては配達にかかる人件費などのコスト削減も実現できます。災害などで道路が寸断されてしまった場合には、被災地へ支援物資を運ぶ手段としても大活躍するはず・・・。そんな夢のようなドローン物流が、ここにきて一気に現実味を帯び始めています。

12km離れたマンションへ、ドローンが荷物をお届け!

出典:楽天プレスリリース

JP楽天ロジスティクスは、2021年12月1日〜16日、国内初となる都市部高層マンションにおけるドローンを活用したオンデマンド配送の実証実験を千葉県で行いました。この実証実験は、東京湾臨海部の倉庫から幕張新都心内のマンション各戸への物資配送を目指している千葉市の「ドローン配送構想」に基づいて行われたもので、今回は災害時用の医薬品や日用品を載せたドローンを飛ばし、海を挟んで約12km離れた高層マンションの屋上に届けることに成功しました。

【実証実験の流れ】

① ユーザーが専用のスマホアプリから欲しいものを注文

アプリには重量インジゲーターが表示され、ドローンの最大積載量(今回の実証実験で使ったドローンの場合は7kg)を超えると、注文できなくなる仕組みになっています。

② 倉庫のスタッフが注文を確認し、商品を揃えてパッキング

③ 梱包済みの商品を楽天のスタッフがドローンに搭載

④ ドローンを離陸させ、遠隔操作で目的地に向かわせる

ドローンにはGPSが搭載されており、ユーザーも手元のアプリでドローンの位置情報や到着予想時刻を確認できます。

⑤ 海上を時速約50kmで飛んで、約20分後に倉庫から12km離れたユーザーの住むマンションの屋上に到着

実証実験の成功を受けて、JP楽天ロジスティクスでは「今後も、本実証実験で得た都市部に向けたドローン配送の知見を生かし、ドローンを活用した配送サービスの実現に向けて取り組んでまいります」とコメントしています。

過疎地域の課題解決にドローンを活用

出典:株式会社NEXT DELIVERYプレスリリース

過疎地ならではの地域問題の解消にも、ドローンが注目されています。

2022年3月、山口県美祢市では、新スマート物流の構築に向けたドローン物流実証実験が行われました。人口の約44%を高齢者が占め、過疎化が進む美祢市では商店や飲食店が少なく、日用品の買い物に困る「買い物難民」への対応が課題となっています。また、運送業界においては、主に燃料価格の高騰や人手不足の問題から、過疎地域での配送体制が維持できなくなることが懸念されています。今回の実証実験は、この2つの課題の解決を目指して、美祢市と民間会社(株式会社NEXTDELIVERYなど)の連携のもとで行われたもので、当日は片道約1.2km離れた民家にハンバーガーとコーヒーをドローンで届ける実験が行われ、無事、成功を収めました。

出典:株式会社NEXT DELIVERYプレスリリース

美祢市では今後も民間企業と協業で実証実験を続け、ラストワンマイルの輸送手段にドローン配送を組み込み、地上輸送とドローン配送を連結・融合する新スマート物流システムを構築して、買い物代行や災害時支援、医薬品配送等をおこなう仕組みの整備に取り組んでいくこととしています。

操縦ライセンスの国家資格化を機に操縦者数が増え、操縦の質が向上すれば、ドローンの活用はますます進むはず。そのうち、オンラインで買った商品がドローンでマンションのベランダに届く・・・という風景が、日常になってくるかもしれません。