まず、GDPR、CCPAといった消費者のプライバシー保護を目的とする法規制が施行されました。そしてこれに続いたのが、2022年にChromeブラウザでサードパーティCookieのサポートを終了するというGoogleの発表と、iOS 14ユーザーのIDFA(広告ID)取得をオプトイン化するというAppleの発表であり、これらの大きな変化がオープンインターネット上での広告活動に多くの課題を生み出しました。
キャンペーンのパーソナライズや最適化にあたって、デジタル広告の広告主が頼るのはデータです。プライバシー保護規制への準拠とファーストパーティデータセットの確保に迅速に対処した広告主は、すでにサードパーティデータに依存しない未来の広告がどのようなものかを理解し、自社の顧客プロフィールの強化/拡充を進めています。
サードパーティCookieはまだ廃止されてはいませんが、広告主は顧客に十分な価値を提供して、個人データの共有をオプトインしてもらいたいと考えています。しかし、これは誰にでも当てはまるわけではありません。オーディエンスと大規模にエンゲージする広告キャンペーンにおいて、広告主とパブリッシャーはCookie廃止後の対策として「コンテクスチュアル・ターゲティング」に注目しています。
ここで言うコンテクスチュアル・ターゲティングとは、デジタル広告がまだ黎明期にあった頃のものとは異なります。そこで本ブログでは、コンテクスチュアル広告が広告主とパブリッシャー、そして消費者へメリットをもたらす仕組みをはじめ、それが以前よりも洗練された理由、またコンテクスチュアル・ターゲティングのソリューションに期待できる機能について詳しくご紹介します。
すべての人にメリットをもたらすコンテクスチュアル・ターゲティング
Cookie廃止後の世界における広告ソリューションには、広告主、パブリッシャー、消費者間に対等な価値交換が求められます。コンテクスチュアル・ターゲティングがすべての関係者の期待に応える仕組みを以下で説明します。
消費者にとってのメリット
消費者を最優先するのには理由があります。そもそも、広告業界にあらゆる規制や変更が適用されるのは、企業の個人データの利用に対して「消費者に最大限のコントロールを提供し、透明性を確保する」ことを重視するからです。
同時に、消費者はプライバシー保護の強化だけでなく、広告のパーソナライゼーションもある程度求めており、DISQOが実施した広告の関連性に関するアンケート調査では、回答者の大多数(82%)が「関連性のある広告を表示してほしい」と考えています。1
コンテクスチュアル・ターゲティングでは、コンテンツを消費している特定の人物ではなく、消費されるコンテンツの分析に基づいて関連性のある広告を配信します。つまり、サードパーティCookieには全く依存しません。広告のパーソナライゼーションはウェブページから抽出するコンテキスト(文脈)シグナルに基づいており、広告主の間ではファーストパーティデータに含まれるコマースシグナルの併用が一般的になりつつあります。コンテクスチュアル・ターゲティングでは、自身の個人データの共有をオプトインしない消費者にもリーチすることが可能です。
広告主にとってのメリット
「新しい」コンテクスチュアル・ターゲティングが広告主にもたらすメリットは数多くあります。まず、広告主はオープンインターネット上で閲覧中の消費者と、今後も継続的にエンゲージしていく必要があります。Cookie廃止後、この課題の解決に最適なソリューションの1つが、コンテクスチュアルターゲティングです。
このほどCriteoがシニアレベルのマーケティング担当責任者1,000人を対象にグローバル調査を実施したところ、回答者の3分の1が「自社の広告キャンペーンはFacebook/Google/Amazonに依存し過ぎている」と考えていることがわかりました。2
広告主は購入の意思決定に影響し得るあらゆるタッチポイントで、消費者にリーチする重要性を理解しています。コンテクスチュアル・ターゲティングなら関連性に優れた広告を配信し、お気に入りのウェブサイトを次々に渡り歩く消費者にリーチし続けることができます(その仕組みは以下で詳述します)。
パブリッシャーにとってのメリット
広告主に大きな注目が集まっていますが、パブリッシャーも同様にCookieに依存しない広告ソリューションをみつけて、継続的にオーディエンスを収益化しなければならないというプレッシャーを感じています。パブリッシャーもコンテクスチュアル・ターゲティングを取り入れれば、サードパーティCookieに依存することなく効果的な広告枠を提供できるようになります。
コンテクスチュアル・ターゲティングがパブリッシャーにもたらすもう1つのメリットは、除外キーワードが少なくて済むということです。いまやコンテクスチュアル・ターゲティングは大きく進化を遂げ、キーワードだけでなく、ページ内のセンチメントまで理解した上で、関連性や安全性を見極められるようになっています。これにより、コンテンツカテゴリーを丸ごと(たとえばニュース速報のようなグループ全体を)除外する必要がなくなります。
また、コンテクスチュアル・ターゲティングは小規模のニッチなパブリッシャーにも間口を広げ、広告収益を拡大する機会を提供します。非常に限定されたオーディエンスを対象に、コンテキストに即して関連性の高いコンテンツを配信できるようになるからです。
一歩進んだコンテクスチュアル・ターゲティング
