ゲスト:恵下 麻理子 氏(株式会社オプト メディア統括兼メディア戦略第1部長)、安田 拓 氏 (株式会社オプト メディア戦略部 メディアプロフェッショナル)
聞き手:鶏田 薫(CRITEO株式会社 Head of Agency Sales & Partnerships)
Criteoの大切なビジネスパートナーである認定代理店の皆様とともに、広告の未来について考える対談シリーズ。第1回は日本のデジタルマーケティングのリーディングカンパニーとして躍進を続ける株式会社オプトの恵下さん、安田さんをゲストにお迎えし、同社の広告戦略の現状と今後の展望についてお話を伺いました。
- 2023年春に新規サイト立ち上げ予定
- キーワードは、「中小企業」
- Criteoの活用法を自社で独自設計
- Criteoを活用した成功事例
2023年春に新規サイト立ち上げ予定
鶏田:今日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。オンラインでは何度もご一緒していますが、リアルでお会いするのはお久しぶりですよね。まずは近況報告というところで、お二人の現在の担当業務について教えていただけますか?
恵下 麻理子氏(以下、恵下):私は現在、オプトでメディア連携の責任者、統轄という立場で、いわゆる主要プラットフォームやCriteoさんとの連携業務や、アフィリエイトの部門でのメディアからの仕入れに関わる業務に関する責任者をしています。昨今は、メディアとの連携が求められる、改正個人情報保護法やCookieレスの問題にも勉強しながら取り組んでいるところです。
安田 拓氏(以下、安田):私は2022年9月までは主要プラットフォームの仕入れに関わる業務と媒体ごとの事例創出を担当していましたが、 2022年10月からは、特定メディアの仕入れ業務と並行し、マーケティング担当者や広告運用担当者に向けた新たなサイトの立ち上げのプロジェクトマネージャーを担当しています。
鶏田:新しいサイトが立ち上がるのですね?どのようなサイトなのですか?
安田:主にデジタルマーケティングにおける最新情報やノウハウ、オプトの事例紹介やセミナーを紹介するサイトです。既存のお客様が悩まれているマーケティング課題に対する解決策や世の中のマーケティングトレンドを知ることができる場所にしたいと思っており、お客様がオプトに相談したいと思ってくださるきっかけや新たなお客様との接点を増やせたらと思っています。
鶏田:これまでの業務のご経験が活かせそうですね。
安田:そうですね。これまでのメディアの皆さんとのリレーションもありますので、自分の力が活かせる場になるのではないかと思っています。
鶏田:サイトオープンの時期は決まっていますか?
安田:2023年の5月を予定しています。
鶏田:ターゲットとして想定している層はありますか?
安田:業種としては特に絞らない方向で検討しております。社としては直近EC市場の伸びには注目しておりまして、そういった意味ではサイトもEC業種向けのコンテンツを多く配信していく方向性では考えております。
鶏田:以前はオプトさんというと不動産や金融が強いイメージがありましたが、今はECに注力していらっしゃるんですか?
恵下:はい。おっしゃるとおり、かつては不動産とか金融業界のお客様が多かったのですが、2020年くらいから、多品目ECを運営されるお客様からのご相談が増えており、特にアパレルや通販カタログを扱うお客様とのお取引が増加しています。なので、今現在のお取引においては、不動産・金融業界のお客様に加えて、多品目ECを運営されるお客様が多いです。
鶏田:なるほど。多品目ECを運営されるお客様には戦略的にアプローチしたのですか?それともEC市場の拡大に比例して御社での取引も増えたのでしょうか?
恵下:はい。弊社では商品データをフィード化する「Feed Terminal(フィードターミナル)」というツールを自社開発して、専門チームが管理・運営しています。商品情報が各プラットフォームに合わせて編集多品目ECを運営するお客様からのお取引が増えています。自社で開発したツールでフィードデータの入れ替えも完全に自社でできるので、どんなデータをくっつけたらどういうアプローチができるのか・・・・・・、みたいなところが結構ノウハウとして蓄積されていて、最近だと「ファーストパーティデータをどう組み合わせるか」みたいなこともできるようになっていますので、そこが他社との差別化に繋がっている感じですね。
鶏田: ONE’s Dataを組み合わせられるということですか?
恵下:そうですね。
キーワードは、「中小企業」
鶏田:多品目系というと不動産や人材、旅行など幅広い分野がありますが、御社ではECが増えているのですね?
