エコシステムとは「共通の目的を持つ者同士がつながり、相互のやりとりによって形成されるグループ」と定義されています。
しかし、この定義をコマースメディアに当てはめる場合は、少し慎重にならなくてはいけません。コマースメディアは、参加者同士の直接的なつながりがなければうまく機能しません。個々の成功がシステム全体の成功を支えるという、まさに理想的な共生を実現するのがコマースメディアエコシステムです。
今後の成長が期待されるこの新たなカテゴリーでは、どのような参加者が共生に向けた取り組みを行っているのでしょうか。また、彼らのどのようなニーズがコマースメディアへの参加を促しているのでしょうか。
コマースメディアの参加者
コマースメディアエコシステムは、主にマーケター、メディアオーナー、消費者によって構成されています。各参加者にはそれぞれの目的、課題、ニーズがあり、Criteoではそれらに応えるべく、さまざまな活動に取り組んでいます。
マーケター
マーケターをサポートするブランド、小売業者、代理店が、コマースメディアエコシステムの需要側となります。彼らは、さまざまな広告キャンペーンを展開し、商品との出会いから購入に至るまで、インマーケットな消費者に効果的にリーチしたいと考えています。その際に重要なのが、キャンペーンの各段階における成果を高め、正確に測定することです。コマースデータとAIを組み合わせて活用するコマースメディアによって、マーケターはより効率的かつ効果的なキャンペーンを展開し、無駄を削減しながら利益を拡大することができます。
マーケターのニーズ
- コマースデータとAIを活用して、ショッピングに関する消費者の興味・関心や購入意欲を深く理解したい。グローバルなコマースデータセットを活用することで、マーケターは消費者の興味・関心や購入意欲のパターンを特定し、オーディエンスターゲティングを強化することができます。また、予測モデルを作成して商品レコメンドや入札を改善することも可能です。コマースデータが大規模であればあるほど、キャンペーンの成果は高まります。
- ファーストパーティデータに基づく広告ソリューション。GoogleによるサードパーティCookieのサポートが終了すれば、ファーストパーティデータに活路を見いだすほかありません。しかし、十分な量のファーストパーティデータの確保は困難であり、マッチングや同期に多くの手間を要する現在のシステムでは、データロスにつながりかねません。そこでマーケターにとって必要となるのが、コマースメディアソリューションです。ファーストパーティデータを活用するこのソリューションによって、セキュリティ対策とプライバシー保護の両面に配慮しながら、マーケティングファネルのすべての段階における目標に対応することができます。
- リーチの拡大とコントロールの向上を実現する、ウォールドガーデン以外の選択肢。 CriteoがForrester Consultingに委託して行った調査では、回答者のうち北米では80%1が、欧州では77%2が「ウォールドガーデンへの依存を減らしたい」と回答しています。世界のEコマース活動の大部分がAmazon以外で行われていることも考えると、オープンなインターネットのコマースメディアには圧倒的なニーズがあるはずです。
- 広告支出とコマースの成果の関連性を把握。ファネル内の異なる段階にいる消費者に対して、マーケターは認知度やトラフィック、リード、売上など、すべての点でデジタル広告の成果を測定できなくてはなりません。
- プラットフォームを集約して管理を合理化したい。現在、オープンなインターネットにおけるコマースメディアは、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、サプライサイドプラットフォーム(SSP)、小売SSPに細分化され、個別に運営されています。しかし、個人情報保護規則が強化され、サードパーティCookieへの依存が見直される中で、マーケターとメディアオーナーはファーストパーティデータとリーチ可能なオーディエンスの管理と拡大、活用を効率化できるソリューションを求めるようになっています。
メディアオーナー
パブリッシャーと小売業者は、コマースメディアエコシステムを供給する側です。これらの参加者は、マーケターに広告やプロモーションのインベントリを販売したいと考えています。コマースメディアは、データとAIを組み合わせることでマーケターの需要に応えながら、オーディエンスデータをさらに充実させて収益化を実現し、結果として広告収益を高める手段にもなります。
メディアオーナーのニーズ
- ファーストパーティデータとオーディエンスの収益化を支援するソリューションを活用して、広告収益を高める。小売業者がパブリッシャーとしての役割を適切に果たす上で必要なテクノロジースタックを、インハウスで確保することはとても難しい課題です。パブリッシャーの中には、インベントリから獲得する収益を高めようと模索しているところもあります。こうした場合でも、外部のコマースデータやAIアセットの活用が不可欠となるでしょう。
- 広告主の支出をより多く獲得したい。すべてが内部で完結するコマースメディアエコシステムなら、プロセスが簡素化され、メディアオーナーの収益の阻害要因となるさまざまな手数料を削減できます。
- ファーストパーティデータの収集、権利、アクティベーションを管理するソリューション。プライバシーに配慮したオプトイン済みデータセットを構築するために、パブリッシャーは消費者に有益な情報を提供し、消費者の同意を得て、消費者自ら設定を管理できるコマースメディアソリューションを必要としています。
- コントロールメディアオーナーは、データへのアクセスや価格設定、そしてコンテンツの関連性を確保するためのコントロール機能を求めています。
消費者
消費者は、エコシステムの原動力としての役割を担う重要な参加者です。プライバシーへの配慮やコントロールの向上は、そもそも消費者の声によるものであり、これが広告業界の再形成を後押しし、コマースメディアという新たなカテゴリーを生み出そうとしています。マーケターとメディアオーナーの連携なしでは、未来に向かって進む消費者に対して、高い信頼やロイヤルティにつながる体験を届けることはできません。
消費者のニーズ:
- 自分がデータの共有や広告表示を許可したマーケターやメディアオーナーに対するコントロールの向上。消費者は、自身のデータ利用に同意する対価として提供される価値について、より深く理解したいと思っています。また、その同意についても、いつでもオプトインとオプトアウトが可能な状態で管理したいと考えています。
- 関連性に優れた体験消費者はコントロールの向上を求めていますが、関連性に優れた体験に対する興味を失ったわけではありません。消費者の欲求やニーズに対し、適切なタイミングで適切なコンテンツを届けることができれば、マーケターやメディアオーナーはより多くのオプトインを獲得できるはずです。
- 高品質なデジタルコンテンツにアクセスしたり、新しい商品を発見したり、自由な選択肢の利用は今後も行いたい。現在、これらすべてを可能にしているのは広告です。そして、メディアオーナーにとって広告は、さまざまなオリジナルコンテンツをオープンなインターネット上で提供するための資金を得る手段となっています。
コマースメディアは、データ、テクノロジー、コネクションなど、成功に必要なものを各プレイヤーに与え、自立したシステムを作ることを目指しています。マーケターは、キャンペーンの継続に向けた測定可能な成果を獲得できます。メディアオーナーは、オーディエンスを呼び込むコンテンツや体験の継続的な開発のための広告収入を得ることができます。そして消費者には、信頼するマーケターやメディアオーナーからより優れた体験が提供されます。エコシステムは全体のバランスを適切に調整することによって、進化を持続することができます。そして、コマースメディアはこれからも長期にわたって、多くの成果を生み出す続けることになるでしょう。
1 Criteoの委託によりForrester Consultingが実施した調査、北米、2020年7月
2 Criteoの委託によりForrester Consultingが実施した調査、欧州・中東・アフリカ、2020年8月