桜も開花して、いよいよ春本番。何かと心浮き立つ季節ですが、今年の春は原油高やロシアによるウクライナ侵攻などを背景に、生活に身近な商品やサービスで値上げが相次ぐ、「値上げラッシュの春」。私たちの家計も、少なからぬ影響を受けそうです。具体的にどんなものの値上げが予定されているのかを見ていきましょう。
電気料金
大手電力会社10社のうち7社が、火力発電に使う原油や液化天然ガス(LNG)などの燃料費高騰を理由に、2022年4月の電気料金の値上げを発表、5月分については10社全社が値上げを発表しました。NHKの調べによると、電気料金は比較できる過去5年間で最も高い水準に。特に東京電力の値上がり幅は大きく、使用量が平均的な家庭の電気料金は4月に比べ146円上がって、8505円となる見込みです。
小麦
政府は国が輸入して製粉会社などに販売する小麦の価格を、4月から前半期に比べて平均17.3%引き上げることを決定。価格は1トンあたり7万2530円で過去2番目に高い水準となる見込みです。これに伴い、小麦を原材料とするパンやお菓子、うどんやラーメンといった食品の値上げも相次いで発表されています。たとえば、即席麺「明星チャルメラ」で知られる明星食品でも、小麦価格や物流費の高騰を理由に、即席の袋麺とカップ麺など計約90品目を6月1日出荷分から値上げすると発表。希望小売価格を設定している即席麺の価格が6~12%引き上げられることになりました。主力製品の「明星チャルメラ」の5食パックは、値上げ前より60円高い615円になる見込みです。
食用油
2021年、原料価格の高騰を背景に値上げが相次いだ食用油ですが、2022年も値上げが続いています。昨年1年間で4度の値上げを行った日清オイリオグループでも、さらなる値上げを発表。2022年4月1日納入分から、家庭用食用油の価格を1キログラムあたり40円以上引き上げます。食用油の原料である大豆や菜種は、近年、脱酸素の潮流を背景にバイオ燃料用の需要が増えているのに加え、主要産地の天候や政情悪化による生産量の減少が予測されているため、今後も食用油の価格高騰は続くものとみられています。
調味料
毎日の食事作りに欠かせない調味料も、世界的な原料不足や物流価格の高騰を受けて、値上げが相次いでいます。カゴメは、世界的な食料需要の拡大によりトマトペーストや固形トマトなどの価格が上がっていることを理由に、2022年4月1日納品分から、トマトケチャップやトマトピューレなど一部商品の出荷価格を約3%~9%値上げしました。オタフクソース(広島市)も、同じくトマトの価格高騰を理由に、主力商品であるお好み焼き用のソースの価格を6月1日納品分から5~9%値上げする、と発表しています。前述の小麦価格高騰と併せて考えると、外食でのピザやトマトソースのパスタ、お好み焼きなども、価格高騰を免れそうにありませんね。
また、日本人の食卓に欠かせない調味料・味噌の価格も上がっています。例えば、味噌製造大手のハナマルキは4月1日から、主力の「新だし入り風味一番」など家庭用で26品に加え、業務用製品の一部の出荷価格を約5~13%引き上げました。
コーヒー
世界最大のコーヒー生産国・ブラジルの大幅な減産予測と、米国・欧州の経済活動再開に伴うコーヒー消費量の増加を背景に、コーヒー生豆国際相場が高騰中。日本でもコーヒーの値上げが相次いでいます。たとえば、味の素AGF社は3月の納品分から「ブレンディ」や「ちょっと贅沢な珈琲店」などのレギュラーコーヒー、インスタントコーヒー96品を、1商品あたり平均2割値上げしました。また、スターバックスコーヒーも4月13日より、定番のコーヒー豆を90円~300円程度、コーヒー、ラテ、フラペチーノ® をはじめとする定番ビバレッジを10円~55円程度値上げすると発表しています。
クリーニング料金