恵下:ECですね。商品データが何千万単位になり、データ量が多ければ多いほど、適切にデータと向き合える代理店が限られるので、オプトを選んでいただくことが多いようです。ただ、ECに特化するというわけではありません。これまで以上にECに人的リソースを割いて注力しつつも、金融業界や不動産業界といった従来のお客様に関しても真摯に向き合っていきます。
鶏田: EC市場は、今後も拡大していくと見ていらっしゃいますか?コロナ禍を経て、最近は一段落した感もありますが・・・・・・。
恵下:いわゆるビッグプレーヤーに関しては、これから国内では大型のクライアントはなかなか生まれにくい環境なのかなと思っていますが、海外ブランドはたくさん参入してくると思っています。今回、弊社が通常の営業ではなく、網を張って新規顧客との接点を増やす戦略を取ったのも、中小規模のお客様とのお取引を増やすためです。新興企業や商品点数が少ない企業などもを検討しています。
鶏田:たとえばShopifyさんなどを使っている規模のストアも含めて、接点を増やしていくということですね。
恵下:そうですね。今後特に注力していきたいのは中小企業のお客様です。コロナ禍を機にEC化を進めようとしている企業さんが多いので、ぜひ我々のナレッジを活用いただきたいと思っています。中小企業のお客様だと、「フィード」という言葉にも躊躇されるケースもまだ多いので、弊社で技術面をしっかりサポートさせていただくことで、信頼関係を築いていきたいと考えています。
鶏田:御社はグループ全体としてDX支援にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。
恵下:グループ内にDX支援を専門にやっているデジタルシフト社があります。オプトは広告支援が中心ですが、デジタルシフト社と一緒に広告支援を含めてお客様のDX支援に取り組むことはあります。サイト制作や物流などECの基本を構築するまでの過程はデジタルシフト社で実施し、その後のマーケティングや広告戦略については弊社のインハウス事業部で支援させていただくイメージです。
鶏田:なるほど、ありがとうございます。Criteoも昨年、ECサイト内で広告を配信してマネタイズを支援する「リテールメディア」という新たなソリューションもリリースしていて、国内のEC市場の拡大には大いに期待しているところです。今年は日本においてもリテールメディアに注力して推進していきたいと思っていますので、オプトさんがEC強化に取り組んでいらっしゃると伺って、大変ありがたく、心強いです。
恵下:地方のリテールをEC化するだけで、日本のEC市場拡大にかなり貢献できそうですよね。
鶏田:本当に、そうですよね。海外ではEC化率がすでに20%近くまで進んでいますが、日本はまだ1桁台。 EC化が進めば、デジタル広告のニーズもさらに高まると思うので、ぜひオプトさんと一緒に取り組んでいきたいと考えています。オプトさんは、常にCriteoの新ソリューションもいち早く取り入れていただいていますが、社として「新しいソリューションは積極的に試す」という方針を取っておられるのですか?
安田:新しいものが好きというマインドセットを持っているメンバーが多いこともありますが、最先端の事例を求めるお客様のニーズが年々強くなっていて、それに応えるためにも新しいソリューションを積極的に取り入れています。特にエンタープライズ系のお客様の場合は、そういったお客様のニーズに応えていくためにも「良いものはどんどん取り入れていきたい!」というような、いわゆるお客様に実直なメンバーが多いことも要因かもしれません。
鶏田:なるほど、ありがとうございます。代理店さんによっては、「最初はちょっと様子見よう」みたいなところが多い中で、オプトさんは新しいソリューションを最初に採用してくださることが多くて、とてもありがたく思っています。「まずやってみよう」という精神が、御社のカルチャーとして根付いているのかなと感じています。
安田:有難うございます!弊社は営業とコンサルタントの2体制でやっているのですが、コンサルタントの方はナレッジが豊富で「最先端に行きたい」という気持ちが強いんですよね。広告プロダクトのハックみたいなところに特化しているメンバーが多くて、常に新しい事例を求めていますし、自ら新しい事例を作りたいという使命感を持っているのかもしれません。
Criteoの活用法を自社で独自設計
鶏田: 「Criteoってこういう設計がいいですよ」、「こんなキャンペーンをやった方がいいですよ」といったオプトさんならではの活用方法の提案ノウハウが確立されているのでしょうか?それともケースバイケースなのでしょうか?
安田:基礎の運用方法は確立されていて、「アカウント・クオリティ・サーベイ(AQS)」というアカウント診断があります。各コンサルタントはこれを見てCriteoの活用方法を確認しています。
鶏田:それはオプトさんとしてのベストな設計が分析されているということですか?
