NRF 2024~リテール業界、世界の最新潮流を知ろう(前編)

更新日 2024年03月05日

NRF(全米小売業協会)による世界最大級の小売りのカンファレンス「NRF 2024:Retail’s Big Show」が、2024年1月14~16日、米国ニューヨークで開催されました。今年で113年目の歴史を誇るNRFは、小売業界の最新トレンドがわかる大人気のカンファレンス。毎年、小売業界の最先端をいく著名経営者らによる講演やディスカッションが注目を集めます。3日間にわたって行われた同イベントで特に注目を集めた話題をピックアップ。本ブログでは、その概要を2回に分けてご紹介します。

AIはすべての小売・CPG企業にとって最重要課題

ここ数年、NRFでも盛んに議論されていたAIの活用。今年は昨年までの「AIを使うかどうか」の議論から1ステップ進んで、「AIをどう活用するか」が議論の焦点に。ショッピング体験のパーソナライズから、作業の自動化、不正行為の防止まで、AIがあらゆる角度から小売業界を変革しつつあること、ゆえに各小売事業者・CPG企業は明確なAI戦略を策定・適切なツールに投資し、時代のニーズに応える必要があることが強調されました。具体的な活用事例としては、Salesforceの最高経営責任者マーク・ベニオフ氏が紹介したグッチのコールセンターのAI導入事例が注目を集めました。ベニオフ氏はグッチがコールセンターに生成AIを導入したところ、1日で売上が30%も増加した事例を紹介し、「生成AIは従業員の雇用を奪うどころか、業務改善をサポートした」とし、生成AI活用のメリットを強調しました。

実店舗への回帰が加速。実店舗の「集客装置化」に取り組むべし

消費者はもはや、オンラインとオフラインを区別して買い物をしていません。彼らは、店舗での試着・試用からオンラインでの購入、店舗での返品・・・という具合にチャネルの違いを意識する必要のない、シームレスな買い物体験を求めています。その上で、今年のNRFで特に強調されたのが「実店舗の重要性」です。Eコマースの台頭にもかかわらず、実店舗は多くの消費者にとって、いまだ重要なタッチポイントであり続けており、小売企業は、顧客がわざわざ時間を費やしてまで「来店したい」と思えるような、魅力的で体験型の店舗を作る必要があります。今年のNRFでビジョナリー・アワードを受賞したスポーツ用品店チェーンの老舗「Dick’s Sporting Goods」も、店内のバッティングセンター、ゴルフシミュレーター、クライミングウォールなどの大規模体験型ゾーンに設備投資を行い、「体験の場」としての価値を付加しことによって店舗を1つの「集客装置化」したことが大きく評価されました。

ファストファッションに学べ

言うまでもなく、小売業界のトレンドは過去に類を見ない速さで変化しています。これからの時代、小売業者が生き残るためには、俊敏性と適応力がますます重要になるでしょう。変化を武器に成長し続けているのが、SheinやTemuに代表されるファストファッションECです。こういったファストファッションECの台頭により、消費者はファッションアイテムを購入する方法自体を大きく変えつつあります。新商品投入頻度の高さ、迅速な配送、パーソナライズされたレコメンデーションの提供など、ファストファッションの成長を支えている要素をよく把握し、自社ECの競争力強化の参考にしましょう。

これを実現するために検討すべき戦略の1つが、サプライチェーンの自動化です。

  • 倉庫の自動化: ロボットシステムがピッキング、梱包、仕分けなどの反復作業を処理し、手作業への依存を減らしながら効率と精度を高めます。
  • 自律型配送車: ドローンや自動運転トラックがラストワンマイルの配送に参入し、特に都市部では配送時間の短縮とコスト削減が期待されています。
  • スマート・コントラクト: ブロックチェーン技術は、サプライヤーやメーカー、小売業者間の安全で自動化された取引を可能にし、プロセスを合理化し、透明性を向上させるでしょう。

NRF 2024~リテール業界、世界の最新潮流を知ろう(後編)に続く