新型コロナウイルスの影響で、すっかり定着した感のあるテレワーク。リクルートキャリアが2020年8月に全国の20代~60代の就労者を対象に行った調査では、緊急事態宣言下でテレワークを経験した人は、東京で71.1%、神奈川で63.8%、大阪で64.8%に上ったことがわかりました。そして緊急宣言解除(5月25日)以降のテレワークの回数について、「もともと自由にテレワークができたため、変わらない」が7%、「自己判断で自由にテレワークができるようになった」が13.4%、「週○回は出勤」など会社の基準で出勤割合が変わった」が15.5%で、全体の約36%が何らかの形でリモートワークをしていることが明らかになりました。それはすなわち、社員が毎日オフィスに参集しなくても、ビジネスが遂行できている企業が少なくないということの表れでもあります。
こういった働き方の変化を受けて、オフィスに対する考え方にも確実に変化が起きつつあります。オフィスビル専門の不動産仲介会社であるオフィスナビ株式会社が、2020年9月に行った「Withコロナ時代における働き方とオフィスに関する意識調査」では、オフィスの移転・分散・解約・レイアウト変更などについて「予定している、検討している」と答えた企業が約59.5%に上りました。
さらに、オフィスに求めるものがコロナ以前と比べて「変わった」と回答した企業は55.5%で、全体の半数を超えました。
コロナをきっかけに、以前よりも重視されるようになったのものとして最も多かった回答は「社内コミュニケーション活性化」(21.9ポイント上昇)、次いで「BCP(事業継続計画)」(15.8ポイント上昇)、「社員のモチベーション向上」(15.3ポイント上昇)という結果に。一方で、「立地(エリア・路線)」(21.9ポイント低下)、「駅からの距離・アクセスの良さ」(18.9ポイント低下)、「ビルグレード」(10.2ポイント低下)は以前に比べて重視されなくなり、オフィスに対するコスト意識が高まっていることが伺えます。
利便性が高く、豪華な設備を備えたオフィスよりも、社内のコミュニケーションの活性化を促す仕組みやいざというときにスムーズにリモートワークに切り替えられるオンライン環境の充実、リモートワークでの社員のモチベーションを向上・維持させる仕組みの整備に関心を寄せる企業が増えているということができそうです。
実際、同調査でも、Withコロナ時代における働き方やオフィス環境の課題の有無について、77.6%の企業が「ある」と答えています。具体的には「社員のコミュニケーション」「IT環境の整備」が上位で、「ソーシャルディスタンスの確保」「社員の教育体制」「社員の評価」が続きました。
オフィスに対する意識の変化を受け、新たなサービスも続々と登場しています。「区分所有オフィス®」を主軸に資産形成コンサルティングを行う株式会社ボルテックスでは、運営するオフィス賃貸に関する仲介サイト「東京オフィス検索」で、最大4種類の賃貸オフィスをオンラインで同時に内見することができる新サービスをスタート。非対面で物件見学することで感染リスクを下げると同時に、複数の候補を同時に見比べることで効率的に物件の見学・比較検討ができるのが特徴です。
詳細は⇒株式会社ボルテックス「東京オフィス検索」オンライン同時内見サービス
また、オフィスナビ株式会社は、主に宿泊施設の清掃代行を行う株式会社EDEYANSと業務提携し、オフィスの除菌・抗菌サービスをスタート。新型コロナウイルスの感染予防対策や拡大防止対策を提供することによって、オフィスの安心・安全確保や事業継続計画(BCP)ニーズに応えるのが狙いで、料金は50平方メートルまでのオフィスの場合、除菌作業が年12回で12万円、抗菌作業が年4回で4万円(いずれも税別)となっています。
働き方の変化に伴い、オフィスの在り方が大きく変化することによる影響は不動産業界だけでなく管理・メンテナンス業界、インテリアやオフィス機器業界、社員食堂やケータリングビジネスなど、今後より幅広い業界に広がっていくものと見られています。同じ業界にあっても、この大きな変化を大きなチャンスにすることができるかどうかによって、明暗が分かるといっても過言ではなさそうです。