この記事は、2023年1月18日付のRetailBizで公開された内容に基づいています。 執筆者:Heath Irving、Criteo、アジア太平洋地域担当動画スペシャリスト
絶えず進化するテクノロジーとAIの恩恵を受け、小売業者はよりパーソナライズされた消費者体験や、場所を問わずにモバイル端末やスマートデバイスから即座にショッピングできる環境を生み出せるようになりました。 ショッピングジャーニーのあらゆる段階でデジタル化が進んでいます。これには、広告を通じて消費者とブランドが最初につながる極めて重要な局面も含まれます。 コネクテッドTV(CTV)は、人気上昇中のプラットフォームの1つで、リーチするオーディエンスの幅を広げる手段として多くの小売業者が検討を始めています。CTVの視聴数は昨年より36%も増加しています。1
とりわけ、ストリーミングサービスでCTVを視聴するユーザー数は順調に増加しており、定額型の動画オンデマンド配信(SVOD)サービスは無料の民放テレビ放送をしのぎ、最も普及した動画コンテンツの視聴手段となっています。2 ストリーミングサービスの数が増えたことは、小売業者にとってのチャンスです。消費者の状況に合わせて、つまり、CTVプラットフォームで番組や映画を楽しんでいるその瞬間に、消費者にアプローチできる状況が生まれているからです。
こうした状況下で、小売業者にはどのような対応が求められているのでしょうか? 本稿では、2023年に予想されるCTVに関する3つのトレンドと、小売業者がそれらに注目すべき理由をご紹介したいと思います。
予測その1:CTVがコマースデータの可能性を最大限に引き出す
今やCTVはマーケティング・ファネルのより広い範囲で欠かせないチャンネルとなっており、自社ブランドや商品と関連性の高いオーディエンスとつながるために小売業者が使いこなさなければならないプラットフォームのひとつになっています。 リニアTV(従来型のTV放送)のストーリーを伝える機能を、デジタルマーケティングのターゲティングと測定手法と組み合わせることができるという特徴を持ったCTVは、リニアTVのリーチ減少を補完する以上の効果を発揮します。
ブランディングやパフォーマンスの観点から見た場合、コマースデータのパワーを生かせるCTVは極めて有効なチャネルとなる可能性があります。CTVなら、サイトトラフィックをはじめ、コンバージョン、ROAS(費用対売上)の実績値を計測することが可能だからです。 小売業者は、AIのようなコマースデータの解析に役立つテクノロジーを活用することで、CTVがもたらす数多くのチャンスを余すところなく生かすことができるでしょう。
2023年には、小売業者はCTVでのコマースデータ活用を推し進めることが予想されます。その結果、「インマーケットな」購買意欲の高い新規および既存顧客を正確にターゲティングできるようになります。 また、強化されたクローズドループ型の計測を通じて、オンライン・オフライン販売の両面でCTVのアクティビティの有効性をより効果的に把握できるようにもなるでしょう。
予測その2:CTVを利用したサービスの競争が激化
プライバシー規制の強化により、ファーストパーティ・データの重要性が増す中、CTVは「プライバシーファースト」な方法で大量のユーザー情報の収集と活用を可能にします。 これを裏付けるように、Criteoの調査では、オーストラリアの5人に1人(20%)3 がよりパーソナライズされた関連性の高い動画広告の提供を求め、広告主に自身の個人データを進んで提供していることがわかりました。
視聴者の詳細なデータを活用できるようになると、ストリーミングサービスで画一的な広告を視聴者に流し続ける意味がなくなります。 番組放送中のTVCMスポットに同じ広告を何度も提示しているプラットフォームをいくつも目にしますが、こうした広告はユーザーを苛立たせ、アピールしたいはずのブランド・商品の印象を悪くするおそれすらあります。
現在、Netflixや7Plusなどのサービスには、広告を通じてプラットフォームで収益を上げるオプションが用意されています。これらのオプションは、消費者の視聴体験にネガティブな影響を与えずに、消費者との関連性の高い優れたシームレスな視聴体験を実現しています。 2023年にこのテクノロジーを利用していないストリーミングサービスは、もはや時代遅れとなるでしょう。
予測その3:次の大きなトレンドは、ショッピング可能なCTV
広告配信型のストリーミングサービスは急激に成長しています。NetflixやDisney、Bingeなどのサービスはいずれもプレミアムパッケージに代わる独自のオプションの展開を開始しました。 これらのオプションでは広告のパーソナライズが可能になり、小売業者にはエンゲージ済みのオーディエンスに関連性の高い広告でターゲティングできるようになりました。さらに、テクノロジーの進化によって、買い物可能な広告(ショッパブル広告)の利用も進むでしょう。
たとえば、貴社の顧客が「ホワイト・ロータス」というドラマをストリーミングで視聴しているとします。ドラマに登場したのと同じリゾート地やファッションなどを宣伝するショッパブル広告を提示すれば、番組に熱中している消費者はすぐにその商品・サービスを購入する可能性が高まります。 CTVでは現在、この手法の実現にQRコードを使用していますが、今後は広告枠内でシームレスに行えるショッピング可能な体験が増えていくはずです。 2023年にはこれと同じイノベーションがテレビ画面でも実現すると予想しています。視聴者は新たなショッピング手段を積極的に利用するようになり、あらゆる瞬間が消費者の購入行動へとつながるようになるでしょう。
2023年はCTV広告への大きなシフトが起こり、よりポジティブでパーソナライズされた体験が実現すると思われます。 小売業者は、コマースデータを活用した関連性に優れた広告や、シームレスなショッピング体験を活用してどのようにCTVの視聴者とエンゲージできるか、考える必要があります。 今こそ、CTVの活用を始めましょう。
12021年の同じ時期と比較。
22021年に社会調査センターがオーストラリア政府のインフラ・運輸・地方開発・通信省に提出した「メディアコンテンツの比較調査」レポート(4~5ページ)
3「動画&コネクテッドTVの利用状況に関する調査」(Criteoがオーストラリアにおいて2021年第2四半期に実施)