「デジタルノイズ」が耳障りに感じるようになった現代、広告を見てもらうためには、パーソナライゼーションが最も有効な手法であることを、多くのマーケターは知っています。なぜなら、買物客がその瞬間に欲しいと思っている内容に広告がカスタマイズされていなければ、彼らにとってまったく意味がないからです。
この数年の間で、ダイナミッククリエイティブの最適化機能がディスプレイキャンペーンのパフォーマンスを改善する有効な手法として、デジタル広告業界に浸透した理由は、まさにここにあります。誰でも簡単に利用できる優れた機械学習テクノロジーがあれば、マーケターは常に買物客の好みや閲覧履歴に合わせて広告を最適化することができるのです。
すでに「ダイナミッククリエイティブ(Dynamic Creatives)」を利用してキャンペーンの強化に取り組んでいる広告主の皆さんには、「ダイナミッククリエイティブの最適化(Dynamic Creative Optimization: DCO)」の仕組みをしっかり理解して、現在の取り組みを次の段階へとステップアップすることをおすすめします。
以下では、DCOの仕組みについて解説します。
「ダイナミッククリエイティブの最適化」入門
最初に「ダイナミッククリエイティブ」と「ダイナミッククリエイティブの最適化」のコンセプトを見てみることにしましょう。この2つに共通点もありますが、相違点もあります。まずは、相違点をしっかり理解しておきましょう。
- 「ダイナミッククリエイティブ」は、買物客のデータ(表示した商品、位置情報、表示時間など)にもとづき、広告クリエイティブにグラフィック要素を組み合わせたものです。これらのグラフィック要素はディスプレイキャンペーンの設定時に手作業で行うことができ、クリエイティブはリアルタイムで更新される各買物客の動的な情報をもとに生成されます。
図1:ダイナミックデータ(商品と地理情報)と静的なグラフィック要素を使用したキャンペーンのルック&フィール
- 一方、「ダイナミッククリエイティブの最適化」はここからさらに一歩踏み込んで、単にパーソナライズされたデータをもとに汎用的なクリエイティブを組み立てるのではなく、機械学習テクノロジーを使って各買物客やコンテキストに最適なビジュアル要素をリアルタイムで選択し、コンテンツとクリエイティブの両方を最適化します。
こうした最適化の第一の目的は、キャンペーンのパフォーマンス改善(クリック率、コンバージョン率、売上UPなど)にあります。
図2:ダイナミックデータと動的に最適化された要素(地理情報 vs 評価)を使用したキャンペーンのルック&フィール
エンジンは最適化のプロセスで、まず表示するグラフィック要素の選択を行い、次にクリエイティブおよび要素のルック&フィールの選択という、2つのタスクを実行しなければなりません。
表示するグラフィック要素を効果的に選び出す技術はかなり進化しており、一般的なリターゲティングのシナリオの場合、表示される商品の数を買物客ごとに最適化することもできるようになっています。
このタスクは複雑なため、DCOは長期的な目標として、特定の買物客に関連する地理情報などを含むクリエイティブ要素を、すべてリアルタイムで選択できるようにすることを目指しています。
また、要素のルック&フィールの最適化についても、市場では多くの調査や開発が行われており、パフォーマンスは大きく改善されています。
たとえば機械学習テクノロジーでは、買物客を有望な見込み客へと導く可能性が最も高いクリエイティブの色、行動の喚起(CTA)、要素の相対的サイズを選択することができます。
今後、機械学習ツールにより多くのデータがフィードされれば、クリエイティブの最適化機能がカバーする領域はさらに拡大し、たとえばアニメーションやブランディングメッセージなども最適化できるようになるでしょう。
DCOが重視される理由
DCOを活用することによって、広告主は多くのメリットが得ることができます。
ダイナミッククリエイティブの最適化は、まず各キャンペーンの情報を瞬時に学習するところからスタートします。たとえば、任意の集団に対してどのルック&フィールが好ましいか、 CTAによるメッセージングはどのタイプが最も興味を喚起できるか、またどのディスプレイ環境が最高のパフォーマンスを発揮するかなどについての学習です。
これらの疑問に対する答えは無限に考えられますが、ダイナミッククリエイティブの最適化を活用することによって、広告主は効果的な方法に素早くたどり着くことができます。
次に、DCOはパーソナライズされたマーケティングアプローチの効果を最大化させます。
