プライバシーサンドボックス・テストについて知っておくべきこと

更新日 2024年09月18日

2023年1月からここ2か月間、広告業界のトップランナー達とプライバシーサンドボックス・テストに関して幅広いディスカッションを重ねてきました。その中で、いまだに勘違いされていることが多いと気づきました。 ここでもう一度基本に立ち返り、プライバシーサンドボックスに関して寄せられた基本的な質問にお答えしながら、テストの内容やスケジュール、業界への影響について改めて解説したいと思います。

最も多く寄せられたのは、プライバシーサンドボックスが機能するか、という質問です。 かいつまんで言うと、現在のテストはプライバシー・サンドボックスの API 機能の検証のみを目的としています。 むしろ、私たちが API 開発者として行った大きな技術投資を具現化し、安定した広告パフォーマンスの将来性を診断するためのものです。 こういったテストは、Google が必要とする特定の API の改善を切り分け、プライバシーサンドボックスがマーケティング担当者やメディアオーナーに最大の結果をもたらすことを確実にするために行われています。

テストの内容

テストの中核にあるのは、OpenRTB プロトコルの代わりに新たな API ソリューションセットを活用して、サードパーティクッキーがある世界と、サードパーティクッキーがない世界を比較するための A/B テストです。 プライバシーサンドボックスで Google が提案している API の中で、当社のテストは最も広告に影響を与えるであろう3つの PAI に焦点を当ています:Protected Audience API、Topics API、そして Attribution Reporting API です。

これらの API の目標は、1対1のターゲティングや SKU レベルの商品レコメンド、パフォーマンスの測定など、デジタル広告業界に既に広く普及している要素を維持することですが、 API を使用する仕組みは異なります。 たとえば、Topics API の情報はリアルタイム入札経由で渡され、サーバー側のオークションを可能にしますが、Protected Audience API は TEE(trusted execution environment:信頼性の高い実行環境)におけるデバイス上およびサーバー側の2つのオークションモードをサポートします。

以下の図は、各 API の目的と、アドレサブル広告の変革に与え得る潜在的な影響ついて簡単に説明するものです:

Criteo は全世界を対象に、アッパーファネルからロウアーファネルまで、新規顧客獲得、顧客維持、リターゲティングキャンペーンなど、あらゆるタイプのキャンペーンのパフォーマンスを評価するテストを実施しています。 また、DSP と SSP の両方をテストすることで、広告主やパブリッシャーへの影響を同時に把握できます。

テストの対象グループ

過去のブログ記事でもお話しした通り、こういったテストを行うには、大掛かりな準備やインフラの革新が必要になります。 あらゆる種類の A/B テストと同様、最初のステップではテストグループとコントロールグループの募集と分類を行います。

プライバシーサンドボックス・テストに関しては、1月のテスト開始の段階で Google によって3つの Crhome ユーザーグループが定義されています:

  • 実験群:サードパーティ・クッキーが排除され、プライバシーサンドボックスを利用可能な 0.75% のトラフィック。
  • コンテクスチュアル対照群:サードパーティ・クッキーもプライバシーサンドボックスも排除された0.25% のトラフィック。
  • 対照群:サードパーティ・クッキーを利用可能な 1% のトラフィック(従来通りで変化なし)。

テストの設定後は、すべてのグループの支出を注意深くモニタリングし、テストに使用される予算が各グループの規模に対して一定であること、分析に偏りがないことを確認します。

先述の通り、現在のプライバシーサンドボックス・テストの対象は Chrome トラフィックの 1% 以下です。 サンプル規模の小ささやテストパートナーに割り振る必要性を考えると、十分な広告判断を得るには膨大な時間が必要です。 この業界が迅速なテスト結果を求めていることは理解できますが、統計的有意性を実現するには時間がかかるのです。 このため、Criteo では科学的なアプローチをとり、決定的で信頼できる結果を確実に提供できるよう、統計的有意性に達した場合のみ結果を共有することを提唱しています。

何を測定するのか?

