AI時代を勝ち抜くマーケターとは?

更新日 2021年01月13日

■AIは私たちの仕事を奪ってしまうのか?

「人間を滅ぼす」という悲観論から「未来をもっと便利で快適にする」という楽観論まで、AIについて、実に様々な議論や憶測が飛び交っています。その中でもよく耳にするのが「AIによって人間は仕事を奪われてしまうのではないか」という議論。雑誌やインターネットニュースで「●●年後にAIに取って代わられる職業ランキング」いった記事を目にしたことがある人も多いでしょう。

たしかにAIの計算力やデータ処理能力は素晴らしく、囲碁や将棋のチャンピオンが次々にAIに打ち負かされるのを見ていると、「いつかAIに仕事を奪われてしまうのでは?」という不安が頭をよぎります。

しかし、本当にAIはあらゆる点で人間よりも優れているのでしょうか?AIは人間の仕事を根こそぎ奪い取ってしまうのでしょうか?

答えは、NO!です。決して、そんなことはありません。AIに取って代わられる可能性が高いのは、日常業務や分析業務がほとんどです。細部にわたる精密さや厳密さ、集中力を必要とする仕事に関しては、確かに人間よりもAIの方が優れています。

しかし、情熱や直感的なひらめきを必要とする仕事については、AIはあくまでも補助的な役割に甘んじるしかありません。なぜなら、まず、AIには想像力がないからです。また、最も重要な点として、「感情」がありません。GoogleのMagentaプロジェクトはこの問題を解決しようとしていますが、AIが創作した音楽やアートは人間が生み出すものからは程遠いのが現実です。AIの歌は単純で感情がこもっていないので、共感を呼びません。AIが描く絵は面白いものの、目的意識に欠けるため見る者の心を動かすことはできません。人間の創作物が持つ「共感性」と「予測不能性」は、見た者・聞いた者の脳を揺さぶる重要な要素の1つであり、それらは技術的には不完全かもしれませんが、実は機械が作り出す「完全なもの」には生み出せない、独自の魅力を持っているのです。

ですから、アーティストやライター、ミュージシャンやセラピストたちの仕事がAIに奪われる可能性は、今のところほぼないと言ってもよいでしょう。

逆に、近い将来、AIに取って代わられる可能性が高い職業として、よく例に挙げられるが、ドライバーです。Virginia Tech Transportation Instituteが2016年に行った研究では、人間による運転よりもAIによる自動運転の方が事故率が低いことが実証されています。同じく2016年にGoogleの自動運転車が約102万3,500キロに及ぶ走行を実現。この中で人の介入が必要とされたのは124回のみでした。

また、レジ係や店員も近い将来、AIに取って代わられるだろうと言われる職業です。2016年、東京の携帯電話店で接客をすべてロボットが行うという試みが行われました。一般的に、反復的で予測可能な仕事であればあるほど、AIに奪われるリスクが高いと言えるようです。

■AI時代のマーケターの役割とは?

では、これからAIがますます進化する時代にあって、マーケターの役割はどう変っていくのでしょうか?

一部の予測が正しければ、AIの発達は私たちに、よりクリエイティブな時間をもたらすことになるでしょう。つまりAIによって面倒なデータの準備や分析作業が不要になるので、クリエイティブなアイデアの創出に、より多くの時間をかけられるようになるのです。

その結果、広告のベースとなるコンセプトとデザインは、今後、ますます洗練したものになっていくでしょう。同時に、それを顧客により的確に効果的に届けるためのデータ分析の精度は、AIの進化に伴って、どんどん向上していきます。

そう、マーケターにとって、AIは決して脅威ではなく、大きなチャンスなのです。

AIの効率性と人間の創造力との融合は、広告の効果を最大限に引き出し、買物客にとってより最適なショッピング体験を生み出します。これを理解し、実際の戦略に生かすことこそ、AI時代に求められるマーケターの役割と言えるでしょう。