そして、衣替えシーズンに大きな痛手となりそうなのが、クリーニング料金の値上げです。クリーニング業界でも原油価格や人件費の高騰を背景に値上げが相次いでおり、大手の白洋舎も4月1日からクリーニング料金を平均15%(ワイシャツは10%)値上げしました。
トイレットペーパー、ティッシュ
世界的に紙製品の価格高騰が続く中、日本でもトイレットペーパーやティッシュの値上げが相次いでいます。日本製紙グループの日本製紙クレシア(東京)でも、「スコッティ」や「クリネックス」といったブランドで展開する家庭紙製品(トイレットペーパーやティッシュ)の価格を4月1日出荷分から現行価格の10%以上、値上げしました。「在宅ワークで自宅でのトイレットペーパー使用量が増えた」、「この時期は花粉症でティッシュを大量消費せざるをえない」という人も多く、値上げ前の3月末にまとめ買いをする人の姿も報じられました。
以上、ざっと例を挙げただけでも、いかに多くの日用品やサービスの値上げが相次いでいるかがわかります。1つひとつの値上げは小額ですが、積み重なると結構な額になり、ボディブローのようにジワジワと家計を圧迫してくるものと思われます。
節約傾向高まるも、8割超が、「値上がりした商品の購入意向がある」と回答
では、この値上げラッシュの春を、消費者はどのような気持ちで迎えているのでしょうか?共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが「第51回 Ponta消費意識調査」で全国の男女3000人に、「食品値上げによる家計への影響」を聞いたところ、食品値上げによる家計への「影響がある」または「今後影響がある」と回答した人は、全体の約71.9%に上りました。そして、「家計の支出を節約したい」と答えた人は全体の65.5%(2021年12月比+6.4%)に。来るべき物価高に備えて節約をしようという人が増えつつあるようです。
また、「食品値上げによる家計負担の軽減方法」について聞いたところ、最も多かったのは「特売・セールを活用する」で59.6%。次いで「より安価な店舗で買い物する」(44.9%)、「より安価な商品に切り替えて買い物する」(36.9%)と続きました。
なお、「特売・セールを活用する」は、年代の高い層ほど回答が多く、20代が51.9%だったのに対し、60代以上は64.5%と、12.6ポイントも高い結果となりました。一方、「より安価な商品に切り替えて買い物する」は、年代の高い層ほど回答が少なく、20代が44.7%だったのに対し、60代以上は31.6%と、13.1ポイントも低い結果に。年代の高い層は若年層と比べ、商品を安価な物に切り替えるよりも、特売やセールを活用しようという意向が高いことがうかがえます。
また、「ポイントカードを活用する」(20代:36.0%、40代:34.2%)、「スマホ決済や電子マネーなど、ポイントのたまる決済手段を活用する」(20代:26.0%、40代:27.7%)は、20代、40代が他の年代と比べて高い傾向に。ポイントカードの提示やポイントのたまる決済手段を利用してポイントを貯め、食費を節約しようとする傾向がうかがえます。
一方、「値上がりした商品は購入しない」と回答した人は全体の16%にとどまっており、実質的には80%超の人は、値上がりした商品を購入する意向を持っていることがわかりました。そして、値上がりした商品を購入するにあたって重視することを聞いたところ、次のような結果に。
Q値上がりした商品の購入の際に重視することは?
- 品質(54.1%)
- 美味しさ(53.2%)
- 安全性(44.9%)
相次ぐ物価高を目の当たりにして節約したいと思いつつも、値上がりを理由に商品の購入を控えるのではなく、品質や美味しさ、安全性を重視して購入したいと考える人が多いようです。逆にいうと、「安さ」だけが、消費者のハートをつかむ要素ではないということ。大切なお金を投じるに値する品質や安全性が担保されているかどうかを問う消費者の目は、物価が上昇傾向にある今、ますます厳しくなっていきそうです。