オリンピックの経済効果、当初予想を大きく下回る結果に
コロナ禍の混乱の中、異例づくしの開催となった東京オリンピック。開催前には中止を求める声も高まりましたが、選手たちの奮闘は様々なドラマと感動を生み、当初危惧されていたほどの混乱は起きませんでした。しかし、その経済効果について見てみると「成功した」とは言い難い状況であるようです。
野村総合研究所の試算によると、フルで観客を入れた場合の東京オリンピック開催の経済効果は1兆8,108億円でしたが、無観客としたことによってチケット購入や関連する消費(交通費、宿泊費など)の合計が1309億円減少。結果として、オリンピックの経済効果は当初の予定を7.2%下回る1兆6,799億円となる見込みです。
一方、政府は8月17日、当初2021年8月末までとしていた4回目の緊急事態宣言を9月12日まで延期することを発表しました。同じく野村総合研究所の試算によると、この延長措置により、4回目の緊急事態宣言の経済損失は計3.42兆円に上ると見られています。つまり、東京オリンピックの経済効果の約2倍に上る損失が出てしまう計算になります。
また、東京オリンピックについては、開催後の会場の収支についても、懸念の声が上がっています。特に1569億円もの巨額の公金を投入して建設された国立競技場の維持管理費は、年間24億円。パラリンピック閉幕後に運営権は売却されると見られていますが、果たして買い手が見つかるのか、見つからない間の維持費はどうやって確保するのか、注目されています。
グッズの販売は予想以上に好調
経済的には暗いニュースばかりが報じられる東京オリンピックですが、明るいニュースもチラホラと。1つは、開幕前はまったく注目されなかったオリンピック公式グッズが、開幕後に売れ行きを伸ばしたこと。開幕前は閑古鳥が鳴いていた公式グッズショップは、開幕後になって徐々に客が増え続け、日本が過去最多の金メダルを獲得した7月末ごろからは客足が急増、来店客数が開幕前の約7倍にまで増えたことが報じられました。来店客からは「競技を見て感動したが、無観客で現地に応援にいけないので、せめてグッズを買って応援したい」「スケートボードの堀米選手に感動し、関連グッズを探しに来た」との声も。
また、メダリストたちが身に付けていたアイテムも注目を集めています。たとえば、卓球男子の水谷隼選手が身につけていたサングラスのメーカー「山本光学」(東大阪市)のオンラインショップにはアクセスが集中、一時、同モデルの商品(1万7600円)の閲覧ができないほどの人気となりました。
また、男子スケートボード(ストリート)で初の金メダルを獲得した堀米雄斗選手が着ていたNIKEのTシャツは、メダル獲得の翌日にオンラインショップで完売。実店舗でも売り切れ状態が続いています。
メダリストたちの運の強さにあやかろうというファンも多く、「開運アイテム」として爆売れしているアイテムも。例えば、卓球女子で銅メダルを獲得した伊藤美誠選手が着用していたコラントッテのネックレスや、競泳女子個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依選手が履いていた京都青旭堂のソックス(滋賀県のゆるきゃら〝ひこにゃん〟のイラスト入り)も注目を集めました。
オリンピックの余韻も冷めやらぬ中、8月24日からはいよいよパラリンピックが開幕します。メダルの行方はもちろん、パラアスリートたちにより、どんなヒット商品が生まれるのかにも、要注目です。