マーケターは「機械学習」をどう活用すべきか?

更新日 2021年01月13日

■機械学習をマーケティングの「予測」に活用するには?

様々な分野で機械学習の活用が進む中、セールス&マーケティングの分野では、主に機械学習の「予測」機能を活用する例が多くみられるようになってきました。たとえば、ユーザの購買履歴や属性情報のデータを収集・分析して「購入する可能性が高いユーザ」を予測し、彼らを対象に絞ってキャンペーンを展開する企業、あるいはキャンペーンの売上予想に活用する企業もあります。では、実際に機械学習を使った予測の効果を最大限に引き出すには、どのような手順が必要になるのでしょうか。電通デジタルシニアコンサルタントの有益伸一氏は日経×TECH Activeのインタビューで、予想の大まかな手順について次のように解説しています。

STEP1 データの定義

機械学習を使った予測をするには、予測の目標を明確にデータとして定義することが大切。例えば「どのように優良顧客化するか」を予測する場合は、そもそも自社にとっての「優良顧客とは何か」を明確に定義する必要があります。

STEP2 データの準備

必要なデータを準備します。具体的な作業としては社内の複数の部署に分散しているデータを統合したり、データの表記を統一する、データの不備を補完することなどが挙げられます。

STEP3予測モデルの構築

機械学習のアルゴリズムの中から最適なものを選び、データを読み込ませ、パラメーターのチューニングをしながら予測の精度を向上させ、目的達成に最適な予測モデルを構築します。

STEP4 予測とメンテナンス

予測モデルを使って実際に予測をします。定期的に予測の精度をチェックし、モデル自体をメンテナンスする必要があります。

■技術や知識の前に、まず必要なのは・・・?

この4つのSTEPの内容を見るとわかるとおり、機械学習を使った予測には、実に高度な技術や知識が必要です。特に「STEP3」の機械学習のアルゴリズムの選定は難しく、高い専門性をもつデータサイエンティストの力が不可欠。実際に「専門家がいないから機械学習の導入は無理」とあきらめてしまっている企業も多いことでしょう。しかし、機械学習の活用を阻む最大のボトルネックは、技術や知識の不足ではありません。なぜなら、技術や知識の不足は外部の専門家の力を借りることによって、補うことができるからです。では、機械学習の活用を困難にする最大の原因はいったい何なのでしょうか?

それは、「データの不足」です。かなり規模の大きな企業でも、機械学習による有効な予測を得るのに十分な量のデータが蓄積できていないケース、蓄積できていたとしても整理できていない・使える状態になっていないケースが多いのです。読みこむデータがないことには、せっかくの機械学習のテクノロジーも何の役にも立ちませんし、当然ながら予測もできません。その意味で、機械学習活用の第1歩はデータの収集と整理だということができます。

AI時代、マーケターに求められる力は?

もちろん、データの収集も簡単なことではないので、どの企業にもできることではありません。ただし、自力で必要なデータ量を確保できない企業でも、例えばCriteoのショッパーグラフのように膨大なデータを共用できるソリューションを利用することで、この課題をクリアすることができます。

では仮に十分な量のデータを収集でき、機械学習による予測が実現できたとしたら、それで御社のマーケティング戦略は成功するのでしょうか?残念ながら答えはNO。どんなに機械学習が精度を上げても、マーケターの力なくして成功はありえません。前述の有益氏もこの点について次のように指摘しています。「予測したいデータを定義するのも、出てきた数値やインサイトを解釈するのも人間であり、予測した結果からのアクションを考えるのも人間です」。そう、機械学習は確かに人間には不可能なほど正確かつ迅速にデータを処理・分析し、予測を打ち立てることができます。しかし、どんなデータが必要かを考え、機械学習によって得られた結果を判断し、施策に反映させるのはマーケターの役割です。有益氏は機械学習時代にマーケターに求められるのは「洞察力」、つまり機械学習によって得られた数字や予測の本質を見抜く力だと指摘しています。さらに言えば、機械にはないクリエイティビティや臨機応変な判断力も、これからのマーケターに欠かせないスキルになるはずです。

幸い、機械学習に代表されるAIの力で、多くのマーケターはこれまで膨大な時間と労力を費やさねばならなかったデータの処理や分析、その他のルーティンワークから解放されつつあります。浮いた時間と労力を使って、人間にしかできない仕事、つまりイノベーティブな仕事やクリエイティブな仕事に積極的に取り組みましょう。そうして「人間にしかないスキル」を磨くことが、AI時代に求められるマーケターの条件となるでしょう。人間とAIが共に働き、お互いの価値を引き出し合う環境を生み出すことこそ、AIが私たちにもたらす最大のメリットといえるのではないでしょうか。