安田:そうです。詳細は社外秘なのですが、例えば「フィードの中は、こういうふうに文字数を担保しましょう」とか、そんな感じです。
鶏田:へえ!詳しく知りたいですが、社外秘なんですね(笑)。
安田:はい、社外秘です(笑)。
鶏田:ちなみにフィードの文字数については、実績をベースに確立されたのですか?
安田:そうです。実績をベースに独自のルールを整備しています。例えば、タイトルの先頭にはこれを入れた方がいいとか、見切れないようにしましょうとか、Criteoの文字数はこれくらいです、みたいな感じですね。
鶏田:やはり、AQSに従ってやったほうが、成果は上がるものなのですか?
安田:そうですね。コンサルタントにとってみれば、何か1つ指標があるほうが提案を進めやすいですし、導入支援も進めやすいのだと思います。
鶏田:AQSは全媒体分を作っているのですか?
安田: メインの媒体はすべて作っています。
鶏田:媒体推奨としても、何か指針となるものがあったほうが良いですか?
安田:あると嬉しいですね。
鶏田:ありがとうございます。媒体推奨の指針+代理店さんならではの独自性を付け加えていって差別化をしていければ良いですよね。これからCriteoでも検討させていただきます。
Criteoを活用した成功事例
事例① アパレル企業におけるコンテクスチュアル・ターゲティング活用
鶏田:さて、ここからはCriteoを活用いただいて、成功した事例についてご紹介いただければと思います。
安田:まず某アパレルメーカーでの活用事例をご紹介します。この事例では、ラストクリックではなくファーストクリック・アトリビューションを活用しながら、ターゲティングメニューも拡大することができました。このお客さまには、新規顧客との接点を増やしていきたいというニーズがあって、Criteoで実施したらどうなるだろうかという仮説を立てて始めたところ、予想以上の成果を得ることができました。
鶏田:他のプラットフォーマーも活用している中で、Criteoを選んでいただいた理由は何だったのでしょうか?
安田:他媒体と比較して効果が高く、「最も良い効果が出そうなのはCriteoだ」という結論に至ったのが採用の決め手です。
恵下:Criteoは、データフィードを活用してターゲティングとリターゲティングを全て網羅でき、1つのプラットフォームで完結できるところが、他にはない強みですよね。実際に、良い成果を出してくれるので、お客様からもご好評をいただいています。
鶏田:ありがとうございます。オプトさんはCriteoとして初めての取り組みでもいつも一緒に取り組んでくださるので、大変感謝しています。
※編集注:コンテクスチュアル・ターゲティングは2023年現在、他オーディエンスに統合
事例②:人材系企業におけるアプリ広告配信
安田:Criteoの活用による成功事例として、もう1つ、人材系のお客様のアプリでの事例をご紹介します。本件では、Criteoのプラットフォームを活用してリテンション施策を行い、ロイヤルティ向上に成功しました。
アプリインストールはすでにされているお客様だったので、ユーザーに能動的にアプリを活用し続けていただくために何ができるだろうかと考えていたところに、リターゲティングが非常に強いプラットフォームであるCriteoが候補になり、結果お客様もご納得いただけたので実行に踏み切ったという流れですね。
鶏田:一般的には「アプリをダウロードする人ってもともとロイヤルティが高いわけだから、広告は必要ないんじゃないか」という声もありますよね。「リターゲティングは必要ない、プッシュ通知で十分」や、「既存ユーザーは新規ユーザーと違うから、同じKPIを設定するのはおかしい」という意見もあります。そんな中でリテンションを実施していただけたのは、やはりオプトさんの提案力によるものが大きいのではないでしょうか。
恵下:ありがとうございます。Criteo を含めて複数媒体でも実施した結果、追加で7%くらい新規ユーザーが増えたり、通常の応募も10%増えたりしたので、弊社としても自信になりました。お客様にも、「やった意味があるね」と感じていただけました。
鶏田:嬉しいですね。アプリについては、一時期、ゲーム系も含めて御社でも結構力を入れておられましたが、最近はいかがですか?
恵下:引き続きエンタメ業界のお客様を中心に、活発にお取引をさせていただいています。加えて、最近では、アパレル業界や人材業界といった非エンタメ領域のお客様も自社アプリを活用する例が多く、アプリ広告の量は増えていると思います。
安田:最近はアプリの流れが特にECに結構来ているような気がしています。
新規顧客をアプリに誘導したいというニーズに加え、アプリをインストールしてもらったけど活性化できていないのでリテンションしたいというニーズが増えているように感じています。最近は複数に分散していたアプリを1つに統合した上でインストールしてもらい、ユーザーを自社の商圏にどんどん取り込んでいこうという動きも活発になってきていますね。
<後編に続く>