ここ数年、一人で行動する人の「おひとり様消費」が注目を集めています。街を歩けば「一人焼肉」や「一人しゃぶしゃぶ」、の店が点在、一人でのキャンプやカラオケ、旅といった「ソロ活」を楽しむ人も増えています。決して家族や友達がいないわけでもない人たちが、あえて一人での行動を望む理由はどこにあるのでしょうか?
クロスマーケティングが2022年11月に全国の20代から60代までの2500人を対象に行った「おひとり様消費に関する調査(2022)」によると、1日の中で一人で自由に使える時間の平均は平日が4.0時間、休日は6.1時間。平日の一人時間が多いのは60代であり、休日になると20代のひとり時間が最も多く、次いで60代という結果となっています。平日・休日ともに一人の時間が少ないのは働き盛り&子育て世代でもある40代でした。
次に、一人時間が必要かどうかを聞いたところ、「必要」と回答したのは全体の63%、「どちらかというと必要」は31%、94%の人が「一人時間が必要」と捉えていることがわかりました。さらに、その理由について聞いたところ、多かった回答は「一人でやりたいことがある」「息抜き・ストレス解消」。具体的には、「コロナにより家族が家にいることが多くなり、家事が増えストレスがたまる」「心身の健康維持のためストレスを溜めない」などの声が聞かれました。つまり、「一緒に行く人がいないから仕方なく一人で行く」のではなく、「一人で誰にも気を遣わずにストレス解消したいから」という理由で、ソロ活を選んでいる人が多いということ。かつては一人での行動には「友達がいない」「寂しい」というマイナスイメージがありましたが、今では「充実した時間を過ごせる」「友達に気を使わなくて済む」というプラスイメージに変わってきているのです。
その傾向が特に顕著なのが、いわゆるZ世代の若者たちです。2018年に行われた「おひとりさまに関するアンケート調査」では、一人で行動することを「とても好き」「まあまあ好き」と答えた18〜29歳は合わせて男女共に約90%にも及びました。では、若者たちは一人で過ごす時間に、どのくらいのお金を使っているのでしょうか?
SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が20代を対象に行った調査で、一人で行動・消費することにお金をかけたいか聞いたところ、「そう思う」と回答した人は全体の56.2%に。男女別にみると、「そう思う」と回答した人の割合は男性では59.4%と、女性53.0%と比べて6.4ポイント高くなっており、男性には、おひとりさま消費に意欲的な人が多いようです。
また、実際に一人で行動・消費することにお金をかけているかどうかを聞いたところ、お金をかけている人の割合は58.5%。ひと月あたりにかけている金額の全体平均は5,362円と、前回調査に比べて1,235円の増加(前回調査4,127円→今回調査5,362円)となりました。
次に、一人時間に若者たちが具体的に何をしているのかを見ていきましょう。2021年のNRI「生活者年末ネット調査」によると、「一人行動に抵抗感の無い活動」として、Z世代男性は他の世代と比べて「国内旅行」「登山やキャンプ」「焼肉や食べ放題」などを挙げる人が多く、Z世代女性では特に「カラオケ」「ライブ・コンサート」を挙げる人が多くみられました。通常はグループでする印象が強いことも、一人でできてしまうことがZ世代の特徴であることは間違いなさそうです。
一人で抵抗なく行動できる若者たちを支えているのは、スマホの存在です。同じくNRIの調査で、「一人で行動する理由」について聞いたところ、Z世代では「スマートフォン利用によっていつでもどこでも時間つぶしができるから」(38%)、「スマートフォンの地図アプリによって、一人で行きたいところに行けるようになったから」(29%)、「一人でいてもSNSによって友達やグループとコミュニケーションが取れるから」(18%)という結果に。一人時間の暇つぶしや移動には、スマホが不可欠な存在であり、スマホの存在がいわゆる「おひとりさま消費」の拡大の一因であることは間違いなさそうです。
このようにZ世代を中心に拡大し続けるおひとり様消費ですが、冒頭で述べたとおり、仕事や家事で多くの時間が奪われる現代人にとって、一人になることは意外と難しいことです。一人時間を確保するために、皆さんはどんなことをしているのでしょうか?
クロスマーケティングの調査で、「一人時間を捻出するために工夫していること」を聞いたところ、以下のような結果に。
- 人付き合いを限定する ⇒無理な誘いに応じない、自分の時間が欲しいときは予定がなくてもはっきり断る
- やるべきことを限定する ⇒優先順位を決め、後回しできることは後回しに。家事はその日に必要なことしかやらない
- 家事・仕事を効率良く済ませる ⇒家事をスムーズに終わらせて家族のいるリビングに留まる時間を短くする。積極的に有給を取る日中、効率良く働いて残業を避ける
- 周囲の協力を得る ⇒家族に「一人で過ごす」旨を断言する。子どもを親族に預かってもらう
回答の中で注目すべきは、タイムパフォーマンスを重視する人、そして自らつながりを求めない人が目立つこと。これはすな わち、タイムパフォーマンスのための消費の拡大と、つながり消費の縮小傾向とリンクする傾向です。少子高齢化、非婚化 が進む日本では、今後、「効率よく家事や仕事をこなして、きままに気兼ねなくおひとり様時間を楽しみたい」という消費 者を対象とした市場がますます拡大していくものとみられます。