コロナ禍で半数以上がキャリア見直し。働く女性の意識に起きた変化とは?

更新日 2020年12月21日

浮いた時間でキャリアアップ

新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わった今、働く女性たちの意識も大きく変わりつつあります。日経ウーマノミクスプロジェクトが2020年8月下旬に女性1136人を対象に行った調査では、全体の54.6%がコロナウイルス流行を機に「転職や副業、学びなおしを具体的に考えたり、行動したりした」と回答、コロナウイルス流行による生活の変化を機に、キャリアの見直しを始めた女性が多いことが明らかになりました。

特に目立ったのが、テレワークの普及で浮いた通勤時間を「学び直し」の時間に当てている、という声です。「オンラインで外国語の取得にチャレンジしている」(40代)、「Pythonのプログラミングと簿記の勉強を始めた」(50代)など、将来のキャリアアップに役立つ資格の取得やスキル向上を目指す人が多いようです。

7割がテレワークを評価。人事考課への不安も

同じく日経ウーマノミクスの調査では、テレワークをしていると回答した950人のうち「ほぼ毎日テレワークをしている」と回答した人が50%と最も多く、「週に2~4日」と回答した人が約35.8%と、働く女性たちのあいだでもテレワークはもはや当たり前の働き方として定着していることがわかります。そして、テレワークをしている女性たちに働きやすさを聞いた問では、約7割が「とても働きやすくなった」と回答。特に「子どもの下校時に家にいてあげられるようになった」「親の介護に対応できるようになった」と、家庭生活への負担が軽減したことによる恩恵を実感している女性が多いようです。その一方でリモートワークではオン・オフの切り分けが難しいことも事実で、「子供が帰宅後は仕事ができない」という切実な声も。

また、リモートワーク中の人事考課について懸念する声も聞かれました。もっとも多かったのは「働きぶりが上司から見えないので、きちんと評価してもらえるか不安」という声。一方、管理職に就く女性からは「部下の管理が大変」との声もきかれました。お互いに画面越し・電話越しでしか話せない状況にコミュニケーション不足を感じているのは上司も部下も同じ。しかし、コロナへの対応策として急遽リモートワーク体制を敷いた企業では、その期間の人事考課基準が確立していないところが多いことから、特に評価される側の立場の社員たちを不安な気持ちにさせているようです。

日本人はテレワークが苦手?「オフィスより生産性下がる」が50%

「家事や勉強との両立がしやすく、働きやすい」という点で高評価を得ているリモートワークですが、「働きやすさ」以外の指標でテレワークの実態をみてみましょう。日本生産性本部が2020年7月に1100人を対象に行った調査では、約50%が「テレワークで生産性が下がった」と回答。IT大手のレノボが同年5月に世界各国で実施した調査でも「オフィスより在宅のほうが生産性が下がる」と回答した人が、日本では40%に上りました。アメリカ、ドイツ、フランスなど欧米諸国で同じ回答をした人は10%台だったことを鑑みると、日本人は世界的に見てリモートワークによる生産性の低下を感じる人の割合が高いことがわかります。この原因としては、海外の企業の多くが個々の社員の役割や専門性を明確にしたジョブ型雇用を採用しているのに対し、日本企業の多くがチームで働くことを前提としたメンバーシップ型の採用をしているため個々の社員の役割が不明確で、在宅になると何をすべきかわからなくなる社員が増えるためだと指摘する声もあります。

こういった状況に、当然、経営者側も危機感を抱いています。日本経済新聞が2020年9月に公表した「社長100人アンケート」の結果によると、自社の労働生産性がテレワークによって「変わらない」と答えた経営者は54.6%、「上がる」と回答した人は20%、「下がる」と答えた人は8.5%に。「コミュニケーション不足」と回答した人は52.4%に上りました。

これからの感染状況にもよりますが、日本ではテレワークを加速させるよりもむしろ、「上司に働いている姿を見て評価してほしい」という人事考課上の不安を解消するため、あるいはチームと円滑にコミュニケーション取ることでメンバー1人ひとりの生産性を上げていくため、テレワーク+オフィスワークをバランス良く組み合わせて働ける仕組みの確立が求められることになりそうです。