空路・陸路ともに予約が急増
2021年9月30日、緊急事態宣言が全面解除されました。不要不急の外出や県境をまたぐ移動の自粛要請から解放され、早速、旅行や外食に繰り出した人も多いのではないでしょうか。その証拠に、10月に入ってから各交通機関や旅行会社の予約状況は揃って増加に転じています。
ANAによると10月の1日あたりの予約数は、9月前半には5000人程度だったのに対し、緊急事態宣言の解除予測が出始めた9月中旬から増え始め、下旬には1日あたり5万人と、約10倍に増加しました。10月最初の週末3日間(1日~3日)の予約数は計11万人で9月最初の週末に比べて15%増加。行き先別で見ると好調なのは北海道と九州で、ビジネス・観光双方での需要が戻ってきていると見られています。
鉄道での移動も増えており、JR東日本でも10月に入ってから新幹線や特急などの指定席の1日当たりの予約数が回復、9月末に比べ約4割増加しています。
緊急事態制限解除後の旅行、行きたい地域No.1は?
株式会社attaの調査では緊急事態宣言が解除により、旅行への意識自体も大きく変化していることがわかりました。同社が緊急事態宣言解除直後の2021年10月1日に全国の男女約1000人を対象に行った調査で、「自由に国内旅行に出かけられるようになるのはいつ頃になると思いますか?」と聞いたところ、最も多かったのは「2022年4月〜6月」で全体の20.7%でした。前回の調査では最も多かった回答は「2024年以降」(22.1%)だったことから、緊急事態宣言解除を機に「より早い時期に旅行を再開できる」と考える人が増えていることがわかります。
また、同調査で「自由に国内旅行に行けるようになったときに、どの地域に旅行したいですか?」と聞いたところ、最も多かったのは「北海道」(45%)、次いで「沖縄」(39%)、「関西」(30%)、「南関東」(25%)と続きました。
旅行したい地域については、前回の調査と大きな変化は見られず、緊急事態宣言の解除による影響も見られませんでした。
withコロナ時代の旅行に求められるのは?
では、コロナ禍という未曽有の経験を経た今、人々はどんなスタイルの旅行を求めているのでしょうか?大手旅行会社・日本旅行が2021年9月に行ったアンケート調査で「これからの旅行選びで魅力的な形態は?」と聞いたところ、最も多かったの「感染対策を取られた宿泊施設での宿泊」(28%)、次いで「感染対策を取られた公共交通機関での移動」(21%)、「3密を避けられるマイカー、レンタカーでの移動」(18%)と、交通機関や宿泊先での感染対策や他人との接触を避けたいとする声は一貫して上位を占めており、旅行者の感染対策への意識は依然として高いままであることがわかります。
続いて「次の旅行は何がしたいですか?」と聞いたところ、最も多かったのは「温泉でのんびりと過ごしたい」(27%)、次いで「グルメ旅を満喫したい」(16%)でした。「グルメ旅を満喫したい」との回答は過去の調査に比べて増えており、コロナ禍で外食の楽しみを制限されていたことから、旅先でおいしいものを食べたいというニーズが高まっていることが見て取れます。
さらに、「次の旅行での懸念点」を聞いたところ、「公共交通機関での移動で3密にならないか」が最も多く、次いで「宿泊先での感染対策」、「旅行先の感染拡大状況」、「観光地での混雑」と続きました。「これからの旅行選びで魅力的な形態」と同じく、公共交通機関や宿泊先、観光地での感染リスクを懸念する人が依然として多いことがわかります。
これらの調査結果をもとに日本旅行では「感染対策がしっかり取られている交通機関や宿泊施設を選び、密を避ける行動はウィズコロナ時代における旅行のスタンダードとなる。そのうえで他人との接触は最低限に抑えることと、個人や家族などの小規模グループで温泉や食事、観光を楽しむことの両立を求める『超個人型』ニーズが高い」と分析しています。緊急事態宣言は解除されたものの、いまだ感染が収束したわけでもなく、第6波を懸念する声もある中、旅行需要の順調な回復を促すには、withコロナを前提にスモールスケールな楽しみを求める「超個人型」ニーズを満たせるかどうかが、カギになると言えそうです。