【イベント報告】Criteo最高テクノロジー責任者のD.Gillが ad:tech tokyo keynote講演に登壇

更新日 2021年11月28日

2021年11月1日と2日の2日間、今年で13回目を迎えるアジア最大級のマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech tokyo (以後、アドテック東京)」が開催されました。今年もリアル会場(東京国際フォーラム)とオンラインのハイブリット開催となりましたが、2年ぶりに会場展示が復活したこともあって会場には多くのマーケターが集まり、久しぶりのリアルでの再会を喜ぶ姿も見られました。

今年のad:tech tokyoのテーマは「ACTION!IT’S ALL CONNECTED!」。コロナ禍の影響で私たちの生活様式は一変し、リアルで会う機会が激減。人々の分断化が言われるからこそ、改めて、人と人をつなぐコミュニケーションの重要性を考え、新しい社会をつくるアクションを生み出すマーケターの力が問われています。今回のad:tech tokyoでは、そんな変化を経たからこそ成し遂げられるマーケティングのイノベーション、アップデートは何か?正解がない中でどう行動していくのかについて、参加者にとって今後の指針となるような多彩なスピーチやコンテンツが多数発表されました。

国分 太一氏(株式会社TOKIO 副社長)やズナイデン房子氏(日本マクドナルド上席執行役員CMO)、堀江 貴文氏(SNS media consulting ファウンダー)など錚々たる面々がスピーカーとして登壇する中、Criteoからは最高テクノロジー責任者のDiarmuid Gillがキーノート講演に登壇、「コマースメディア:広告の未来」と題するプレゼンテーションを行いました。

コロナ禍の影響で来日が叶わず、オンラインでの参加となったGillは主に次のような内容のプレゼンテーションを行い、コマースメディアの可能性の大きさを強調、最後に2022年に向けた展望を語りました。

1)コマースメディアとは~What is Commerce Media?

コマースメディアは、認知から購入までの包括的な購買行動におけるカスタマージャーニー全体をサポートするソリューションで、データや機械学習を活用して消費者のカスタマージャーニーに応じてターゲットを絞り込み、エンゲージする新しい広告手法です。これを使うことでマーケターやメディアオーナーは認知度やリード、売上といった具体的な成果を大幅に向上させることができます。

コマースメディアにおけるターゲティングは、従来のターゲティングとは大きく異なり、制限された複雑で競争の激しい競争下でもより大きな成果を得ることを目的としています。コマースメディアを実行するには、膨大な規模のデータセットへのアクセスが不可欠です。そう、あのウォールドガーデンに匹敵する膨大なデータセットへのアクセスが必要なのです。加えて優秀なAIや巨大メディアへのリーチも必要になるでしょう。コマースメディアとは、コマースデータをマーケティングの意志決定に活用してターゲティングを改善することによって、より効果的かつ効率性に優れた広告を作成し、よりリッチな消費者体験の提供を可能にするものです。つまり、コマースメディアを活用すれば、消費者をブランドに、オーディエンスをパブリッシャーに、ブランドを小売店に引き合わせることによって、すべての関係者のデジタル広告の収益を高めることができるのです。

なお、コマースメディアはリテール業界に特化したものではなく、旅行、不動産、自動車など商取引の結果をたどることができるあらゆる業種のオンライン取引に対応しています。コマースメディアは消費者の「認知」から「購買」に至るまでのフルファネルに対応しており、オンラインのみならずリアル店舗にも対応するオムニチャネルでもあります。コマースメディアはオープンでありマーケターとメディアオーナーをオープンなインターネット上で結びつけることによってコントロールと透明性を確保し、本質的にオープンなインターネット市場の創造を可能にします。

2)コマースメディアのトレンド~Commerce Media Trends and Drivers

コマースメディア市場を牽引しているのは、次に挙げる3つの要素です。

①Eコマースの劇的な成長

2020年は新型コロナウイルス感染拡大により世界中でオンラインショッピング市場が大きく成長しました。マッキンゼーの調査によると96%の消費者がパンデミック収束後もオンラインでの購入を続けると回答しています。オンラインショッピング市場が拡大すればするほど、大規模な小売業やウォールドガーデンだけでなく、小規模なD2Cの小売業者の役割も大きくなっていきます。

② ファーストパーティ―データ

Amazonのコマースメディアはプラットフォームのデータを活用して成功していますが、マーケターにはオープンインターネットにおいてファーストパーティーデータを活用することによって成功を勝ち取るチャンスが残されています。ファーストパーティ―データを使えば、クッキーやモバイル広告IDといった第三者の識別子を使わずに魅力的な広告を配信することができるからです。日本のマーケターの約69%がファーストパーティ―データが非常に重要でデジタルマーケティングの成功に欠かせないと回答しており、その重要性はますます高まっていくものとみられています。

