何かわからないことや知りたい情報があったとき、皆さんはどうしますか?
一番多い回答は「ググる」かもしれませんね。ググるは、「Googleで検索する」の意味で使われる言い回しのひとつで、最近ではGoogleに限らず「検索サイトで調べる」という意味で使われることもあります。しかし、最近、若者を中心に「ググらない」人が増えています。
理由として挙げられるのが、ネット上の情報が多すぎて、検索しても「自分が本当に欲しい情報」がなかなか見つからず、手に入れるまでに時間がかかってしまうから。検索窓にキーワードを打ち込むと、検索結果がずらりと表示されますが、その表示順位はコントロールされていて、検索上位に並んでいるのは広告やPR記事であることも多く、表示されたものを1つひとつ確認していかないと、本当に欲しい情報が掲載されているページが見つけられません。もちろん、幸運にも上位に表示されたサイトや記事の中に欲しい情報が出ている場合もありますが、そうでない場合は、欲しい情報を求めていくつものサイトをはしごして情報を探さねばなりません。それで情報にたどり着ければまだ良いのですが、途中で脱線してしまい他の記事をついつい読みふけって時間を無駄にしてしまったり、結局お目当ての情報をみつけられなかったりした経験がある人も多いのではないでしょうか?
そんな不満から生まれたサービスが、検索サイトやECサイトが提供する「おすすめ機能(レコメンド機能)」です。過去の検索履歴などをもとに、検索者の興味のある分野や商品を特定し、関連する情報を自動的に提示してくれる機能です。
たとえば、Googleニュースではその日の主要ニュースのほかに、「興味関心に基づくおすすめ」として、過去に検索したキーワードに関連する記事が表示されます。ECサイトでは以前購入した商品に類似した商品や、同じブランドの商品、購入した商品の最新版などの広告が表示されます。検索結果として表示される膨大な情報の海で探すよりも、最初から自分と関連性の高い情報や商品がピックアップされている「おすすめ」の中から探す方が、はるかに効率よく目当ての情報、好みの商品を手に入れやすいというわけです。
そう、インターネットで情報を得る方法は今、「検索する(調べる)」と、「おすすめを見て出会う」の2つに大きく分かれているのです。そして、年齢が若いほど、後者を選ぶ傾向にあることもわかっています。
株式会社イー・クオーレが2021年6月に全国の男女約1000人を対象に行った調査で、ネットで情報を得る際に、月に1回以上、視聴・利用するものについて聞いたところ、ベビーブーマー(1946~1964年生まれ)とX世代(1965~1980年生まれ)では「検索サイト」「公式HP」が、Y世代(1981~1996年生まれ)は「口コミサイト」「まとめサイト」と回答した人が多かったのに対し、最も若いZ世代(1997~2012年生まれ)では「SNSのタイムライン/ウォール/ストーリー」「SNSに出てくるお勧め」「SNSに出てくる広告」「YouTubeのお勧めにあがる動画」と回答した人が多いことがわかりました。おすすめ情報の情報源別に見ると、「SNSのタイムライン/ウォール/ストーリー」に表示される「おすすめ」から情報得ていると回答した人の39.2%、「SNSに出てくるお勧め」と回答した人の23.9%、「SNSに出てくる広告」と回答した人の25.9%、「YouTubeのお勧めにあがる動画」と回答した人の45.3%をZ世代が占めています。
イー・クオーレの調査では、検索ではなく「おすすめ」されたものを見る機会が増えた理由について、次のような声が寄せられています。
- 自分で調べなくても調べ物が解決するから
- 気になっている者が上手に「おすすめ」にあがってくるから
- 自分では気づかない新しいトピックスやトレンドを知るのには、自分から検索するよりもレコメンドを有効に活用するほうが情報の幅が広がる
- SNSをみて紹介されたものが気になることが増えた
逆に、検索で調べることをやめた、もしくは調べる頻度が減ったという人たちからは、次のような声が。
- 情報量が多く、目が疲れてしまう
- 検索の幅が広いので、なかなか自分の知りたい情報が出てこない
- 情報量が膨大なため、検索作業と収集した情報の精査作業が大変
- 複数ある情報源のうち、どれを信頼すれば良いのかわからず検索に時間がかかる
インターネットを介して手に入る情報が多いこと自体は素晴らしいことですが、その量があまりに膨大であるため、情報収集がかえって非効率になっていることを、「ググらない理由」として挙げる人が多いことがわかります。
これまで多くの企業はいわゆるSEO対策に力を入れ、自社サイトや商品が検索結果の上位に表示されるための様々な施策を行ってきました。しかし、今やそれだけでは不十分です。今後は「調べない人」を念頭においた情報発信の方法を確立し、正確にパーソナライズした情報や商品を、適切な場所で適切なタイミングで表示できるかが、マーケティングのカギを握ると言っても過言ではないでしょう。