個人情報保護を求める消費者の声が高まる中、 ジタル広告業界ではサードパーティ・クッキー廃止後の未来に向かって、様々な取り組みが行われています。今回のブログでは、去る7月28日に行われたCriteo Agency Award CeremonyでCriteoの北APAC担当ソリューションセールススペシャリストの牧野臨太郎が行ったプレゼンテーションを元に、アイデンティティを取り巻くグローバルトレンドとCriteoの取り組みについてご紹介します。
アイデンティティ関連の世界的なマーケットトレンド from IAB EMEA ウェビナー
2022年7月にIABが行ったウェビナーでは、主に次のようなトピックに注目が集まりました。
- プライバシーサンドボックス(ウェブと Android アプリの両方でユーザーのプライバシー保護を強化する業界全体の取り組み)については、今年からオリジントライアル(新機能検証)がスタートしており、そのうちの1つであるTopicsのテストも7月1日に始まっている。そして、今年のQ4(10月)以降の展開を目指して各社がテストを進めている。
- ヨーロッパではすでに80以上のIDソリューションが流通している。
- 流通しているソリューションの強みも、確定、推定、ファーストパーティ・データ管理、クリーンルームタイプなど多彩に揃っている。
- EUID(ECにおける共通規格)の整備も進んでいる。
- 媒体側のファーストパーティ・データの提供も進んでおり、EMEAではTOP1000媒体のうち平均して800程の媒体が提供を開始。アメリカではさらに多くTOP1000のほぼ媒体全てが提供を始めている。
日本ではいまだ様子見の企業が多い中、欧米諸国ではIDへの対応が急速に進んでおり、ウェビナー登壇者からは「以前は変化を恐れていたが、今はプライバシーを理解してアイデンティティへの対応をすることが通常業務に入ってきている」「クッキー以外の手法のテストが進んでおり、(テストをしている企業とそうでない企業間で)知見の二極化が起きている」との声が聞かれました。Chromeでのサードパーティ・クッキー廃止は延期されましたが、延期に安堵することなく、日本でもIDへの対応を加速していかねばなりません。
Criteoの優先項目
もちろん、Criteoでもすでに、アイデンティティ関連のさまざまな取り組みを始めています。ここでは、特に優先的に取り組んでいる項目をいくつかピックアップしてご紹介します。
(1) アドレサブル ~Prebid Addressability Frameworkの活用
私たちCriteoでは、「アドレサブル」=「エンゲージメント~計測~最適化ができる状態のこと」と定義しています。アドレサブルな状態を実現するためには、サードパーティ・クッキーを使わずにユーザーを認識できる、ハッシュ化されたEメールが不可欠です。では、ログインしていない場合はどうするのかという問題がありますが、その解決策として業界全体から注目されているのが、Prebid Addressability Framework (PAF)です。Prebid Addressability Frameworkとは ログインしていない状態でも、オープンウェブ上でマーケターが責任をもって適切なオーディエンスを大規模にターゲティングでき、より良いオンライン体験を提供できるオープンソースソリューションです。
ファーストパーティメディアネットワーク構築のためのPAF活用には、次のような原則があります。
- セキュリティとプライバシーに配慮すること
- 消費者に透明性とコントロールを提供すること
- オープンソースで相互運用が可能なこと
- 独立したガバナンスがあること
また、PAFには次のような機能が備わっています。
- 一貫したIDの生成
- ユーザープレファレンス(ユーザーの好みによって設定を変えられる)設定
- 監査ログ(透明性を発揮するために、必要な時にはトランザクションのデータが出せる機能)
なお、Criteoでは「OneKey」というPAFの仕組みを考案しています。OneKeyでは、賛同する媒体や広告主のサイトに訪問したユーザーに広告配信をどのようにするかを選択できる画面を提示しますが、この画面には、次のような特徴があります。
オプトアウトをいつでも行使可能
OneKeyに賛同する媒体や広告主のサイトに訪問したユーザーに、広告配信をどのようにするかを選択できる画面を提示します。
ユーザーに分かりやすいAd Choice説明
平易なフレーズのAd Choiceの説明文を提示し、ユーザーが適切な判断をしやすいようにします。
初回選択を他サイトでも自動設定可能に
ポップアップを最低限にして、ユーザーのストレスを軽減します。
OneKeyは、まだ開発途中ではあり、全貌をお伝えすることはできませんが、今後も引き続き、外部の皆様のご意見も反映させつつ、より良い仕組みとして整備できるよう準備を進めていきます。
(2) コホート~Privacy Sandbox
冒頭に申しあげたとおり、世界ではPrivacy Sandbox、つまりChromeブラウザでユーザーのプライバシー保護を強化する業界全体を巻き込む取り組みへの注目が集まっています。Criteoはこの領域でユーザー単位ではなく、ユーザー群 (=コホート)単位での可能な限り精度の高いターゲティングの実現を目指します。この取り組みを行うにあたって、Criteoとして重要になってくるのが、次の3点です。
① 理解
- スペックを正しく理解し、様々なケースが起こりうることを把握しておくこと
- Privacyに関する反対派の視点を理解しておくこと
② コラボレーション
- Googleと業界に対してのフィードバックとデータを共有し、より良いソリューションを開発する
- 他社からのプロポーザルへの議論への参加
③ Privacy Sandboxの中で特に関連してくるプロポーザル
- Fledge
- Topics
- Measurement
なお、Privacy Sandboxに関するCriteoの取り組みの現状は、次のとおりです。
- FLoC(Topicsの旧名)とFledgeのテストや議論に週次ベースで参画しています。
- 継続的かつ健全なオープンウェブ実現のため、積極的に議論に参加し、開発の方向性に影響を与える立場を維持しています。
- 7月に始まったTopicsのOrigin Trial (業界内の主要企業が特定期間行うテストで、各新機能の開発に影響を与えるテスト)を始め、上記3つのプロポーザルのすべてに参画しています。
(3) コンテクスチュアル+α ~ミドル&アッパーファネルの効果改善
① コンテクスチュアル×ファーストパーティ・データ
以前はスタンドアローンのプロダクトとして扱っていたコンテクスチュアルについて、今後は、既存のミッド〜アッパーファネルのプロダクトとの統合を行っています。コンテクスチュアルとファーストパーティ・データのマッチングにより、これまで以上に精度の高いターゲティングを実現。すでに、CPM 20%改善、CPO 9~33%の改善という大きな成果を上げた事例も出ています。
② Buyer Indexの活用
また、Buyer Indexという独自のAIスコアリング機能によって、クッキーに頼ることなく、より価値の高い新規ユーザーの発見・獲得が可能になります。
Next Steps~業界全体で前のめりに取り組むことが大切
今後の具体的な取り組みの流れとして、Criteoでは上記のようなロードマップを描いています。2022年Q3は引き続き、Topics Origin Trialに参画し、同時に媒体社側でOneKeyのテスターを募集していきます。
また、Q4には、コンテクスチュアルターゲティングをリターゲティングにも組み合わせることでパフォーマンスのさらなる向上を目指すべく、POCを進めて参ります。
Chromeのサードパーティ・クッキー廃止は少なくとも1年間は延期されることになりましたが、通常マーケティングトレンドは欧米から遅れて数年後に来ると言われていますが、本廃止のタイミングは世界同時にやってきます。日本でも、欧米に後れをとらないよう、早め早めのアクションを取っていくことが極めて重要です。ぜひCriteoのテストに参画いただき、業界一丸となってアイデンティティ対策に取り組んで参りましょう。