約60%が食べている「ギルティグルメ」とは
長引くコロナ禍は、私たちの食生活にも大きな影響を与えました。「リモートワークで出勤がなくなった分、調理にかける時間が取れるようになって自炊が増え、健康的な食事ができるようになった」という人もいれば、「自宅にいる分、ついつい食べ過ぎてしまい、コロナ太りになってしまった」という人、「外食できないので、家でデリバリーやテイクアウトで〝ちょっと良い物〟を食べるのが楽しみになった」という人も。そして今、長引く自粛疲れの反動で「食を楽しみたい!」という願望の高まりを受けて、ブームとなっているのが「ギルティグルメ」です。
ギルティグルメとは、その名のとおり、罪悪感を伴うグルメのこと。たとえば、カロリーの高い肉料理や、ニンニクやチーズをたっぷり使った料理、糖質制限中は食べられない麺類やスイーツなど、「これ、絶対に体によくないよね。太っちゃうよね」と頭でわかってはいるものの、食べることによって満足感やストレス解消効果を感じられるメニューのことを指します。
2022年に「ぐるなび」が行った調査によると、回答者の約60%が「ギルティグルメを食べることがある」と回答。ギルティフードを食べるタイミングとして最も多かったのは「食べることを楽しみたいとき」、次いで「ストレスを発散したいとき」、「魅惑的なギルティグルメをみつけたとき」が続きました。
また、同調査で「どんなギルティグルメを食べることが多いか」を聞いたところ、次のような結果に。男性が肉とニンニクを重視しているのに対し、女性はチーズをたっぷり使った料理を好むことがわかります。
また、ギルティグルメをどこで食べる・調達することが多いかを聞いたところ、最も多かったのが「外食」で全体の53.4%、次いで「スーパーやコンビニで購入」(39.4%)、「飲食店のテイクアウト」(21.2%)で、ギルティグルメには、プロの味が強く求められていることがわかる結果となりました。
ギルティグルメの代表格「唐揚げ」人気で鶏肉価格に影響も
男女ともにギルティグルメとして人気の肉料理ですが、中でもここ数年、一大ブームを巻き起こしているメニューが「唐揚げ」です。肉×油の組み合わせでギルティさはたっぷりですが、美味しくて、しかもリーズナブルに食べられることや、外食だけでなくテイクアウトでも容易に購入しやすいこと、店舗や地域によって味が異なるため食べ比べが楽しめることなどから、ギルティグルメ愛好家からの支持を集めています。近年では、唐揚げブームに目を付けた大手外食企業による唐揚げ専門店への参入が相次いでおり、コンビニやスーパーのホットスナックコーナーでも唐揚げに注力する動きが見られるように。日本唐揚協会の発表によると、2022年4月時点のからあげ専門店の数は推定4379店舗と、前年比40%増を記録。集計を始めた2012年の450店舗から毎年拡大を続け、10年で約10倍に増えています。唐揚げの中でも、近年、好まれるのは、従来主流だった「もも肉」よりも脂質やカロリーが低い「むね肉」の唐揚げ。「唐揚げは食べたい。でも、太りたくないので、少しでもヘルシーな胸肉を・・・」という心理から、もも肉ではなく胸肉の唐揚げを好む人が増えているようです。むね肉と言えば、低糖質ダイエットブームとともにコンビニなどで爆発的に売り上げを伸ばした「サラダチキン」の原材料。サラダチキンブームと、ギルティグルメブームによる需要増で、鶏むね肉の価格は上昇傾向に。日本経済新聞によると、国産むね肉の卸値は2022年9月現在1kgあたり約360円と、コロナ前の2020年当時より4割も上昇。当然、唐揚げの販売価格も上昇傾向にあります。サラダチキンと唐揚げ。この両極端ともいえるメニューが同時に支持されていること自体が、今の「健康でいたいし、太りたくないけど、思い切り美味しいものを楽しみたい」という、ある意味矛盾した食意識を象徴しているのかもしれません。
メリハリある食意識を大切にする若者たち
では、ギルティグルメのけん引役である、若者たちは「太りたくない」と「食べたい」のバランスをどのようにコントロールしているのでしょうか。日本インフォメーション株式会社が行った調査によると、Z世代の女性はY世代の女性に比べて「太らないようにカロリーは気にしている」「野菜をよく食べる」「低糖質を重視している」「低脂質を重視している」など、体型や健康に配慮した食生活を重視している反面、「高カロリー/ギルティフードを食べたくなることがある」と回答。この調査結果を受けて同社では、「Z世代の食への価値観を紐解く共通キーワードは『健康美容に良い』『ギルティフードとしてのトレンド食を食べたい』を両立したメリハリある意識だ」と分析しています。普段は野菜中心のヘルシーな食事をしているが、友人との外食や特別な日の食事には、美味しくてSNS映えもするギルティグルメを楽しむ、若者たちが増えているようです。
まだまだ新型コロナウイルスに油断ができず、健康に気を付けなければならない状態が続いている中、ギルティグルメに限らず、「ストレスを発散しつつ、SNS映えも狙いたい」という若者たちのツボに刺さる新たなコンテンツへのニーズが、ますます高まっていきそうです。