パブリッシャー、SSP、広告主、小売業者とパートナー契約を結んでいる当社は、プライバシーサンドボックスがデジタル広告のエコシステム全体で機能しなければならないことを理解しています。 広告関係者すべての存続性と公平性を叶えるため、当社ではテストにおいて「パブリッシャーへの影響」、「広告主への影響」、「エコシステム全体の健全性」の3つの分野を分析します。 パブリッシャーへの影響については、広告主の ROAS に関連する広告の CPM とボリュームをモニタリングします。 これにより、プライバシーサンドボックスを通した広告がデマンドサイドとサプライサイドの両方を適切にサポートしているか評価することができます。

また、CMA のガイダンスに基づき、インプレッションあたりの収益、1ドルあたりのクリック数またはコンバージョン、インプレッションあたりのクリック数、入札リクエスト数、設定予算額の割合、レイテンシーなど、エコシステムの健全性を示すさまざまなデジタル広告指標をモニタリングします。 こういった総合的な分析は、CMA によるレビューに対して情報を提供するだけでなく、広告エコシステムのパフォーマンス全体を一目で確認できるビューを提供します。

テストのスケジュールは?

Criteo のテストの進行状況に透明性を持たせるため、具体的なマイルストーンをお伝えします。 1月4日~3月11日は以下の図に示す通り、テストとイテレーションに注力しています。 この段階では、テスト対象集団を適切な割合で募り、Topics API と Protected Audiences API のテストにおいて正確なプライバシーサンドボックスのラベルを受け取れるよう、細心の注意を払って正式なテストの準備を進めています。 同時に、実装内容のデバッグや精度の向上目的で社内テストを行い、安定的なテストに備えています。

3月11日からは安定的なテスト段階に移行し、5月10日までテストを継続します。 この期間における主な目的はプライバシーサンドボックスからのデータ収集、影響の分析、パフォーマンスの評価です。 そして6月15日までには英国の競争・市場庁(CMA)に最終レポートを提出する予定です。 CMA はその後、データに基づく意思決定に貢献している他の参加企業からのインサイトを加味して、Google が第4四半期に予定しているクッキー廃止に関して結果を体系的に評価する予定です。

サンドボックスの先にあるもの:アドレサビリティを実現するための多面的アプローチ

さまざまなアドレサビリティ・ソリューションの強化に継続的に取り組んでいる当社において、プライバシーサンドボックスは模索中の選択肢の1つにすぎません。 マーケティング担当者とメディアオーナーは思い切って制約を取り払い、1つのアプローチに依存するのではなく、多様なアプローチを受け入れる必要があります。 アドレサビリティ・ソリューションとしてサードパーティ・クッキーに頼っていた時代から脱却した今、ちまたにはさまざまな代替オプションが溢れています。

価値あるコマースデータと取引メカニズムは、関連性の高い広告において無数の機会を提供します。 アドレサブル広告を最適化するため、マーケティング担当者はテクノロジー・パートナーと連携し、ハッシュ化されたメールアドレスなどの相互運用性の高い ID やリテールメディア、ソーシャル・プラットフォーム、およびコンテクスチュアルや AI 主体の戦略など、代替アプローチを探る必要があります。 Criteo のコマース AI は、セマンティック解析やコンテンツカタログ、売り上げやコンバージョン分析を組み合わせた ID ベースのシグナルから学習しています。 数々の方法を組み合わせて活用することで、アドレサブル広告に対する安定性や効果の高いアプローチを実現できます。

Criteo はサードパーティ・クッキーの廃止やその後数年間のブラウザ制限に向け、細心の注意を払って準備をしてきました。ですから、ダイナミックで多面的なアドレサビリティ戦略を提供できます。 当社のソリューションは規模や相互運用性を優先するものであり、広告に携わる関係者全員に資する、よりオープンで一元化された、効率性の高いエコシステムを実現するという当社のビジョンに沿っています。 この取り組みのおかげで当社と、当社のクライアントはサードパーティ・クッキー廃止後の未来においても最前線に立つことができ、進化を続ける広告業界に順応し、適用できるのです。

クッキーを使用しない広告の展望に関する最新情報とインサイトについては、アドレサビリティ・ハブをご覧ください。

Todd Parsons

2020年8月にCriteoの最高プロダクト責任者(CPO)に就任したToddは、 Criteoの製品戦略と新製品のイノベーションをリードしながら、プラットフォームの多様化・変革にも取り組んでいます。 ...

最高プロダクト責任者(CPO)