D2Cのメリットは?
D2C(Direct-to-consumer)とは、自ら企画・製造した商品を、自ら運営するネットメディアを通じて直接消費者に販売する事業形態のことで、日本でもここ数年、急速に普及しています。D2Cのメリットはなんと言っても企画から販売まで一貫して自社で手掛けることで、自社のビジョンやブランド理念などを消費者にストレートに伝えられること。そしてビジョンや理念に共感してくれた顧客=ファンのデータを自社で直接収集・蓄積し、新製品の開発に生かしやすいことも、D2Cビジネスを展開するメリットの1つと言えるでしょう。
こういったメリットを背景に、D2Cに参入する企業やメーカーは業界を問わず増え続けており、株式会社売れるネット広告社の調査によると、2019年にはD2Cの市場規模は2兆円を突破。同社では、コロナ禍によるネットショッピング加速の影響もあり、今後D2C市場は拡大を続け、2025年には3兆円を突破すると予測しています。
出典:「株式会社売れるネット広告社」プレスリリース
D2Cブランド対象の支援ビジネスも続々誕生
当初、アパレルや化粧品業界で広まったD2Cですが、最近は食品やインテリア、ペットフードなど実に幅広い業界にも広がっています。原則としてD2Cブランドは実店舗を持たず、SNSで消費者にアプローチしてECサイトで販売するビジネスモデルなので、比較的少ない資本で始めることができるため、著名人やインフルエンサー、職人などの個人事業主による参入も目立ちます。
たとえば、身長155cm以下の女性のためのアパレルブランド「COHINA」もその1つ。低身長ゆえに洋服選びに苦労していた女性2人が立ち上げたD2Cブランドで、創業者2人が毎日発信するインスタライブが人気を集め、今ではフォロワー数約18万4,000人を誇る人気ブランドに成長。2021年4月末には試着専用の実店舗を東京・表参道にオープンする予定です。
COHINAのように個人や小規模な事業者がD2Cブランドを立ち上げる際、障壁となりやすいのが「企画・した商品を実際にどこで、どうやって作るのか」という問題です。理念をもってブランドを立ち上げ、商品を企画することができても、それを製造できる技術や場所がなくては、商品化はできません。特に立ち上げたばかりで資金力も知名度もないD2Cブランドから小ロットでの発注を受けてくれる製造工場を探すのは、簡単ではありません。
また、商品力があっても「SNSをうまく運用できない」「ECサイトの構築が上手くいかない」といった問題から、思うように売れ行きが伸ばせないケースも珍しくありません。そう、D2Cブランドは、ブランドの立ち上げ自体は低コストで実現できても、商品をコンスタントに供給し続けて収益化し、事業として継続させることは決して容易なことではないのです。
こういった事情を背景に、最近ではD2Cブランドの事業をサポートするビジネスも次々と誕生しています。たとえばアパレル商品を作りたい人と工場をマッチングする「シタテル」や、D2Cによる化粧品のOEM製造に対応するサティス製薬、ショップ運営やOEM・流通業者の選定などを代行するApollo D2Cなどが注目を集めており、今後も「肝心の商品企画に注力するために、高い専門性が求められる製造やIT関連の業務は外部委託したい」というブランドからのニーズは、高まっていくものとみられています。
いずれにせよ、D2Cブランドを成長には、顧客との交流の場としてSNSを活用し、販売を通じて「最高の顧客体験」を提供することが欠かせません。そのためには、「良い商品」を作るだけでなく、適切なマーケティング戦略や広告配信、安価で確実な商品発送など実に様々な配慮が求められることになります。自社内ですべき業務・外注すべき業務を適切に線引きし、外部サービスを上手く使い分けられるか否かが、D2Cブランドの成否を握っているといっても過言ではなさそうです。