若者の約30%が「お酒を飲まない」
私たちの生活様式を大きく変えたコロナ禍。飲酒を取り巻く状況にも変化が見られました。在宅時間が増えたことによって「家飲み」が定着し、コロナ前より飲酒量が増えてしまった人も少なくないでしょう。逆に緊急事態宣言発令中は、長期間にわたって飲食店に酒類の提供自粛が要請されたことに加え、リモートワークによって会社帰りの飲み会や会食が激減したこともあって、めっきり飲酒の機会が減ってしまったという人も多いのではないでしょうか。
こうしたコロナ禍による飲酒機会の減少が追い風となって、世界的に支持を集めているのが、体質的にアルコールを受け付けないわけではないのに、敢えてお酒を飲まない「ソバ―キュリアス」という考え方です。アメリカで活動するイギリス人ジャーナリスト、ルビー・ウォリントンが2010年ごろに提唱したソバ―キュリアスは、「sober」(シラフ)と「curious」(好奇心)を組み合わせた造語で、お酒を飲める人が敢えて飲まない、もしくは少量しか飲まないことを指します。そして、それを実践している人は「ソバ―キュリアン」と呼ばれています。
ソバ―キュリアスは欧米を中心に主にミレニアル世代の若者たちからの支持を得、欧米を中心に世界に広がっています。日本でも近年は若者の酒離れが指摘されており、厚生労働省の令和元年国民栄養調査によると、20歳~29歳の若者のうち29.4%が「飲まない(飲めない)」、26.5%が「ほとんど飲まない」と回答しています。
世界的にソバ―キュリアスが支持を集めている背景としては、ヘルシー志向の高まりに加え、マインドフルネスなど精神的な豊かさを求める傾向が年々高まっていることが指摘されており、ソバ―キュリアスの生みの親、ルビー・ウォリントンの著書「飲まない生き方 ソバ―キュリアス」(方丈社)によると、ソバ―キュリアスの効果として次のような点が挙げられています。
- 睡眠のリズムが整い、ぐっすり眠れて疲れがとれる
- 肌のトラブルが解消する
- 自信がみなぎる
- 生産性がアップする
- 不安が軽くなる
- お金がたまる
- 人生に希望、活力、ときめきを感じる
ソバ―キュリアスを意識した商品が続々と
こうした酒離れの加速を背景に、敢えて酒を飲まない人たち=ソバ―キュリアンをターゲットにした商品やサービスが日本でも続々と登場しています。
もともと日本では大手酒造メーカーがノンアルコールのビールを販売していましたが、最近はノンアルコール+αの要素としてヘルシーさを売りにした商品が目立ちます。
物産フードマテリアル株式会社が2021年秋に発売した「SOBER+」もその1つ。同社が世界各国から集めたハーブやスパイスをふんだんに使って開発したボタニカル系のノンアルコールドリンク。砂糖の代わりに果汁を使い、添加物は一切使用していません。
SOBER+ 出典:物産フードマテリアル株式会社プレスリリース
お酒は飲みたくないけど、お酒を飲むときのムードを味わいたいという人のために、ノンアルコールドリンクに力を入れる飲食店も増えています。ホテルインターコンチネンタル東京ベイでは、2021年のクリスマス用カクテルメニューにノンアルコールのカクテル=モクテルをラインアップし、お酒が飲めない人にもバーでの時間が楽しめるように配慮しています。
モクテル(=ノンアルコールのカクテル 写真右端)もラインアップ
出典:ホテルインターコンチネンタル東京ベイ プレスリリース
2020年にはノンアルコールドリンクしか提供しないバー「0%」(六本木)がオープンしたことも話題になりました。若者の酒離れが進む中、今後はお酒を飲まない人・飲めない人を対象にした新たなマーケットの拡大に、注目が集まりそうです。