新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、すっかり外で飲酒をする機会が減ったという人も多いのではないでしょうか。特に2020年4月7日~5月25日までの緊急事態宣言下では酒類を提供する飲食店自体が営業を自粛していたこともあって、外で飲酒をする機会が激減、それにともなって「家飲み」や「オンライン飲み会」がトレンドとなりました。
リキュールの売上が前年比2倍に
この変化を受けて、圧倒的に売上を伸ばしたのが、家飲み用の酒類。日経POS情報によると、食品ジャンルにおける2020年5月の前年同月比伸び率上位は、1位「スピリッツ」(199.7%増)、2位「生クリーム」(137.1%増)、3位「ケーキ・パン材料」(128.6%増)、4位「プレミックス(ホットケーキミックス、お好み焼き粉など)」(99.7%増)、5位「中国酒」(96.2%増)、6位「リキュール」(87.0%増)という結果に。1位のスピリッツとは、ジンやウォッカ、ラム酒など蒸留酒の総称。帰宅時間や帰宅手段を気にせず飲める「家飲み」では、外で飲む場合よりもアルコール度数の高いお酒を楽しむ人が多いことがわかります。
家で居酒屋気分を楽しめるサービスも
家飲みを楽しむ人が増えるにつれて、雑誌やレシピサイトなどで、家飲み用のおつまみのレシピが特集されるようになり、家で簡単なおつまみづくりを楽しむ人も増えています。一方、自宅でも「居酒屋気分」を楽しみたいというニーズに応えるためのサービスも次々に登場しています。大手居酒屋チェーン「庄や」は「UBER EATS」による宅配サービスをスタート。お刺身や焼き鳥、もつ煮込みなど、居酒屋で人気の定番メニューを注文から30分程度で自宅まで届けてもらうことができます。
こうした家飲み需要の増加の影響は消費支出の変化にも如実に表れており、総務省の調査によると、「家飲み」の酒類は前年同月比21.0%増と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要(2019年9月の30.9%増)以来の大きな伸びを記録しています(※)。一方、外食などで支出された「外飲み」の飲酒代は同90.3%減と落ち込み、未だ本格的な回復には至っていません。
若い世代は「家飲み」を敬遠?
このように、すっかり定着しつつある「家飲み」ですが、すべての世代で受け入れられているというわけではなさそうです。2020年6月にSHIBUYA109Lab.が20歳~24歳の大学生400人を対象に行った調査によると、外出自粛要請期間中に「オンライン飲み会」を開催しなかった人が全体の45.1%を占め、「開催した」と回答した人についても、その回数は「月に1回程度」が最多(14.7%)という結果に。また、外出自粛要請解除後の飲酒スタイルについては、「お店で飲みたい」(54.2%)が最も多く、「自宅でオンラインで飲みたい」という人はわずか7.2%にとどまっています。さらに、家飲みに使う費用については、「月に3,000円未満」と回答した人が全体の78.5%を占めるなど、飲酒離れが進む若者の間では、家飲みやオンライン飲み会は新しい生活スタイルとして定着しているわけではないことが明らかになりました。
新型コロナウイルス感染拡大の第2波、第3波の到来が現実味を帯びつつある中、今後もしばらくは外での「飲み会」の需要は戻らないと考えられます。失った需要を別の形で取り返すにはどのようなアプローチが有効なのか、飲食店や酒類メーカー世代別の対策を迫られることになりそうです。