日本でも3人に1人が経験あり。 急成長するBNPL=後払い決済、EC運営者のメリットは?

広がる「BUY NOW PAY LATER」

ここ数年、欧米を中心にオンラインショッピングの支払い方法として、「BNPL」を利用する人が急増しています。BNPLとは、「BUY NOW PAY LATER=今すぐ買って後で払う」、つまり「後払い決済」のこと。BNPLは2000年ごろにオンラインショッピングの支払い方法として登場、クレジットカードを持たない若者やクレジットカードの使用に慎重な高齢者を中心に支持を集め、瞬く間に市場が急拡大。特に2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大に伴うオンラインショッピングの利用加速を背景に全世界でユーザー数を伸ばしました。

たとえばBNPLのリーディングカンパニーとして知られるスウェーデンのKlarna(クラーナ)は2016年にアメリカ市場に参入、現在は世界19か国でビジネスを展開し、現在のユーザー数は9000万人以上に。また、2014年創業で、オーストラリアを代表するBNPL企業・Afterpay(アフターペイ)のユーザー数は2021年8月現在で1600万人を超えています。こういったBNPL市場の成長は今後も続くと見られており、2025年までに世界のBNPL決済金額はアメリカ国内のVISA年間決済額に匹敵する7000億ドル規模に達するという見方も出ています。

従来の「後払い」とBNPL、どこが違うの?

しかし、BNPL=後払い決済と聞いて、「後払いって、もともとあったよね?」という疑問が浮かんだ方も多いのではないでしょうか?確かに、通信販売等では商品を受け取ってから銀行振り込みやコンビニ決済で支払う後払い方式が採用されているケースは珍しくありません。そういった従来の後払い決済とBNPLは、何が違うのでしょうか?

両者の一番の違いは、後払いする支払いを「分割できるかどうか」です。

従来の後払い決済では、支払回数は原則として一括のみ。たとえば「コンビニ払い」では、商品に同封されている伝票を持ってコンビニに行き、一括で料金を支払います。クレジットカード支払いの場合も、分割払い方式が選べる場合を除いて、原則として購入後1~2か月後に、銀行口座から一括して代金が引き落とされます。また、決済にかかる手数料や振込手数料は原則として消費者が負担します。

一方、BNPLの場合は、同じ後払い決済でも、原則として「分割払い」が採用されます。決済にかかる手数料は、消費者ではなく加盟店(商品の売り手)が負担するため、消費者は手数料を気にせず、分割払いを利用することができます。分割できる回数は各BNPL企業によって異なり、例えば前述のKlarnaの場合は、手数料無料で4回に分割して後払いできるPay in 4という基本プランを設けています。

半数以上が30分以内に購入を決定。「すぐに買いたい」若者たち

BNPL利用拡大の動きは、日本でも2020年ごろから目立つようになっており、2021年9月には米ペイパルが、BNPLを手掛ける日本のベンチャー企業Paidyを3000億円で買収することを発表、注目を集めました。矢野経済研究所では、今後の国内の後払い決済サービス市場は、2020年度の8,820億円(見込)から、24年度には1兆8,800億円にまで拡大し、年平均成長率20%超と大きく成長するとの見方を示しています。

では、日本では実際のところ、どの程度の人が、どんな目的で後払い決済を利用しているのでしょうか?

2021年にメルペイが18歳~59歳の男女800人を対象に行った「消費と支払い手段に関する調査」によると、後払い決済サービスを利用したことがあると答えた人は全体の31.1%に上りました。世代別に見ると、もっとも多かったのが20代で35.6%、次いで30代が33.8%、40代が30.0%で、若い世代ほど利用経験者が多いことがわかりました。

出典:メルペイプレスリリース

また、後払い決済を使う理由について聞いたところ、「支払うタイミングを調整できるから」(54.0%)「利用金額を把握しやすいから」(32.0%)「支払いの見通しを立てやすいから」(26.0%)が上位にランクイン。一方、クレジットカードの利用については20〜30代の後払い決済サービス利用者の約半数(49.5%)が「ついお金を使いすぎてしまう」、約4人に1人(24.3%)が「利用金額を把握しにくい」点を回答しており、クレジットカードの使用について慎重な姿勢を取っている人が多いことが浮き彫りになりました。

なお、後払い決済の利用が多い20代、30代は買い物をするタイミングについても、一定の傾向がみられます。半数以上(54.4%)が「モノ・サービス(3,000円未満)の購入を決断するまでの時間」について「30分以内」と回答、購入シーンでは、「自分が欲しいと感じる時に購入」(67.2%)する人が多いことも分かりました。その理由としては、「いち早く利用したいから」(42.8%)「時間が経つと欲しいものが購入できなくなるかもしれないから」(40.5%)が上位にランクイン、商品と出会ったタイミングを逃さず、購入したいと考える人が多いことがわかりました。

出典:メルペイプレスリリース

意外と堅実!?な「後払い派」

出典:メルペイプレスリリース

欲しいものに出会ったら、チャンスを逃さないように購入を即決。支払いは後払いで・・・と聞くと、老婆心ながら無計画に買い物をして支払いは大丈夫なのかと心配になってしまいますが、メルペイの調査によると、後払い決済サービス利用者の71.4%が、普段の家計管理で「家計簿やノートに記録している」「スマホアプリを利用している」など、収支を把握する工夫を試みていることが判明。非利用者に比べて16.4%高く、家計管理の意向が高い層が後払い決済サービスを利用していることが明らかになりました。後払い=支払いを先延ばしにするという発想ではなく、欲しいものを計画的に購入するという発想で、後払い決済を選択する人が多いと言っても過言ではないのかもしれません。

今後世界的にますます利用者が増加していくと見られる、BNPL。顧客のショッピング体験をより充実させるためにも、オンラインショッピングにおける決済手段の選択肢の一つとして整備することを検討したほうが良いと言えそうです。