DCOの技術は各買物客ベースで機能するため、表示されるクリエイティブの大部分は特定の個人向けに最適化されています。つまり、その人にとって関連性の高い要素だけが表示され、広告のサイズや配置、色なども可能な限り最適なものが選択されます。
そのため、DCOは特にパフォーマンスがより重視されるキャンペーン(例:リターゲティング)などで優れた効果を発揮します。
また最適化のプロセスでは、広告の関連性の維持、ブランドガイドラインへの準拠に加え、キャンペーンの設定にかかる時間や複雑さを大幅に軽減するとともに、パーソナライゼーションから手間のかかるデータの準備、分析、配信に至るまで、すべてを一貫して処理することが可能になります。
こうすることで、クリエイティブ担当のスタッフはマーケティングキャンペーンの要となるクリエイティブなアイデアの創出に、より多くの時間をかけられるようになります。そして、キャンペーンでは機械学習機能がユーザのリアルタイムな行動データを継続的に収集し、キャンペーンに反映するという好循環が生まれるのです。
ますます重要性が高まるDCO
日進月歩で進化するDCOのパフォーマンスですが、この技術はまだ成熟の域には達していません。今後も進化しながら、将来の広告業界において重要な役割を担っていくことになるでしょう。
実際、DCOはこの先、クリエイティブの分野においてより多くの優れた機能を提供できるようになるはずです。しかも、その限界はまだ見えてはいません。この点については、Criteoがスポンサーとして参画したIDCのホワイトペーパー「機械はクリエイティブになれるのか?」をご覧ください。
最終的に「ダイナミッククリエイティブ」と「ダイナミッククリエイティブの最適化」のパフォーマンスの差は広がり続けることになるでしょう。
図3:DCOで動的に最適化されるパラメータの例
DCOの検討に際して考慮すべきもう1つの重要な点は、買物客へのフォーカスです。DCOはクリエイティブをインプレッションごとに最適化できるので、広告主は、パブリッシャーのウェブサイト(アドブロックによってユーザへのリーチが難しくなりつつある)で買物客と最適なコミュニケーションがとれていることを確信できるでしょう。
また、現状では、DCOは主にマーケティングファネルの下位層のキャンペーンで用いられていますが、DCOの可能性はこれだけにとどまりません。顧客獲得やオムニチャネルといった他のキャンペーンをはじめ、ネイティブ/動画インベントリなどのHTMLバナーの背後にある他のインベントリでも、DCO活用の可能性は無限にあります。
Criteoエンジンによるリアルタイムのクリエイティブ最適化
Criteoのダイナミッククリエイティブ最適化ソリューション・「Real-time Creative Optimization: RTCO」は、特許申請中の機械学習テクノロジーです。このソリューションによって、月間12億人に及ぶアクティブな買物客のリアルタイムなコンテキストアウェアネスと行動データをもとに、各買物客の状況に合わせて広告クリエイティブを詳細レベルで選択・最適化することが可能になります。
RTCOは、高度な予測入札テクノロジーと強力な商品レコメンド機能を併せ持ったDynamic Creative Optimization+のコンポーネントの1つであり、Criteoエンジンにも組み込まれています。
RTCOには、広告主のブランドガイドラインやクリエイティブ要素、画像が含まれる機械ベースのブランドフレームワークがフィードされます。そして、買物客の状況に合わせてクリエイティブが選択・最適化されると、その広告がデバイスのタイプや利用可能なインベントリに応じてリアルタイムで表示されます。RTCO(およびCriteoエンジン全体)は、継続的に成長し続けるCriteoショッパーグラフのデータセットを使用しているので、利用可能なデータが多ければ多いほど、より優れた予測効果と最適化が実現します。
CriteoのDCO+サービスでは、ブランド要件に合わせて視覚的に訴求効果の高い広告を生成することができます。デバイスやチャネル、フォーマットを横断して買物客1人ひとりに合わせた最高レベルのパーソナライゼーションを提供することによって、エンゲージメントとコンバージョンを向上させるのです。
実際、最近行われたDCO+の機能強化によって、Criteoを利用する広告主の売上は最大12%増加し、デザインの柔軟性やパフォーマンスの向上をも実現しています。
近い将来、他の領域への応用も期待されているCriteoのダイナミッククリエイティブの最適化は、強力なマーケティングツールとして広告主のキャンペーンを改善し、優れた成果を上げるための貴重なチャンスを提供します。