2021年の広告業界を見通す6つのトレンド予測

2020年は、これまで予想だにしなかった出来事が次々に起きた1年でした。私たちの日常を一変させたCOVID-19のパンデミックをはじめ、殺人スズメバチの出現、そして思いもよらず 再び脚光を浴びるようになったQRコード など、多くの変化が相次いだことで、広告主はそれまで練り上げてきたマーケティング戦略をいったん白紙に戻し、その時々の状況に応じた柔軟な対応・適応を余儀なくされました。

消費者行動と広告業界の動向は多くが未知の領域ではあるものの、いくつかのトレンドを把握すれば、今年の見通しや広告主に求められる対策・アプローチの策定に役立てることができるはずです。

本ブログでは、すべての広告主が知っておくべき2021年の6つのトレンド予測をご紹介します。

1. Eコマース市場の大幅な拡大

 今やすべての広告主にとっての共通課題となっているEコマースですが、昨年から続く外出自粛の生活によってオンラインショッピングの拡大がさらに加速しています。世界中の1万4,000社の小売業者から収集したCriteo独自のデータから、米国ではパンデミック以前の2月2日~14日の売上平均と比較して、6月15日~28日のオンライン小売販売が30%も増加 していることが明らかになりました。

これは既存のオンライン買い物客による購入頻度の高まりに加え、必要に迫られて「快適な実店舗空間」から追い出されたことで、新たにオンラインショッピングを利用し始めた買い物客が主な要因となっています。Criteoが世界中の1万3,500人を超える消費者を対象に実施したアンケート調査「新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大のピークから回復期へ」では、回答者の39%が「感染拡大のピーク時に初めてオンラインストアで購入した」と回答しています。デジタルストアを利用し始めたこの新たな顧客層が、デジタルチャネルで既存オーディエンスを増やしたいと考えている広告主にとって、大きなチャンスであることは間違いないでしょう。

2. デジタル広告投資を拡大する広告主

買い物客の53%が、「外出自粛の期間中に少なくとも1つ以上のオンラインショッピングの方法を新たに発見し、それを今後も利用したい」と回答していることから、昨年に引き続き広告主によるオンライン広告投資は増加することが予測されます。また、同じCriteoのアンケートでは、買い物客の85%が「パンデミック中に新たに利用するようになった店舗で今後も購入するだろう」と回答しています。これはつまり、広告主は購入を促すだけでなく、今後数年にわたって顧客ロイヤルティの強化に努めるべきであることを意味しています。

こうした状況から、広告主は今年、仮想イベントや有料ディスプレイ広告、コンテンツマーケティングなど、デジタルマーケティングチャネルを横断した投資を拡大することが予想されます。Criteoが最近実施した「COVID-19がマーケティングに及ぼした影響」に関するアンケートでは、米国のマーケティング担当上級責任者100人に対してパンデミックの発生にどのように適応したかを尋ねたところ、47%が今後6~12カ月の間で有料ディスプレイ広告とリターゲティングのマーケティング予算配分を過去6カ月間よりも増加する予定であると回答しており、ロックダウンが長引けばこの数字はさらに増えることになるでしょう。

 3. コネクテッドTVがマーケティングの主力に

 Eコマースの着実な成長とともに、コネクテッドTV(CTV)とオーバーザトップ(OTT)デバイスの利用もここ数年で増加傾向にありますが、パンデミックによってこの動きにも拍車がかかっています。このことは、広告主にとってCTV/OTTデバイスで消費者とエンゲージすることの重要性が今後ますます高まることを示唆しています。昨年だけでも米国の660万世帯がケーブルTVを解約したというeMarketerのレポートからも、このトレンドへの対応が急務であることが伺えます。

消費者のCTV/OTTへの移行は、すでに広告主の収益にも影響をもたらしており、これを補完するためにもCTV/OTTからのアプローチは広告主にとって喫緊の課題となっています。CTV/OTTの利用者の増加と比例して、これらのプラットフォームでコンテンツを視聴する時間も増加しており、NielsenによるとCTVデバイスの総使用時間は外出自粛の生活が始まると同時に伸び始め(2020年3月30日時点)、現在に至っては前年比で81%増に達しており、1週間当たりのCTVの合計利用時間は40億時間近くに上ります。

 4. 依然として重要なブランドセーフティの課題

ブランドセーフティを重視すべく、2020年は広告予算の投下先に対して一層慎重になり、誤った情報やヘイトスピーチの拡散を制御できないプラットフォームには厳しい反対姿勢を打ち出す広告主が多く見られました。Criteoの「COVID-19がマーケティングに及ぼした影響」に関するアンケートでは、米国のマーケターの4人中3人が「ヘイトコンテンツやフェイクニュースに自社ブランドが表示されないようにすることが非常に重要」と回答していることからも、広告主にとってブランドセーフティが最優先事項であることがわかります。

このことはネット広告業界団体のInteractive Advertising Bureau(IAB)が最近実施した調査でも裏付けられており、77%を超える業界プロフェッショナルがブランドセーフティを重要な優先事項として挙げています。したがって、広告主は自社のブランドイメージやブランド価値を保護・維持するために、広告の配信先をより効果的に制御できるソリューションを求めるようになるはずです。

 5. 新たなアイデンティティソリューションの開発に向けた、業界内のコラボレーションが本格化

広告業界で今、最も重視されているイニシアチブの1つがサードパーティCookieに依存しない新しいオンラインIDソリューションの開発・導入です。これは広告主からパブリッシャー、パートナーのアドテク企業、消費者に至るまで、業界全体に影響する特別な取り組みであり、テスト運用を行う統合ソリューションの開発をサポートすべく進められているCriteoとThe Trade Deskの協働をはじめ、これまでは考えられなかったさまざまな広告プレーヤーのコラボレーションが生まれるはずです。

6. よりシームレスな実店舗でのショッピング体験

2020年はEコマースがトレンドの主役になった一方、消費者にとっては依然として実店舗でのショッピングは優先度が高いので、広告主は引き続き実店舗に注力していかねばなりません。Criteoが実施したアンケート調査「新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大のピークから回復期へ」では、欧州では33%、米国では41%の消費者が、「春と比べて、秋には実店舗でのショッピングが快適に感じられるようになった」と回答しています。これは実店舗でのショッピングに対する信頼度が、回復傾向にあることを示しています。

実店舗でのショッピング体験の変化としては、感染予防対策の強化に加えて、店内の滞在時間をできる限り抑制するための取り組みなどが挙げられます。たとえば、「オンラインで購入し、店舗で受け取る」BOPUSサービスや、無人レジなどのデジタル取引は、現在の消費者のニーズへ最適化されたサービスです。eMarketerが公開している2020年5月時点のデータによると、クリック&コレクトによる今年の米国のEコマース売上は60.4%跳ね上がり、585億2,000万ドルに達すると見られています。当然、広告主は顧客の間で利用が増加しつつあるこうした機能に対応可能な小売業者と連携したいと考えるでしょう。

2021年、力強いスタートを切るにあたって、すでにこれだけのことが分かっているのなら、安心して準備を進められるのではないでしょうか?今回ご紹介したトレンド予測を活かすためには、柔軟で機敏に対応できる戦略のもとで、想定外の事態にも適応できる余地を残しておくことが重要です。2021年は新たな期待も広がっているだけに、何が起きたとしても広告主の皆さまは持てる力を最大限に発揮し、成功を収められると信じています。

David Fox

Criteoで最高商務責任者(CCO)と最高開発責任者(CDO)を兼任するDavid ...