新年度も1か月を過ぎ、来月は早くも夏のボーナスシーズン。皆さんはもう、使い道を決めていますか?物価上昇に円安など経済情勢の先行き不透明感が高まる中、今年は新型NISA制度がスタートしたこともあって、「ボーナスは投資資金に充てよう」と考えている人も少なくないことでしょう。そこで、今回は現役世代の投資や金融サービスに関する意識や行動について、いくつかの調査結果をもとに、その傾向を探ってみました。
投資家比率がUP!新たに約130万人が「投資家」に
投資を始める人が増えているという話はよく耳にしますが、いったいどの世代の人がどんな投資を始めているのでしょうか?野村アセットマネジメント資産運用研究所が20歳以上の男女約2万6,000人を対象に行った「投資信託に関する意識調査2024」の結果から見ていきましょう。
同調査によると、2024年に投資信託や株式を所有している投資家は全体の約38%で推計約3,976万人。前回調査時(2022年)に比べて+1%増、人数にすると約130万人が新たに投資家デビューを飾ったことになります。年代別に見ると、投資家率が伸びたのは20代~40代。特に20代での投資家率の増加が顕著に見られました。逆に50代以上の高齢層では投資家率が低下、投資の主役の若年齢化が急速に進んでいることが明らかになりました。
投資を始めたきっかけ、No.1はNISA
続いて同調査で投資を始めたきっかけについて聞いたところ、「NISAを利用するため」が最も多く全体の36%と、NISAが投資デビューのきっかけとなった人が多いようです。その傾向は若年層ほど高く、投資を始めたきっかけとしてNISAを挙げた人は20歳代で53%、30代では54%にも上りました。
ちなみに、投資を始めた目的は1位が「老後資金」、2位が「投資してお金を増やしたかったため」、3位が「預金金利が低いため」でした。
そもそもNISAって?新NISAのメリットは?
このように多くの人の投資デビューのきっかけとなっているNISAは2024年に制度が刷新され、新型NISAがスタートしました。新型NISAの登場に合わせて投資かデビューした人も多く、同調査では全体の13%、20代では16%、30代では19%、40代では15%が2024年からNISAを始めていることがわかりました。
ご存じの通り、少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」は、家計の安定的な資産形成を支援するために、2014年1月にスタートした制度です。通常、株式や投資信託などから得られた配当や譲渡益は、所得税や住民税の課税対象(所得税:15%、住民税:5%、復興特別所得税:所得税額の2.1% 合計20.315%)となりますが、NISAで投資すると毎年一定の新規購入分については、その配当や譲渡益が非課税になります。
そして、2024年からスタートした新NISAの最大の特徴は「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(年間240万円)があり、1つの口座で2つの枠を併用できること。投資できるのは生涯を通じて非課税保有限度額1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)の範囲内ですが、非課税保有限度額(総枠1800万円)は簿価(取得価額)によって管理されるため、売却した分については枠を再利用することが可能です。また、口座開設期間や非課税保有期間に制限は設けられておらず、いつでもNISAの利用を始めることができ、非課税保有限度額の範囲内であれば何度でも新規投資をすることが可能。国民の投資を促すための制度刷新だけに非課税枠のお得感が大きく、同アンケートでもNISA利用者の61%が「運用益が非課税になる」をメリットとして挙げています。
金融売買は「非対人」が当たり前に
このように多くの人の投資家デビューを支えているNISAですが、全くの投資初心者にとっては、NISAをどの金融機関で始めるのかを決めるのも、なかなか難しいもの。NISAを利用するためには、証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で「NISA口座」を開設する必要がありますが、皆さん、どんな口座を選んでいるのでしょうか?
野村アセットマネジメントの調査で、最もよく利用している金融機関とNISA口座を保有している金融機関について聞いたところ、いずれも「ネット証券」の割合が最も高い結果(44%)となりました。特に20代では62%、30代では64%とネット証券の利用者が過半数を大きく上回っています。店舗型証券の利用割合は年齢とともに上がり、60代以降はネット証券よりも店舗証券の利用者が多い結果に。この傾向はNISAだけでなく、金融商品売買全般についても同様であり、同調査によると金融商品の売買は、50代までは非対人形式(インターネット取引など人と会話しない形)の利用が多く、特に20代~30代ではその利用割合が約8割にも!そして 60代以上では対人形式(対面、電話、オンラインなどで人と会話する形)の利用が多いことがわかりました。
金融取引の相談相手は誰?
24時間好きなときに好きな場所で、誰にも知られることなく金融取引ができるメリットがあるネット証券ですが、その一方で担当者に相談しづらいというデメリットもあります。実際にネット証券を利用している投資家の皆さんは金融に関する悩みや疑問をどのようにして解消しているのでしょうか?ネット証券の一つ、楽天証券が利用者を対象に行った調査で、「投資や資産形成に関する情報を収集する際、何を参考にしていますか?」と聞いたところ、次のような結果に。
1位:You Tube
2位:インターネット検索
3位:SNS
4位:書籍
5位:新聞・雑誌
続いて、同調査で「投資や資産形成について困りごとや質問ある際、誰に相談していますか?」と聞いたところ、次のような結果になりました。
1位:人に相談しない
2位:相談できる相手がいない
3位:家族・友人などの身近な人に直接相談
4位:投資系YouTuberやインフルエンサーにコメントやDMを通じて
5位:SNS上の投資仲間にSNSを通じて
最も多かった「人に相談しない」理由としては、「お金や投資の話は周囲の人に相談しづらい」、「自分のライフプランニングの考え方やお金の困りごとについて、安心して相談できる人がいない」といった回答がみられました。また、「周囲に相談できないためYouTubeやSNSから情報を得ているものの、さまざまな情報や意見が錯綜していて、何を信じたらいいかわからなくなってしまう」という声も。多くの投資家の方が「相談できる相手がいない」、「調べていると、何を信じたらいいかわからなくなってしまう」といった悩みを抱えていることも明らかになりました。「人に相談しない」理由は、「したくない」のではなくて「したいけど相手がいない」というのが、実情のようです。ネットリテラシーが高く、コスパとタイパを重視する若者世代が投資の主役になりつつある今、金融機関への「正確で公平な情報を提供して欲しい」というニーズはますます高まりそう。しかし、そもそも「対人」を敬遠する彼らにどうやってアプローチするのが適切なのでしょうか?
投資の相談相手がいない!⇒解決策は?
その解の一つとして注目を集めているのが、生成AIの活用です。例えば楽天証券は、米・NVIDIAのアバターサービス開発ツール「NVIDIA ACE」を用いた小売店・レストラン・販売代理店向けサービスソリューション「Quartz Frontline AI powered by NVIDIA」と、楽天証券が提供する生成AIチャットサービス「投資AIアシスタント」を連携させ、「投資相談AIアバター」を開発。「投資相談AIアバター」は、投資に関する疑問など、利用者の音声による質問に、聞き耳を立てるしぐさや音声とアバターの口の動きを合わせる人間らしい反応を示しつつ、日本語の合成音声で適切な回答をするなど、利用者とアバターの会話型相互コミュニケーションを可能にした画期的なサービスです。
生成AIによるサポートが今後どの程度定着していくのかは未知数ですが、非対面の取引を好む若手世代に向けたサービスや情報発信が金融機関にとって必須の課題であることは間違いなさそうです。