③トレードマーケティングのオンライン化

トレードマーケティングのオンライン化によりコマースメディアのトランザクションが加速しています。オンラインショップではますます魅力的な商品やインベントリが増えており、多くのマーケターが従来のトレードマーケティング予算をオンラインに移行させています。マーケティング予算をパフォーマンスの低いアナログ戦略からオンラインリテールメディアにシフトしているのです。マッキンゼーの調査によると、Amazonと中国を除いたリテールメディアの市場規模は、現在140億ドルにも上っており、2022年までに22%成長し、2024年には32兆ドルになると予測されています。

しかし、現在のところマーケティング予算は適切に配分されているとは言えません。消費者の多くはウォールガーデンの外、つまりオープンなインターネット上に滞在し、そこで買い物を楽しんでいるのに、マーケターの多くはオープンなインターネット上ではなくウォールドガーデン内の方に多くの予算を投じてしまっているのです。

3)カスタマージャーにおける具体例~Examples across the customer journey

コマースメディアがマーケティングファネルの中で、どのような役割を果たし、消費者に豊かなショッピング体験をもたらしているのか、具体例を見ていきましょう。Criteoをリターゲティング企業として認識している方には意外に思われるかもしれませんが、私たちはここ数年、お客様のリクエストにお応えしてフルファネルでのソリューションを構築し、提供しています。

たとえば、中国の電機メーカーTCLでは、ブランドや製品の認知度を高めるためにCriteoの動画広告を活用したキャンペーンを展開しました。キャンペーンの目標は視聴完了までのコスト、CPCVを押さえつつ視聴を最大限に促すことで、ハイテク指向の高い人や購入可能性の高い人をターゲットに据えていました。結果としてTCLは期待を大きく超える成果を手にしました。動画広告のビュースルーレートは83%(ベンチマークは77%)に達し、ビューアビリティレートは82%と当初の目標を10%以上も上回りました。またCPCVは2.2ctsと、これも当初の目標を5ctsも上回る成果を上げました。また、CTRは0.23%で、動画をクリックした人の多くをTCLが実施しているフルファネル キャンペーンに誘導することができました。このキャンペーンを成功に導いたのは、優れたキャンペーン設計とCriteoの優れたAI技術です。Criteoを活用すれば月間25億人のアクティブユーザーを含む膨大なコマースデータセット「ショッパーグラフ」から得られる最適なデータに常にアクセスすることができるのです。Criteoでは、AIモジュールの学習に使用した120以上の購入インテントシグナルとユニバーサルカタログに掲載されている45億点の商品を毎日更新し、常にデータを最新の状態にキープしています。

4)コマースメディアの今後~Looking Forward

最後に、コマースメディア戦略を構築するためのステップとして今、マーケターがすべきことをお伝えしましょう。

まず1つ目は、ファーストパーティーデータの管理を改善することです。そして消費者の属性や彼らが何を求めているのかを理解しましょう。2つ目は自社では持っていない情報を補完することにより、ファーストパーティーデータを充実させることです。3つ目は、パートナー企業とのコラボレーションし技術面やサービスの支援を受けること。4つ目は、新たな広告環境を開拓することです。もし、小売店のウェブサイトに自社ブランドの広告を出すことを検討しているなら、今こそテストを始めるタイミングかもしれません。5つ目は、例えばコンテクスチュアル広告など、新たなソリューションのテストと今すぐ始め、キャンペーンの最適化を図ることです。新たなソリューションを試すにあたっては、何を目的とするのかを明確にしておくことが大切です。単に1つの問題を解決することを目指すのではなく、もっと大局的な立場で取り組んでください。個々の問題は大きなパズルの1ピースに過ぎません。

未来がどうなるのかは、誰にもわかりませんが、新たなソリューションをテストして学び続けましょう。そして、マーケターやメディアオーナー、そして消費者にとって価値あるバランスを生み出しましょう。今年はCriteoが日本進出を果たしてから、ちょうど10年目にあたります。これからもCriteoは、広告の新時代においてご支援・ご協力いただいているクライアントおよび代理店の皆さまに深く感謝するとともに、皆さまに寄り添いながらオープンな環境を築いていきたいと考えています。そして今後も日本でのビジネスへの投資を強化し、クライアントやパートナーの皆様が持続可能な方法でビジネスの成功を収めるためのサポートを行ってまいります。

これからのCriteoに、どうぞご期待ください。