ここ数年、少しずつ認知度が高まっている新しい広告取引市場・PMP(Private Market Place)。日本ではまだ「普及している」とまでは言えない状況ですが、先行国のアメリカではすでに市場として定着しつつあることから、日本でも今後の成長が期待される市場として注目を集めています。ここではPMPの基本について確認していきましょう。
PMP誕生の背景
PMPとは、一言でいうと「参加できるメディアと広告主が限定される広告配信の仕組み」です。従来のRTB(Real Time Bidding)の場合、広告主はSSPに接続している媒体であれば自由に入札が可能ではあるものの、どこの媒体の枠に配信されているかは分からない状態で取引がされるため、広告枠の品質や透明性などが課題となっていました。ブランドイメージを低下させるようなサイトに掲載されてしまうケース、媒体情報が開示できないケースも珍しくなかったため、ブランドイメージを重視する大手企業にとっては出稿しづらいものでした。また、最近ではビューアビリティの低さもRTBの抱える課題として指摘されていました。
その点、PMPでは出稿できる広告主は限定されるものの、SSPを介して特定の配信媒体/枠に配信を行うことができるので、広告を掲載するメディア・枠位置を把握でき、かつ、広告の在庫予約や固定単価での購入が可能です。ちなみに、従来のRBTは、PMPの登場以降、PMPと明確に区別できるよう「オープン形式」、「オープンオークション」、「オープンマーケット」等と呼ばれるようになっています。
PMP取引の種類と特徴
では、現在のところPMPにおいては、どのような取引がなされているのでしょうか?代表的なPMP取引の種類と特徴は以下のとおりです。
1. Invitation Only Auction
「招待制オークション」、「プライベートオークション」、「プライベートエクスチェンジ」等と呼ばれる取引形態のこと。この取引では、媒体社が特定の広告主・代理店にのみ、自社の在庫を解放したり、通常と異なる単価やフロアプライスで提供するのが特徴。媒体社の価値が下がりにくいため、プレミアム媒体社も参入しやすくなり、結果としてブランド広告主も取引に参入しやすくなります。
2. Unreserved Fixed Rate
「非予約型優先取引」や「プリファードディール」とも呼ばれる非オークションタイプの取引形態で、媒体社と広告主・代理店が、配信オーディエンスや単価について事前に同意することから取引が始まります。「在庫量」や「期間」については保証しないモデルとなるため、純広告のような使い方ではなく、絶対に欲しいオーディエンスに対しては高い単価で優先的に買いたいというニーズに有効な取引です。
3. Automated Guaranteed
「在庫予約型固定単価取引」「プライベートディール」等と呼ばれる取引形態です。こちらの形態も「Unreserved Fixed Rate」と同様にオークションではありませんが、「Unreserved Fixed Rate」と違って「在庫量」「期間」についても予約することが可能。配信料、単価、期間などを事前に同意・契約した媒体社・広告主間のみが、この取引を行うことができます。
純広告との違いは「利便性」の高さ
PMP取引の特徴をまとめると、「配信料や単価を決めてマニュアルに同意を行い、プレミアム媒体を買う」ということになるので、読者の皆さんの中には「純広告と同じでは?」と思う方もいるかも知れません。しかし、PMP取引には純広告とは違って「DSP/SSPを経由している」という大きな特徴があります、このため、次のようなメリットを享受することができるのです。
- ターゲティング・オーディエンスデータの設定の精度を上げる事が可能
- エクセルやメールベースではなくプラットフォームの管理画面で簡単に受発注管理ができる
- 収益を管理しやすい
- つまり、純広告の安心感とDSP/SSPの利便性を同時に実現するのが、PMP取引だということができます。
課題は「PMPについての正しい認識」を持つこと
以上のように、媒体社にとっても広告主・代理店にとっても様々なメリットがあるPMP取引ですが、その取引形態への理解不足から「PMPとは良質の在庫を安く買うための取引である」と誤解している人も少なくありません。この誤解が広まれば、PMPの成長は鈍化してしまいます。「PMPとは良質な在庫を、さらにパフォーマンスよく買うための取引である」という正しい認識を各自が持ち、かつ広めていくことが、これからPMPの成長に欠かせないカギと言えるでしょう。
参考:
http://www.iab.net/media/file/IAB_Digital_Simplified_Programmatic_Sept_2013.pdf