先週、AdExchanger主催の「Industry Preview」が開催されました。開催地であるニューヨークには、ブランドや代理店やテクノロジー企業等のマーケティングリーダーが一堂に会しました。プレゼンテーションには、業界の幅広いカテゴリーにわたる興味深いテーマが多数取り上げられ、2019年以降にマーケターを待ち受ける未来について、熱い議論が交わされました。
結果として、「2019年がどんな年になるのか」についてのマーケターの予想の多くは、ほぼ共通していました。それは、ビジネスの多くの領域で変革が起こった2018年を経て、2019年は「加速の年になるだろう」ということでした。では、実際には業界のどのような側面が加速することになるのでしょうか?本ブログでは、今回のイベントで最もよく議論されたトレンドを、いくつか取り上げてみたいと思います。
1. Direct-to-consumer(DTC)ブランドが優位に立つ
DTCブランドはもはや「新興勢力」ではなく、一般の人々の間で急速に普及しつつあり、従来のブランドは戦略の再検討を余儀なくされています。このトレンドに遅れをとらないようにするために、従来のブランドやマーケターはどんな戦略を打てばよいのでしょうか。まず考えられる戦略としては、デザインやユーザインターフェイスにフォーカスし、中核的な商品の品質向上を図ることが挙げられます。DTC家具ブランドのArticle.comの共同創設者兼CMOであるAndy Prochazka氏は、この「商品ファースト」の精神を重視しており、「優れたマーケティングキャンペーンの前提条件として、まず商品が優れていなければならない」と話しています。
ではDTCの波とは、どれほど大きなものなのでしょうか。これについてLUMA PartnersのBrian Andersen氏は、「現在のDTCは、例えば2009年に経験した出来事と同じように、あらかじめ展開が決まっていたかのように感じる」と表現しています。まるでこうなることが計画されていたかのように業界が一変してしまったことを踏まえると、すぐに現在の勢いが衰えることはないと言えるでしょう。ただし、こうしたDTCブランドの規模は今後も拡大を続け、長期的な展望を形成するまでに成長するのか、という疑問は残ります。
2. ブランドはオーディエンスを単なる消費者ではなく、人間として理解しなくてはならない
また、「顧客に強い思いをもつことの大切さ」も、複数のセッションで話題の中心となりました。発表者たちは「消費者という立場はあくまで顧客の1つの側面にすぎず、ブランドは彼らを人間として捉えなくてはならないことを理解すべきだ」と強く訴えました。もっとも、今の状況を見る限り、この点で実際に成功を収めているブランドはまだ少数であると言わざるを得ません。
単に収益の拡大を追求するだけではなく、人々が求めているものを提供することこそが、ブランド本来のあるべき姿です。そして、これこそが、まさにマーケターが踏み出すべき前向きな一歩なのではないでしょか。とはいえ、これはブランドのあり方にそぐわないトレンドに追従することを意味するものでは決してありません。Forresterの副社長兼主席アナリストであるJoanna O’Connell氏は、2018年は「理念のマーケティング」を追求した年であったものの、多くのブランドが展開したメッセージには無理があり、アプローチは手探り状態だったと指摘しました。
3. 多くのブランドでインハウス化が優先事項となる
他にもいくつか、カンファレンス中に何度も取り上げられたテーマがありました。「インハウス化」もその1つで、「ブランドは自社のデータ管理を強化することによって、メディアの運用を取り込もうとしている」というトレンドが指摘されました。たとえば、Bayer、Pernod Ricard、Edmunds.comなど、昨今注目を集めているブランドの多くは、ワークフローをインハウス化しています。こうなると代理店は困難に直面してしまうことになりますが、その一方で、ブランドが単純作業を自社リソースでまかない、特定の専門性が必要な戦略や、大局的な視点からのアドバイスは代理店に依頼する…といったケースも出てくるでしょう。こうしたトレンドは既存の代理店の役割を進化させ、新たに重要なマーケティングイノベーションを生み続ける文化を築き上げることに繋がるでしょう。
4. プライバシー保護と透明性がさらに重要になる
2018年はEU一般データ保護規則(GDPR)が施行された年だったこともあり、多くのマーケターが口々にプライバシーの重要性について言及していました。今回のイベントではFacebookからの発表者のみならず、先日GDPRの違反によりフランス政府から5,000万ユーロの罰金を科せられたGoogleの発表者も、「消費者のプライバシー保護にさらに尽力しなくてはならない」との考えを示しました。また、米国連邦政府によるプライバシー保護規制の実現についての質問が挙がると、連邦取引委員会(FTC)のRohit Chopra委員は、連邦議会での法案成立を待つのではなく、州レベルでの法案(たとえば、2018年のCalifornia Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法など)を成立させる必要があると述べました。
5. 次に目を向けるべき広告イノベーションは「テレビ」
オーバーザトップ(OTT)ビデオの台頭により、リニア型テレビ放送は衰退しつつあるものの、テレビはこれまで幅広い分野のトピックを扱いながら旬の話題を提供し続けてきました。TelariaのCEOであるMark Zagorski氏は、2018年に有料テレビは1分あたり7件の加入者を失っていた事実を取り上げ、テレビは世界の出来事をリアルタイムに報道してきたにもかかわらず、契約解除に歯止めをかけられずに衰退を阻止できなかったことを指摘しました。
しかし、驚くべきことに、DTCブランドの成長に伴ってリニア型テレビ再興の動きが起きつつあることもわかってきました。DTCブランドはデジタルファーストな戦略によって進化してきましたが、いったんブランドが確立されると、リーチ拡大に向けてリニア型テレビを活用するようになっているのです。
こうしたトレンドは、今後の可能性のほんの一部分を示しているにすぎません。そして、マーケティングに取り組む上で常に忘れてはならないのは、「変化は一瞬で起こり得る」ということです。今回のイベント、Industry Previewから得られたインサイトや教訓を通じて、私たちは2019年を邁進するための準備を整えることができました。
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