今、広告業界ではAppleが6月22日から開催する(もちろんオンラインで)Worldwide Developers Conference(WWDC)で、かなりビッグなニュースが発表されるという噂でもちきりです。2017年のWWDCにおいて、Safariからサードパーティクッキーを排除することが突然発表されたのと同様、今後iOSを使用するモバイルデバイスで広告ID(IDFA)が使えなくなることは、今年最も注目を集める話題になるかもしれません。
IDFAは、iOSアプリ環境下で起こる各イベントを、デバイスを中心とした一貫性のあるショッピングジャーニーとしてまとめるために用いられてきました。IDFAが将来的にどうなるのか、まだ確かなことはわかりませんが、その将来がクロスデバイスターゲティング、パーソナライゼーション、測定、アトリビューションなど、広告業界のさまざまな活動に影響を及ぼす可能性は大いにあります。
オンラインを介したデジタルな手法で世界中から多くの参加者が集う6月22日のWWDCで発表されるIDFAの今後のシナリオについては、以下の3つが考えられます。
まず最もインパクトの大きなシナリオとして考えられるのは、6月22日以降、あるいは数カ月後にはIDFAを使えなくなるというアナウンスがAppleから出されることです。このシナリオは、かつてAppleが広告業界に衝撃を与えた、Safariにおけるサードパーティクッキー使用の突然の排除とも符号します。幸いなことに、今回の変更はあらかじめ予想されていたこともあり、すでにある程度の準備も進められています。とはいえ、このシナリオの通りであれば、あまりに突然の決定であることに変わりはありません。
もう1つの可能性として考えられるのは、IDFAの使用は継続されるものの、ユーザーのプライバシー保護のための制限が強化されることです。これは大規模な変化とまでは言えませんが、広告主、パブリッシャー、広告パートナーは、これまでの手法を変えなくてはならなくなります。
最後の可能性は、IDFAの使用については方針の変更も更新も一切なく、現状が維持されることです。この場合、広告業界は当面の間、何らかの対応を求められることはありません。
Appleが今後、この変更を実施するか否かにかかわらず、すでに広告業界では、「IDFA頼みはいずれ通用しなくなる」という認識が広がりつつあります。ある識者は、この変化はアドテク業界の発展を阻害する要因の1つになると指摘しています。しかし、過去に起きた変化と同様に、広告主が予算を減らすことなく、利益を得られる別の場所に移動するだけに過ぎません。
Criteoは起こりうる変化に対して長い時間をかけて準備してきましたし、アドテクノロジー自体もこれまでと同様に新たな環境に適応し続けていくでしょう。むしろ、こうした変化の悪影響を受けやすいのは、アプリ開発企業とアプリを使用するエンドユーザーです。
加えて、Googleが今後2年以内にChromeでサードパーティクッキーを廃止することを踏まえると、現在の広告業界は大きな変化のときを迎えています。広告の明確なユースケースを想定せずに構築された技術的に低水準な過去のシステムを受け入れ続けるのではなく、現代のニーズに応えるための抜本的な再構成が必要です。より強力なエコシステムの構築に向けて、Criteoはこの課題の解決に尽力していきます。また、ユーザーのプライバシー保護をいっそう強化し、透明性、選択性、コントロールを実現できるイノベーションに貢献するとともに、ユーザーがブランドやコンテンツと主体的な関係を築くための取り組みも継続していきます。
今後、IDFAに代わって業界標準となるソリューションには、ユーザーの権利が最大限に尊重されるよう、現在の広告IDと同様の制限が設けられるべきです。新たな広告IDソリューションは、いつでも監査が可能なように目的ごとに情報フローを分離し、ユーザーが広告データの共有に関する各自のニーズをコントロールできるものでなければなりません。データ使用に関する透明性を確保し、ユーザーが自らの個人情報と引き換えに享受できる価値を簡単に理解できるようにすることで、このようなアプローチはユーザーの信頼獲得につながります。
IDFAやサードパーティクッキーなど、オンラインID全般に関する未来はまだ明確ではありませんが、顧客を中心に据えたオープンかつフレキシブルな方法で、ユーザーの権利が最大限に守られるソリューションの確立を目指すCriteoの信念が揺らぐことはありません。広告業界が共通のソリューションを介して、広告エコシステム全体の改善に向けて共に取り組んでいることは、実に興味深いことです。
またCriteoはGoogleとの協働を通じて、今後も業界をリードしていけることを誇らしく思っています。「SPARROW」の提案は、いわばその第一歩とも言えるものです。これは、興味・関心グループに基づいてプライバシーに配慮したパーソナライゼーションを実現するというGoogleの提案を強化するものです。SPARROWについてCriteoはGoogleともさまざまな意見交換を行い、業界内におけるこうしたオープンなコラボレーションは、私たちが正しい未来に向かって進むための第一歩であることを確信しました。
エコシステムの発展に寄与する一企業として、Criteoはソリューションの提案に加え、寄せられるフィードバックをもとに私たちのアプローチを柔軟に調整していきます。今後も顧客中心のエコシステム構築に貢献し、業界の発展と前進に伴って起こる変化に、クライアントやパートナーの皆さまが対応できるよう、尽力してまいります。
IDFAは間もなく使えなくなるでしょう。しかしその先には、より良いソリューションを構築するための道が続いているのです。