ググらず、タグる若者たち~シミュラークルな情報伝播とは?

更新日 2021年01月13日

「ググる」から「#タグる」へ

先日、大学生の長女と一緒に外食にすることになった50代の女性・Mさん。長女に店探しをさせようと、「渋谷の美味しいお店、ググっといて(Google検索で調べておいて」と頼んだところ、「え~、ママって古い。今どき『ググる』だって~」と失笑されてしまった・・・のだとか。そう、Mさんの長女のような若者、特にZ世代(16~24歳前後)の若者たちにとって、もはや検索=ググるではなくなりつつあるようです。では、彼らはどうやって行きたいお店や旅先を調べているのでしょうか?

Mさんの「ググる」を笑った長女が、お店探しに使ったのはInstagram。彼女はInstagramが2017年12月に開始したハッシュタグフォロー機能を愛用していて、普段から「#渋谷ランチ」をフォロー。Instagramを開いて、「#渋谷ランチ」をクリックすれば、インスタグラマーたちが「#渋谷ランチ」をつけて投稿したランチの写真がずらりと表示されます。写真をざっと眺めた彼女は「あ、ここ美味しそう!」と気になる写真をクリック。どのお店で撮影された写真かをチェックすると、そのお店のInstagramページへ飛び、あっという間に予約完了。こうしてMさん親子は、お店の広告や検索エンジンのおすすめ記事ではなく、会ったこともない・本名も知らないインスタグラマーが「おいしかった!」という短いコメントとともに投稿した写真によって、その日の外食先を決定したのでした。

このMさんの長女のように、検索エンジンではなくSNSでハッシュタグを使って情報収集をする=「タグる」人が、若い世代を中心に急速に増えています。

「ググる」ではなく「タグる」若者が増えている理由は?

ではなぜ最近の若者は「ググる」よりも「タグる」を好むのでしょうか?その理由について電通イノベーションラボの天野彬氏は次の3点を挙げています。

1情報源としての信頼性が高い

情報洪水といわれる今の時代。若者たちは大企業の広告や検索エンジンが選別した情報よりも、身近な友人や一般ユーザーが発信する情報を信頼する傾向にあります。

2リアルタイム性が高い

InstagramやFacebookなどのSNSは情報発信のハードルが低くいため、他の媒体(ウェブサイトやテレビなど)に比べて更新頻度が高く、つねに新しい情報がリアルタイムに発信されていきます。ネット環境に慣れ親しんで育った若者たちは、この即時性や速さ、リアルタイム感を重視します。

3スマホスクリーンのサイズに適している

若者たちが主に利用するデバイスはPCではなくスマホ。スマホで閲覧するにはSNSの投稿くらいのボリュームの記事が最適なのであって、一番下までスクロールしないと欲しい情報が手に入らないウェブ記事を読むことを「負担」に感じる若者たちも多いと言われています。

こうして日常的に「タグる」ようになった若者たちの行動変化をさらに後押ししたとされているのが、前述したInstagramの「#フォロー」です。この機能の登場によって、従来のように特定のアカウント(ユーザー)をフォローするだけでなく、「#渋谷ランチ」「#温泉」などテーマごとにシェアされたものをチェックすることが可能に。自分と同じ好みの人、同じことに関心がある人の投稿をテーマ別に素早く探せるようになったのです。

加えて、SNSには写真という非常に重要な要素があります。例えば「何か美味しいものが食べたい」「おしゃれなアイテムが買いたい」とか「素敵な場所に旅行に行きたい」と思っても、具体的にそれが何なのか、どこなのかがわからないこともありますよね。漠然としすぎていて明確な「Word」では探せないケースです。でも、InstagramをはじめとするSNSの投稿には、ほとんどの場合、画像が添えられています。画像を見ながら、「いいな」と思ったハッシュタグをたどって情報を探していくうちに、「欲しいもの」「食べたいもの」「行きたい場所」を「発見する」ことだってできるのです。

SNSマーケティング成功のヒントは「シミュラークル」

こうしてますます多くの時間をSNSで過ごす人が増えていることを背景に、SNSは企業やブランドにとって非常に魅力的なマーケティングツールになりつつあります。すでにInstagram等のSNSでアカウントを作り、情報発信をしている企業やブランドも珍しくありません。しかし、アカウントを作れば成功するというわけではなく、中にはアカウントを作ったものの何をしていいのか思い悩んでいるケース、情報発信がまったく効果を生んでいないケースもあるでしょう。どうすれば、SNSをマーケティングツールとしてうまく活用できるのでしょうか?

そのヒントの1つとなるのが、SNSならではのトレンドの生まれ方「シミュラークル」です。SNSを見ているとよくわかるのですが、SNSに投稿される写真の中には「すごく似ているもの」が多いのです。つまり、有名な絶景ポイントや、話題のお店の名物料理、人気店の新商品、人気イベントの写真など、同じような写真が複数の人たちによって投稿されています。これらは、誰かのSNSでの投稿を見て「ここに行ってみたい!」「食べてみたい!」と思った人が実際にその場所に言ったり、食べたりしたときに撮影したもの。SNSに触発されて行動する人は、自分自身も同じような写真を投稿してしまう傾向にあるのです。

この場合、もはや最初にその写真を誰が投稿したのかはわからなくなっています。つまり、情報の発端はよくわからないけど、多くの人がそういう体験をコピーしたり、同じようなことをしたりて、それをSNSで発信する⇒すると、さらにそれを見た人が、同じことをしたいと思う・・・。このようなかたちの情報伝播はシミュラークル型の情報伝播と呼ばれ、今のSNSではシミュラークル型の情報伝播から新たなトレンドが生まれると言われています。

企業やブランドがSNSをマーケティングツールとして活用するには、多少なりとも、このシミュラークルを意識することが欠かせません。S自分たちが伝えたい情報や売りたい商品を見せるという発想だけではなく、どうすればユーザーに「真似したい」、「写真を撮りたい」「行ってみたい」と思わせることができるのだろうか?という発想で発信内容や掲載する写真を選ぶことから始めましょう。もちろん、#をつけることも、お忘れなく!

SNSを活用したCriteoのソリューションについて詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。