3社がコロナ禍で最高益。GAFAはコロナにどう対処したのか?

更新日 2021年01月21日

新型コロナウイルス感染拡大により多くの業界が苦境に立たされる中、アメリカの巨大IT企業、通称GAFAは「コロナで焼け太りした」とまで評されるほどの好業績を上げました。特にアルファベット(Googleの持ち株会社)、フェイスブック、アマゾンの3社は2020年7月~9月、四半期としては過去最高益を更新、コロナ禍をものともしない勢いで売り上げを伸ばし続けています。その背景には、GAFAの提供するサービス(ECやクラウドサービス、SNS)へのニーズの高まりがあります。これらのサービスは、外出自粛やリモートワーク、在宅学習が普及し、人と人との接触機会を極力抑えねばならない今の時代、まさに必要不可欠な存在となっているのです。

アップルは在宅勤務に必要なデバイスの売上が増加。友人や離れて暮らす家族と会えない期間が長引くにつれ、SNSでのコミュニケーションはますます盛んになり、同四半期のフェイスブックの月間利用者数は直前の3か月に比べて4000万人も増加。デリバリーやEC販売に力を入れ始めた飲食店からの広告出稿が増えたことも、売り上げを後押ししたと指摘されています。そしてアマゾンは外出自粛で実店舗への買い物が難しくなった人たちにとって、もはやなくてはならない存在に。今回のコロナ禍を機にネットショッピングを始めた人も増えていることなどから、今後ますますアマゾンの勢いは増すだろうと予測されています。

また、グーグルは、デジタル広告収入が増加しただけでなくYouTubeなどのクラウドサービスによる収益も増加、まさに「巣ごもり消費」の恩恵を受けて業績を伸ばしました。

今や4社の時価総額はS&P500種株価指数の15%にも及び、4社にマイクロソフトを加えた5社の時価総額は日本の東証1部上場企業の時価総額を超えています。

成長を支えた「迅速な反応」

GAFAがコロナ禍においても業績を伸ばしている理由の1つに、各社が迅速に自社社員に対するコロナ対策を行ったことが指摘されています。まだ新型コロナウイルスの存在が軽視されていた2020年1月、フェイスブックはいち早く従業員の中国への渡航を禁止、中国国内の社員は在宅勤務体制に切り替えました。3月にはGAFAの4社すべてが従業員と請負業者に在宅勤務を要請、年次カンファレンスの延期やオンライン開催を決定するなど、従業員への感染防止対策を徹底。5月にはフェイスブックのザッカーバーグCEOが将来的に従業員の半数を在宅ワークにする方針を示すとともに、リモートワークを前提とした採用を積極的に行うことを表明し、話題を集めました。これに追随して他のIT大手も在宅ワークの継続を表明、例えばGoogleは2021年9月まで在宅ワークの体制を継続することを発表しています。こうしたGAFAの決断は言うまでもなく世界中の企業に大きな影響を与え、在宅ワークの普及を後押したことは間違いありません。

しかし、企業がオフィスを閉鎖することによって、損害を被る存在もあります。例えばオフィスのメンテナンスや清掃を担う業者、食堂運営を担う業者はオフィスが閉鎖されると、その分、売り上げが減ってしまうことになります。この問題についてもGAFAの対応は迅速で、取引先の業者への休業補償の提供を相次いで表明しました。

こうした迅速な対応も功を奏し、2020年を乗り切ったGAFAですが、その対応について「自社を守っただけ」「企業として社会的責任を果たしていない」との辛辣な報道もなされました。また、GAFAによる市場の独占が健全な競争を阻害しているとの批判も高まり、アメリカでは司法当局の規制が厳しさを増しつつあります。また、GAFA同士の「越境」、つまりお互いのサービスへの参入の動きも活発化。たとえばフェイスブックがアマゾンのメイン事業であるECへの参入を加速させたり、アップルがGoogleのメイン事業である検索エンジンの開発に取り組んだりと、独自の動きを見せています。引き続き、先行きが不透明な2021年、GAFAやGAFAをけん制する規制がどう動くのか、注視していく必要があります。