AIはマーケティングにどんな価値を生み出すのか?

更新日 2021年01月13日

今やネットや新聞で目にしない日はないといってもいいほど、身近な存在になってきたAI(人工知能)。もちろん、デジタルマーケティング業界でもAIの活用がますます盛んになっていますが、AIの活用によってマーケティング業界には具体的にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?今回はAIが生み出す「価値」について考えてみましょう。

AI(機械学習)活用事例~メイベリン「Makeup Genius」

AIには様々な技術がありますが、デジタルマーケティングの分野で最もよく活用されているのが機械学習やディープラーニングです。これらの技術はコンピュータに大量のデータ処理をさせればさせるほど、精度が向上するため、データと結果が収集しやすいデジタルマーケティングの分野での利用が進んでいるのです。実際、野村総研が2015年に行った調査では、全体で3兆452億円規模に成長したAIアプリケーション市場のうち、検索連動型広告などの広告・マーケティング分野は全体の19%(5,666億円)を占めるまでに成長していることが明らかになりました。

海外の企業では、すでに機械学習を活用したデジタルマーケティングの成功事例が数多く報告されています。例えばアメリカの人気化粧品ブランド・メイベリン。同社が独自に開発したモバイルアプリ「Makeup Genius」は多くの消費者からの支持を集め、アプリのダウンロード数は、すでに1,400万回を超えています。Makeup Geniusには、ユーザの顔をスキャンして60種類以上の特性を分析し、メークアップのシミュレーションが楽しめる機能、顔を動かして別のアングルからメイクの見た目を確認できる機能、さらには気に入ったメイクを保存してSNSでシェアしたり、商品をワンタッチで購入したりする機能を有していますが、これらの機能を支えているのが機械学習なのです。しかもユーザが使えば使うほど、Makeup Geniusにはユーザのデータが収集されます。つまりMakeup Geniusはメイベリンの販売チャネルの1つであるだけでなく、ユーザのデータを収集する機能をもつ独自のアセットでもあるのです。そして収集されたデータは機械学習の技術によって正確かつ迅速に処理・分析され

■成功のカギはAIと人間との協業

膨大な情報がネットを飛びかう今の時代、ブランドは買い物客一人ひとりに合わせて体験をパーソナライズし、メッセージの差別化を図る必要があります。顧客一人ひとりのニーズや興味・関心に訴求するような体験を提供することが特に重視されるのです。とはいえ、それぞれの消費者に対してマーケターが手作業で各広告をパーソナライズすることは不可能であり、現実的ではありません。しかし、Makeup Geniusアプリのように機械学習を活用すれば、人の力では到底処理できないような数のユーザ一人ひとりにあわせて、的確かつスピーディに広告をパーソナライズすることができます。逆に言えば、機械学習によってマーケターは、これまで膨大な手間と時間を費やさざるを得なかったデータ収集・処理・分析といった困難な作業や諸々のルーティンワークから解放されるということ。そして、浮いた分の労力や時間を、機械にはできない活動、つまり戦略のプランニングや発明、他者とのコミュニケーションやコラボレーション、人を感動させるような優れたコンテンツの制作など人間にしかできない活動に費やすことができるようになるということです。同時にAIを活用すれば、これまで不可能だった緻密なデータ分析ができるようになり、課題解決のために最も有効な解を選び出すことも可能になります。つまり、AIの価値を最大限に引き出すには、「AIに人間の代わりをさせる」という発想ではなく、「AIと人が協業する」という発想を持つことが重要なのです。

ともあれ、マーケティング業界においてもAIこそが、市場で競争優位性を保つのに不可欠な手段であることは間違いありません。ただし、ここで問題になるのは、すべての企業がAIを活用するのに十分な量のデータを独自に確保できるわけではないこと。まずは、自社にとって必要なデータが何かを見極め、それをできる限り多く収集し活用できる環境を整えること、これこそが企業がAI導入で成果をあげるためのカギとなりそうです。

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