2020年、Googleのサードパーティーcookieサポートの終了発表は、業界に大きな衝撃を与えました。当初2022年とされていた終了時期は2023年に延期されましたが、残された時間はわずか2年足らず。これまでサードパーティーcookieにもとづいたターゲティング広告によって収益を得て来たメディアや広告業界では、cookieなき世界でいかに収益を得るのかが喫緊の課題となっています。
そして今、その対応策としてにわかに注目を集めているのが、いずれもcookieを使わずにターゲット設定ができる「アドレサブル広告」と「コンテクスチュアル広告」です。今回のブログではこの2つの広告施策について、それぞれ概要を確認しておきましょう。
アドレサブル広告
アドレサブル広告とは、addressable(=アドレスを指定できる、の意味)の名の通り、企業やブランドが保有する顧客情報(CRMデータ)をもとにユーザーを指定した上で配信する広告のことで、CRMデータを活用することから、CRM広告と呼ばれることもあります。
アドレサブル広告の強みは何と言っても、自社CRMデータに基づいたターゲット設定ができること。自社データ内にある優良顧客の行動履歴を抽出し、類似傾向のあるユーザー層に対して広告を配信することによってコンバージョン率を高めることができ、新規顧客獲得における精度向上に役立ちます。
アドレサブル広告に対応している代表的な広告媒体としてはFacebookカスタムオーディエンス広告やGoogleカスタマーマッチ広告などが挙げられます。
アドレサブル広告には、主に次のようなメリットがあります。
<アドレサブル広告のメリット>
cookieを使わない
費用対効果が高い
自社の顧客と類似傾向のあるユーザーに的を絞ってアプローチできるので、優良顧客の分析をもとにターゲティングを行えばコンバージョンに繋がりやすいターゲットに効率よく広告を配信できます。
他社との差別化ができる
自社独自の顧客データをもとに配信するので、競合他社とターゲットが被りづらく、広告施策としての差別化が図りやすいと言われています。
既存顧客とのリレーションにも役立つ
休眠状態にある既存顧客にキャンペーン広告を配信して再購入を促すこともでき、既存の顧客とのリレーション向上に役立ちます。
コンテクスチュアル広告
コンテクスチュアル広告は、Webページ内のキーワード、文意、画像などをAI(人工知能)が自動で解析し、文脈(context)に合った広告を配信する手法で、コンテキスト広告と呼ばれることもあります。また、コンテンツの文脈にあわせてユーザーのターゲティングを行うことを、コンテクスチュアルターゲティングと呼びます。
コンテクスチュアルターゲティングを行うと、ユーザーが今まさに閲覧中の文章や画像を元にコンテクスチュアル広告が配信されるため、ユーザーの興味をひきやすく、よりユーザーと関連性の高い広告を配信することができます。例えば、ヴィーガンに関する記事を読んでいるユーザーに無農薬野菜の広告を配信したり、ダイエットの記事を読んでいるユーザーにダイエット食品の広告を配信するイメージです。
<コンテクスチュアル広告のメリット>
cookieを使わない
優れた顧客体験を提供
コンテクスチュアルターゲティングが、行動ターゲティングよりも高いパフォーマンスを発揮することを証明する調査結果が相次いで発表されています。例えばIntegral Ad ScienceとNeuro Insightが行った調査では、コンテンツにマッチした広告は、マッチしていない広告に比べて、広告の詳細情報、行動を促すメッセージ、ブランディング要素などの記憶率が23%高く、より幅広いテーマや全体的なブランドストーリーなどの「包括的な記憶」も27%向上したとの結果が報告されています。また、あるプロバイダーのグローバル調査では、消費者の69%はコンテキストに沿った広告にエンゲージする可能性が高いことが明らかになっています。
精度の高いターゲティングができる
特定のコンテンツを含むウェブサイトに広告を配信する「コンテンツターゲティング」や、キーワードを指定して広告配信する「キーワードターゲティング」と、コンテクスチュアルターゲティング広告の決定的な違いは、AIが文脈を解析し、配信対象を決定すること。高度なAIにより文章の内容だけでなくセンチメント(感情)まで読み取ることができるので、ウェブページの内容と広告の内容の親和性が高くなり、広告する消費やサービスに否定的な内容のウェブページに広告が配信されるリスクを避けることができます。例えばウイスキーの広告を配信する場合にも「酒」がキーワードの記事に一律配信するのではなく、飲酒に否定的な内容の記事には配信されません。
テキスト以外のコンテンツの分析も可能
テキスト解析に加え、画像や動画をスキャンするマシンビジョンで意味を理解したり、音声解析で意味を読み取ることも可能です。このようにしてページに関する総合的な理解が深まり、広告主は動画内広告やオーバーザトップ(OTT)、コネクテッドTV(CTV)といった他のインベントリを選択できるようになります。
ブランドセーフティを確保できる
公序良俗に反する内容のウェブページやネガティブなイメージが強い内容のウェブページに広告が掲載され、ブランドセーフティが損なわれるリスクを避けることができます。
いずれもcookie廃止後の有効施策として注目を集めるアドレサブル広告とコンテクスチュアル広告ですが、より効果的に活用するには、自社顧客データの多寡がカギとなります。Cookie廃止前にできるだけ多くの顧客データを獲得するための取り組みを始めましょう。
なお、Criteoでは自社顧客データをもとに優良顧客や休眠顧客にターゲットを絞ってアドレサブル広告を配信できるプロダクトとして、「Criteo Audience Match」を提供しています。また、AIを駆使して精度が高いコンテクスチュアル広告を配信できる新プロダクト「Criteoコンテクスチュアル広告」を近日中にリリース予定です。ご興味のある方は、ぜひお気軽にCriteo担当者までお問い合わせください。