キャッシュレス決済は高所得者層から浸透
2019年10月1日から消費税率が10%に引き上げられました。今回は、前回の増税時(2014年消費税5%から8%へ引上げ時)に比べ増税による消費の落ち込みが比較的緩やかだと言われていますが、その理由の1つとして指摘されているのが、国が推進するキャッシュレス化推進政策です。
中小企業や個人が運営する店舗やECサイトで商品を購入する際にクレジットカードやQRコードなどのキャッシュレス決済で支払うと、最大で購入額の5%が還元されるとあって、消費者には「増税後もしばらくはお得に買い物ができる」という意識が浸透。これにより、増税前の駆け込み消費や増税後の買い控えが抑制されているのではないかと言われています。
たしかに、今回、Criteoが行った調査でも、回答者の約90%が「キャッシュレス決済により、増税分がポイント還元されることを知っている」と回答しています。しかし、同時に意外な事実も明らかになりました。それは、若い世代ほど、キャッシュレス決済によるポイント還元についての認知度も、キャッシュレス決済の利用率も低いということです。Z世代(18歳~24歳)の15%、ミレニアル世代(25歳~38歳)の13%が「キャッシュレス決済によるポイント還元について知らなかった」と回答。同時に年収1000万円以上の人の56%がキャッシュレス決済を利用しているのに対して、年収400万円~999万円の人の利用率は52%、400万円未満の人の利用率は37%にとどまっており、年収が低いほどキャッシュレス決済の利用率も低いことがわかりました。比較的年収の低い若者世代はキャッシュレス決済の設定(クレジットカードの保有やQRコード決済アプリの登録など)を行っていない可能性も考えられます。
日本人はやっぱり「現金」がお好き?
もちろん、キャッシュレス決済を行わないのは若者だけではありません。Criteoが行った調査では、増税前の支払い方法で最も多かったのはクレジットカード・デビットカードで66%、次いで現金による支払いが44%、モバイル決済や電子マネーによる支払いはそれぞれ約20%にとどまっていました。10人中4人は現金での買い物をしていたことになります。
この傾向は増税後も変わっていません。同じくCriteoが行った調査では、「現在最もよく使う決済方法はなんですか?」との問に対して、クレジットカードと回答した人39%、現金と回答した人は29%に。その一方で電子マネーは16%、モバイル/QRコード決済は15%にとどまりました。これだけキャッシュレス還元に関するメリットがニュース等で取り上げられているにもかかわらず、日本では「現金支払い」が根強い支持を得ていることが明らかになりました。
このほか、属性別の分析では、以下のような結果が得られました。
・低所得者層の約46%が「最もよく使う決済方法」は「現金」と回答
・Z世代やミレニアル世代は35%が「最もよく使う決済方法」は「現金」と回答
なお、現金支払いを選ぶ理由として、「小規模店舗ではキャッシュレス決済ができない」「現金への愛着がある」が多く挙げられました。
今後、キャッシュレス決済対応の店舗や施設が増え、キャッシュレスについての認知度が向上するにしても、日本人ならではの「現金への愛着」は根強く残るものと考えられます。ECはともかく、実店舗では引き続き現金決済を含めた幅広い決済方法への対応が求められるでしょう。
Criteoによる「消費増税前後の消費行動についての分析」をさらに詳しくお知りになりたい方は、こちらよりレポートをダウンロードして御覧ください。