パッケージを開いたら、「以前より量が減ってる!」
光熱費から食品まで、幅広い業界で値上げラッシュが続く日本。特に都市部ではその傾向が顕著で、2022年11月の東京の消費者物価指数は前年同月比+3.6%の103.6で、約40年ぶりの高水準に達しています。2023年も食品や日用品の値上げが続くと見られ、一部では値上げ前の駆け込み購入や買いだめも起き始めているようです。
値上げには、大きく分けて2つの方法があります。
まずは、容量や内容は変えずに、単純に販売価格を値上げする方法です。すごくわかりやすい方法だけに、値上げのインパクトがストレートに消費者に伝わりやすく、割高感を抱かれがち。「え、このお菓子、前は100円で買えたのに、160円になってる。買うのやめよう」という具合に、消費者離れに繋がりかねないリスクがあります。そのリスクを最小限にとどめようとするのが、もう一つの値上げの方法、いわゆる「ステルス値上げ」です。
ステルス値上げとは、販売価格を据え置く代わりに、容量を減らす方法です。わかりやすい例として話題を集めたのが、スナック菓子のプリングルス。以前は筒状のパッケージの中にぎっしりとチップスが詰まっていましたが、今は筒の半分程度までしか入っていません。その様子を写した写真がSNSに投稿され、「中身、少な過ぎる」、「がっかり」などのコメントが寄せられました。もちろん、これはプリングルスに限ったことではなく、1個当たりのサイズを小さくしたクッキーや容器を小さくしたドレッシングなど、ステルス値上げ(実質値上げ)する商品が後を絶ちません。たとえば、おやつの定番「かっぱえびせん」の場合、1964年発売当初は内容量が130グラムだったのに対し、今年6月には77グラムに。実に約4割も内容量が減ったことになります。食品だけでなく、日用品でもステルス値上げが相次いでいます。たとえば、牛乳石鹸(赤箱、レギュラーサイズ税込110円)は、2022年11月から値段はそのままで、容量を100gから90gにサイズダウンされています。
では、単純に価格を上げる方法の値上げと、ステルス値上げ。どちらが消費者に受け入れられやすいのか。マーケティングリサーチ会社のアスマークが実施した興味深い調査結果を紹介しましょう。
ステルス値上げより、普通の値上げの方が好印象
アスマークが2022年8月30日~9月6日に全国の16歳から79歳の男女を対象に行った調査で、「食品の値上げに伴い、あなたが感じるイメージの変化についてそれぞれお知らせください」と聞いたところ、全体の17.2%が「悪い」と回答、「良い」の13.9%を上回りました。性別でみると、全体的に「どちらでもない」と答える割合が女性の方が高い傾向に。男性よりも女性の方が値上げに寛容なのかもしれません。年代別に見ると、年代が上がるごとに印象が「良い」から「悪い」に変化している傾向。性・年代別では、30代以下の男性が他に比べ「良い」印象を持っており、世帯年収別では、1,000万円以上の層が、「良い」印象を持っていることがわかります。
食品の値上げに伴って感じるイメージ(出典:株式会社アスマーク プレスリリース)
一方、同調査で食品のステルス値上げに伴うイメージについてきいたところ、上記の通常の値上げに比べ、「どちらでもない」の回答割合が減り、特に食品・ブランドのイメージや製造メーカーのイメージが「悪い」と答える傾向が高くなっています。
「食品・ブランド」のイメージについて「悪い」と回答した人は、通常の値上げでは17.2%だったのに対し、ステルス値上げでは34.8%と2倍以上に増加。価格は変えていないが容量を減らす・・・という手法を嫌う消費者が多いことが見て取れます。性・年代別にみると特に60代男性からのイメージが顕著に悪くなる傾向。一方で、30代以下の男性からは好意的に捉える割合が比較的高くみられます。
食品のステルス値上げに伴って感じるイメージ(出典:株式会社アスマーク プレスリリース)
レーダーに捉えられにくいステルス戦闘機のように、こっそり行われるイメージのあるステルス値上げ。値上げ自体は企業の利益確保のために仕方ないことだと頭では理解しつつも、なんとなく裏切られた感を抱いてしまう面は否定できません。企業側には、値上げの理由をしっかり説明し、どのくらいの容量を減らしているのかを明確に表示するなど、誠実な対応が求められます。