コンテクスチュアル広告は、今まさに広告業界の「温故知新」を体現していると言っても過言ではありません。コンテクスチュアル広告がマーケターやメディアオーナーの間で再び大きな注目を集めている背景には、
①プライバシー保護規制の厳格化、
②自らの個人情報の利用をコントロールできる裁量や選択肢を求める消費者ニーズの高まり、
③GoogleによるChromeブラウザにおけるサードパーティcookieとオンラインIDのサポート終了が間近に迫っている、
という3つの要因があります。
コンテクスチュアル・ターゲティングは、サードパーティcookieに依存せずに配信が可能なこと、消費者の興味・関心に基づいてエンゲージできることから、cookie廃止後の世界でマーケターとメディアオーナーがオーディエンスにリーチする手法として、その価値がにわかに見直されるようになりました。とはいえ、コンテクスチュアル・ターゲティングの手法自体は何年も前から存在していたにもかかわらず、今になってマーケティングの切り札として広く活用されるようになった理由はどこにあるのでしょうか。
最初にコンテクスチュアル・ターゲティングが広告シーンへ登場した2007年頃、同じように勢いを増していたのが、サードパーティcookieを利用したユーザー単位の行動ターゲティングでした。この2つの手法の間には競争関係のようなものが生まれ、その結果として、コンテキストベースの手法に対する期待は次第に薄れていくことになりました。
以来、サードパーティcookieはデータとオーディエンスを結びつける主要な役割を担ってきましたが、この手法が完全に機能するようになるまでには、何年もの時間を要したという事実も忘れてはいけません。それだけに、Googleによるサードパーティcookieのサポート終了が2023年まで延期されたとしても、マーケターはオープンなインターネット全体にわたって消費者にリーチ・エンゲージするための代替手法の検討を今すぐに開始しなければならないのです。では、再びコンテクスチュアル・ターゲティングの説明に戻ります。
先日、CriteoがeMarketerと共同開催したTech Talkのウェビナーで、このトピックについて取り上げました。ぜひ、こちらからご視聴ください。(※ウェビナーは英語です。)また、このセッションの中で多くのマーケターとメディアオーナーから寄せられた質問からも、コンテクスチュアル・ターゲティングにまつわるいくつもの誤解があることがわかりましたので、ここでその誤解を解消していきたいと思います。
1つめの誤解:今後はコンテクスチュアル広告がリターゲティング広告の代替手段として重要な役割を果たす
断言できるのは、サードパーティcookieベースの広告に代わるソリューションは1つとは限らないということです。Criteoが、コンテクスチュアル広告をアドレサブル広告やリターゲティング手法を補完する手法だとして考えている理由もここにあります。それだけでなく、コンテクスチュアル広告は今後、これまでになかった直感的な手法でサイトへの有望なアクセスやトラフィックを増加させる、補完的なソリューション以上の役割を果たしていくはずです。
Criteoでは、コンテクスチュアル広告をサードパーティcookie廃止後に業界を主導する3つのターゲティング手法の1つとして位置付けています。
同時に、多くのマーケターやメディアオーナーにとって馴染みのある、1対1のターゲティングを可能にするアドレサブル広告にも引き続き注目していく考えです。業界で広く意見を交換してきた中で、この手法ではインターネットを利用する消費者のわずか15~30%にしかリーチできないことが予測されています。cookie廃止後の世界におけるアドレサブルターゲティングは、マーケターとメディアオーナーの双方が消費者のオプトインを促すファーストパーティデータをつなぎ合わることで初めて成り立ちます。ここにはウェブサイトのログ、アプリのデータ、CRMデータや顧客データプラットフォーム(CDP)で集約されるデータといったオフラインのデータソースも含まれます。
Criteoでは今後、Googleが提唱するプライバシーサンドボックスを使った類似ユーザーの閲覧傾向を踏まえたコホート分析に限らず、多くのコホートターゲティングにも注視していきます。コホートベースのあらゆるアプローチで重要なのは、コンテクスチュアル・ターゲティングと同様に、個人ではなく、消費者グループの興味・関心にターゲットを絞る点です。Googleの計画はすでにテストの初期段階に入っています。Criteoもこのテストに参加し、FLoC(Federated Learning of Cohorts:コホートの連合学習)テストにおける中心的な役割を担っています。Criteoのクライアントを含め、FLoCが業界全体でどのように機能し、どの程度のパフォーマンスを発揮するするのかについて、引き続き分析していきたいと思います。
2つめの誤解:コンテクスチュアル広告の精度に問題はないか?
