11月に入り、今年も年末商戦がスタートしました。一昔前までは年末商戦は12月に入ってから・・・という認識が一般的でしたが、ここ数年は世界各地で11月中に大々的なお買い物イベント(セール)が連続して行われるようになり、その盛り上がりが冷めやらぬまま年末商戦に突入・・・という流れが定着しつつあります。中には中国の「独身の日」のように、もともとは国内だけで行われていたセールがECの普及とともに世界的なお買い物イベントに発展した例もあり、日本でも海外のお買い物イベントが新たな商機として、ますます存在感を増しています。代表的なイベントの時期や由来について、おさらいしておきましょう。
独身の日(光棍節):11月11日
1990年代ごろから、中国の若者たちの間で毎年11月11日を「独身の日」として恋人のいない独り者同士が集まるイベントや婚活パーティーが行われていました。1が4つ並ぶ日→独りぼっちが集まる日・・・という発想ですね。このイベントに目を付けたのが、あのアリババ。2009年の11月11日に「寂しいシングルの皆さん、お買い物して自分にご褒美をあげましょう!」と呼びかけ、ECサイトで大掛かりなセールを開催。これがきっかけで、11月11日前後にはECのみならずスーパーやデパートなどの実店舗でもセールが行われるようになり、近年では11月11日は「独り者同士が慰め合う日」よりも「爆買いの日」として広く認識されるようになりました。
「独身の日」のセールは本来の対象者である「独り者」のみならず、広く一般国民にまで浸透、今や中国の国民的行事にまで発展、2020年にはアリババとJDドットコム(京東集団)の2社だけで売上総額(11月1日~11日の期間中)7,700億元(約12兆2000万円)を記録しました。これは楽天の2019年度の国内EC流通総額(3.9兆円)の3倍を超える数字で、独身の日がいかに大きな商機であるかがよくわかります。
ところが、2021年の独身の日は、これまでにないほど低調になるのでは・・・との見方も出ています。というのも、2020年にアリババが独身の日のセール期間を拡大、人気タレントを動員した大規模なプロモーションを行ったり、売上高の推移をライブ中継して消費を扇動したことを中国政府が問題視、2021年10月に業界に対して、独身の日に向けたプロモーションのためのスパム送信を控えるよう通達を出したのです。
これを受けて、アリババが今年の独身の日セールは「持続可能な発展」と「インクルーシブネス(社会包摂=誰も排除しないこと)」を推進するとの公式メッセージを表明したことから、今年は昨年のような派手なプロモーションを行わないのではとみられています。とはいえ、独身の日はすっかり一大ショッピングイベントとして定着している上、コロナの影響でEC利用者自体が大幅に増えていることから、今年も独身の日のセールは大いに盛り上がるのではないかとの見方が有力です。
ブラックフライデー(11月の第4金曜日)
アメリカで感謝祭(11月第4木曜日)の翌日の金曜日(2021年は11月26日)に行われる大規模なセールのことで、アメリカの小売業界では1年で最多の売上が見込める日とされています。もともと、感謝祭用のギフトの売れ残りを売る在庫一掃セールとして始まったと言われています。セールらしからぬイベント名は、フィラデルフィアの警察署の署員が、このセールの日は買い物客による渋滞やトラブルが頻発して仕事が増えることを嘆いて「ブラック(最悪な)フライデー」と呼んだのが始まりとされ、今では世界的に知られるお買い物イベントの呼称として定着しています。アメリカではブラックフライデーが年末商戦のスタートとされ、このセールの売れ行きが、その後に控えるクリスマスやニューイヤーセールの売上にも影響を及ぼすと言われています。
近年、オンラインショッピングの普及に伴ってブラックフライデーの売上は年々増加しており、特に2020年は新型コロナウイルスの影響でオンラインでの売り上げが大幅に増加、ブラックフライデー当日のオンライン支出は過去最高の90億ドル(約9400億円)にのぼりました。今年はアマゾンがブラックフライデーの50日以上前にあたる10月初旬にセールを開始するなど、例年以上に早くブラックフライデーに向けたセールを開始する小売業者が相次いでいることから、さらなる売り上げ増が見込まれています。
サイバーマンデー(11月第4木曜日の次の月曜日)
ブラックフライデーを含む感謝祭の休暇中は実店舗で買い物をする人が多いのに対して、休暇明けの月曜日(2021年は11月29日)は職場や自宅に戻ってオンラインで買い物をする人が急増することから、「サイバーマンデー」と呼ばれています。ブラックフライデー明けの月曜日にオンラインでの売り上げが増えるようになった理由としては、「かつてインターネット回線が今ほど安定していなかったころに、職場の高速インターネット回線を使って買い物をする人が多かったから」との説が有力ですが、インターネット回線の脆弱さがほぼ払しょくされた現在もなお、この月曜日にはオンラインでの売り上げが急増する傾向が続いています。2020年のサイバーマンデーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンラインショッパーが増えたこともあって、過去最高の108億ドル(約1.1兆円)に達し、アメリカの1日あたりの通販売上高の記録を更新しました。Adobeの分析によると、サイバーマンデーで最も多くショッピングが行われるのは夜で、2020年のサイバーマンデーで最も売り上げが多かったのは、19時~23時。この4時間だけで1日の25%に当たる27億ドル(約2800億円)を売り上げました。同時間帯、1分間になんと1200万ドル(約13億円)が費やされた計算になります。
2021年の年末商戦は?
このように11月に大規模なセールが行われるようになったことで、開始時期が年々早まりつつある年末商戦ですが、今年はどうなるのでしょうか?
Adobeがこのほど発表した2021年のホリデーシーズンのオンラインショッピング予測によると、11月1日から12月31日までの米国のホリデーシーズンのオンライン売上予測は、過去最高の2,070億ドル(約22.77兆円)に達する見込みです。グローバルでは、今シーズンのオンライン支出は前年比11%増の9,100億ドル(約100.1兆円)に達することが見込まれており、2021年の世界のEコマース売上高は4.1兆ドル(約451兆円)と、初の4兆ドル越えを記録すると予測されています。
では、こお一大商機であるホリデーシーズンで勝利を収めるカギは、どこにあるのでしょうか?Criteoが行った調査で、消費者はブラックフライデーの遅くとも1週間前には買い物について考えたり計画を立て始めたりすることが分かっています。つまり、ブラックフライデーに向けたキャンペーンは遅くとも11月上旬から開始し、ショッピングジャーニーの序盤から買い物客に御社の商品を思い出してもらうようにする必要があるということです。このほか、今年のホリデーシーズンを勝ち抜くためのヒントを知りたい方は、Criteoの「2021ホリデーコマースリポート」を以下からダウンロードしてご覧ください。