業界では今、従来のキーワードターゲティングを上回り、現在のcookieベースの広告に匹敵する成果が見込めるコンテクスチュアル広告キャンペーンの構築に取り組んでおり、購入意欲の高い消費者へのリーチをサポートするコンテクスチュアル シグナルと、ファーストパーティデータの統合にフォーカスしています。ここからは、コンテクスチュアル・ターゲティングが2021年にどのようにアップグレードしているかを説明します。
テキストと画像の奥深い分析
現在のココンテクスチュアル・ターゲティングでは、自然言語処理(NLP)によって、ウェブサイトごとにコンテキスト(文脈)やセンチメント(感情)を深く理解できるようになっています。機械学習のおかげで、広告主はもはやキーワードや包含リストに頼る必要がなく、代わりに最も関連性の高いコンテンツを識別できるAIを利用して、キャンペーンでリーチを拡大できるようになっています。
たとえば、あるライフスタイル関連のキーワードに一致させたい場合、そのライフスタイルに関して否定的な内容のコンテンツを含むウェブページには広告を配信したくないと考えるのは当然のことです。AIはコンテンツのカテゴリーを丸ごと除外してしまうのではなく、各ウェブページ内のセンチメントまで理解し、広告を配信すべきではないページを推測することができます。
さらにテキスト解析に加え、画像や動画、音声を機械学習がスキャンして、意味を理解します。こうしてページに関する総合的な理解が深まり、広告主は動画やコネクテッドTV(CTV)、オーバーザトップ(OTT)での広告配信など、他のインベントリも選択できるようになります。
メディア類似
広告主はココンテクスチュアル・ターゲティングにファーストパーティデータを活用して、顧客ベースのコンテンツに関する興味・関心への理解を深めながら、メディア類似性を利用してオーディエンスにエンゲージしています。
最近の取引に関するファーストパーティデータを分析し、その取引が発生する以前に閲覧していたウェブページとコンテキストカテゴリーを特定できるコンテクスチュアル広告ソリューションを探してください。これらが「コマースシグナル」と呼ばれるものです。
新たに検出されたコマースシグナルやリアルタイムのコンテキストシグナルに基づいて、メディア類似(商品を購入する前に顧客がアクセスした場所と類似したページやカテゴリー)上に適切な商品・サービスの広告を表示します。
これにより、広告主はサードパーティCookieに依存することなく、購入する可能性の高い消費者にリーチできるようになります。
このアプローチを成功させる上でカギとなるのは、ウェブ全体での取引から取得した大規模なコマースデータセットにアクセスできるパートナーとの連携です。
ブランドセーフティ
高度なテクノロジーなくしてブランドセーフティは確保できません。ウェブページのあらゆる要素を機械学習で分析すれば、関連性のあるコンテンツの近くにのみ広告が表示され、不適切なコンテンツへの表示を回避することができます。そうすることで、広告主は安心して広告インベントリやキャンペーンのリーチをさらに拡大することができます。
プレミアムパブリッシャーと強固な関係を構築しているパートナーと連携し、キャンペーンの規模拡大を図るとともに、高度なターゲティングを可能にするファーストパーティのコマースデータを有効活用しましょう。
リアルタイムクリエイティブ最適化(RTCO)
コンテクスチュアルターゲティングに利用するクリエイティブは、各ウェブページで最も関連性の高い商品レコメンドが表示されるよう、リアルタイムに最適化されていることが重要です。広告に掲載する商品・サービスについては、コマースシグナルやコンテキストとの関連性をもとに決定するだけでなく、最も売れ筋の商品を取り入れてもよいでしょう。また、在庫状況、取扱い店舗や場所、サブカテゴリーを踏まえ、カタログから商品をフィルタリングできるオプションも完備されているべきです。
コンテクスチュアル・ターゲティングのチェックリスト
以下はコンテクスチュアル広告キャンペーンを実施するにあたり、最適なパートナーを選ぶためのチェックリストです。
- テキストと画像の奥深い分析
機械学習がテキストと画像だけでなく、動画と音声も解析して、ウェブページ全体のコンテキストを理解できるか。 - メディア類似
サードパーティCookieに依存することなく、メディア類似の構築および購入する可能性の高い消費者へのリーチに、御社のファーストパーティデータを活用できるか。 - ブランドセーフティ
機械学習を活用し、不適切なコンテンツを回避しながらもキャンペーンのリーチを拡大できるか。 - リアルタイムクリエイティブ最適化(RTCO)
コンテキストを考慮して最も関連性の高い商品・サービスを、あらゆるウェブページにリアルタイムに表示できるか。
未来に対応できる広告戦略
コンテクスチュアルターゲティングは、将来への備えとして今年中にテストしておくべき広告ソリューションの1つです。Criteoの「デジタル広告ガイド 2021:予算とチャネルを見直して、新たなショッピングジャーニーに備える」をダウンロードして、御社の広告戦略を調整してみませんか?
1DISQOが実施した広告の関連性に関するアンケート調査、米国、2020年5月、回答者数:999人
2Criteoが実施したアンケート調査「COVID-19がもたらしたマーケティングへの影響」、世界、2020年10月、回答者数:1,039人