2021年のコンテクスチュアル・ターゲティングは、1年前と比べて格段に進化しています。キーワード分析やクラスタ分析のレベルを超えて、機械学習によってコンテキストシグナル上の点と点とをつなぎ合わせて、各ページをより深く理解できるようになっているのです。
さらに、コンテクスチュアル・ターゲティングはファーストパーティのコマースデータによって拡張されるため、マーケターは顧客のショッピングジャーニー全体を通して目に見える成果を生み出すことができます。これらを踏まえると、行動ターゲティングが登場していなければ、コンテクスチュアル・ターゲティングは違った形で評価されていたかもしれませんし、今後はさらに革新的な進歩を遂げる可能性を秘めているのかもしれません。
たとえば、特定のSKUや商品タイプ(オンラインやオフラインなど)に関連する顧客のコホートを構築し、このコホートにオープンなインターネット全体のコンテンツから取得したコンテキストシグナルをマージできます。この組み合わせを、Criteoのメディアネットワーク内のすべてのURLに対して実行することで、マーケターは特定のタイプのコンテンツとコホートの親和性を自動的に判断し、最適な場所に広告を配信することができます。
このアプローチによって、特定の商品の購入意欲が高まっているオーディエンスにリーチする上で、どのようなコンテンツが最適なのかという、一見しただけではわからない判断を下せるようになるのです。
3つめの誤解:コンテクスチュアル・ターゲティングの効果はブランド広告に限られる?
この10年ほどの間、行動ターゲティングの後塵を拝してきたコンテクスチュアル・ターゲティングですが、現在はブランド広告にとどまらないさまざまな広告キャンペーンで高い成果を生み出す手法として、大きな期待を集めるようになっています。
Criteoが実施した初期段階のテストでは、クライアントが展開するコンテキストベースのキャンペーンを、ファーストパーティデータを活用したユーザー単位またはオーディエンス別のキャンペーンと比較したところ、購入意欲の高まっている、他と重複していない新たなオーディエンスへのリーチが可能であることがわかりました。
ファネルの中間から下位においても成果を促すことができ、クリックスルー率(CTR)と有望な訪問単価の向上も含め、ブランド指標を十分に上回る成果が示されています。Googleがサポート期間延長を発表してくれたおかげで、サードパーティcookieがまだ利用できる間に比較を繰り返しながら、改善していく時間的な猶予が生まれました。
もちろん、サードパーティcookie廃止後の世界に向けてクライアントが万全の準備を整えられるように、必要に応じてテストの規模を拡大することも可能です。
4つめの誤解:膨大なファーストパーティデータがなければ、コンテクスチュアル・ターゲティング戦略からメリットを引き出せないのでは?
マーケターやメディアオーナーが保有する全データに占めるファーストパーティデータの割合が少なくても、やはりファーストパーティデータはコマースの成果につながる、接続・拡張・アクティベートが可能な「高い価値を備えたデータセット」であることに変わりありません。ここで重要なのは、買い手と売り手の双方にこれらの価値あるデータセットを接続できるようにしておくことです。なぜなら、消費者はアクセスするすべてのサイトで常に同じIDを使ってログインしているとは限らないからです。
ファーストパーティデータにすぐに接続できるようにしておけば、マーケターとメディアオーナーはCriteoのサポートを通じて、個人データの利用を許可したユーザーをすぐに特定できるようになり、サードパーティcookieに依存しない基本戦略の策定が可能になります。
「テスト&学習」を繰り返す文化の醸成
現在、サードパーティcookieのサポート終了に向けて、およそ50%のマーケターがコンテクスチュアル・ターゲティングに新たな予算を割り当てていますが、Criteoはこれでもまだ十分ではないと考えています。
マーケターもメディアオーナーも、サードパーティcookieがまだ有効な間に代替ソリューションをテストするチャンスを逃さないようにしましょう。コホートモデルは、サンプルのボリュームとテスト手法によって学習と最適化の精度が高まります。Criteoではテスト&学習の戦略を奨励し、cookie廃止のカウントダウンが終わるまでに、あらゆる広告プレーヤーにとってベストな態勢が整っていることを願っています。
Criteoと連携しているマーケターとメディアオーナーが保有する許可ベースのデータが、この先何年にもわって広告業界の基盤となることは間違いなく、この新たな世界に確信をもって立ち向かうためには、Criteoが各社のデータに接続してモデルを完成させることが喫緊の課題となっています。
現在、Criteoを含めた広告業界全体が、消費者にリーチして共感を呼ぶ手法にかつてない変革を起こす、今後訪れることのない大きな機会を手にしていますが、その猶予期間はわずか2年です。Criteoは、広告業界が2023年以降も最高のポジションを維持できるように、(Criteoと提携パートナー各社が共同で)今すぐテストを実施し、その成果分析に取り組むことを強く推奨します。
世界各地のマーケターとメディアオーナーから寄せられたQ&Aを含め、コンテクスチュアル・ターゲティングを主題としたeMarketerと共催のウェビナー全編はこちらからご視聴いただけます。(※ウェビナーは英語です)