新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらしたパンデミックによって、消費者の行動に大きな変化が生まれています。この変化は、特に現在行われているソーシャル・ディスタンシング関連対策の影響が大きく、人々はかつてないほど長い時間を自宅で過ごすことを余儀なくされています。普段なら大部分の時間を学校で過ごしている子どもたちも、今は大人たちと同様に自宅での待機を強いられています。
オンライン授業へのシフトが急速に進み、レストランや遊び場、公園のほとんどが閉鎖される中、消費者の多くは心の健康を蝕みかねない心理的な脅威、「退屈」との戦いを余儀なくされているのです。
米国ではソーシャル・ディスタンシング による影響を受け始めた3月中旬以降、オンラインゲームの売上が75%もの急上昇を記録しました。ストリーミング動画の利用も、今なおコンスタントに増加しています。
一方で、子どもたちがモニターと向かい合う時間を減らすためか、モニターを使わずに楽しめる昔ながらのゲーム、アートや工芸、庭で楽しめる遊びを取り入れる家庭も増えています。
モニターを使わずに、家族全員で楽しめるおもちゃを
子どもも大人も、自宅で家族みんなで有意義な時間を過ごすための方法を模索しており、多くの玩具メーカーがそのニーズに応えようとしています。
MediaRadarによると、2月には1週間あたり平均300万ドル未満だった玩具・ゲームへの広告支出は、3月には急増して700万ドルに上りました。玩具ブランド大手であるMattel、Hasbro、LEGOによる広告支出の合計をみても、2月の580万ドルが3月には1,900万ドル近くに急増、前月比で230%増という結果になっています。
月間20億人を超えるアクティブな買い物客と、1万5,000の小売業者から集約した豊富なデータにもとづくCriteoのインサイトからは、新たに出現したソーシャルディスタンシング・エコノミーにおいて、世界中の消費者はアナログのおもちゃやゲームの価値を再認識している(あるいは初めて知る機会を得ている)ことがわかります。そこで、ここではCriteoによる最新の分析結果をご紹介させていただきます。
ジグソーパズル
3月後半、米国のパズルメーカーのRavensburgerの売上は前年比370%という急激な増加を記録し、3月25日の売上にいたっては2019年の同じ日と比べて10倍という結果になりました。
以前から同社では、ジグソーパズルの「ピースが積み重なり、混沌とした状態に秩序をもたらす」作業には心を落ち着かせる効果があると認識していましたが、同社でCEOを務めるフィリップ・フランケ(Fillip Francke)氏はCNBCの取材に対して「136年を誇る弊社の歴史の中でも、このような状況は一度もなかった」と語っています。2019年、同社の全世界におけるジグソーパズルの売上は2,100万個、北米での1分あたりの平均販売個数は7個でした。ところがコロナウイルスの流行によってパズルの需要が急激に高まり、2020年に入ってからは北米での1分あたりの売上個数は20個にも達しました。
Criteoのデータによると、ジグソーパズルの売上は3月中頃から世界規模で上昇に転じ、多くの市場で歴史的と言っていいほどの売上増加が続いています。
3月27日から4月26日の30日間において、売上が増加したのはオランダ(+138%)、ロシア(+140%)、フランス(+171%)、日本(+269%)、英国(+321%)、イタリア(+379%)、米国(+509%)、ドイツ(+539%)、オーストラリア(+563%)、スペイン(+677%)、ブラジル(+1011%)となっています。
ブロック
4月の終わり頃になると、オーストラリアのeBayではLego製品の売上が前年比で64%増加し、日曜の夜には前年比92%にまで伸びることもありました。Lite-Brite、Lincoln Logs、K’nexなど、想像力を使って組み合わせを考え、手を使って遊ぶ昔ながらの玩具を手掛けるBasic Funでも売上が急上昇しています。最高責任者のジェイ・フォアマン(Jay Foreman)氏は、New York Postに「第一四半期の業績としては、今四半期が過去最高になった」と語っています。
Criteoのデータを見ても、3月27日から4月26日の30日間において、ブロック(建築・工事セットの玩具、フォームブロック、積み木などの商品を含む)の売上がメキシコ(+58%)、イタリア(+60%)、フランス(+79%)、ドイツ(+96%)、ブラジル(+119%)、日本(+130%)、オーストラリア(+131%)、米国(+140%)、英国(+143%)で伸びていることがわかります。
トランポリン、ブランコ、遊具
子どものエネルギーを発散させてくれるおもちゃとして、急激に売上が伸びた商品もあります。日本ではミニトランポリンに関心が集まっており、アメリカではエアー遊具、アスレチック遊具セット、すべり台などを裏庭に設置する家庭が増えています。ままごと用玩具、バスケットボールリング、トランポリンなどを製造するMGA Entertainmentの最高責任者は最近、2019年と比較して3月の売上が100%増加したことをメディアに語っています。
Criteoのデータによると、3月の終わりから4月の終わりにかけて、トランポリンの売上がオーストラリア(+66%)、ブラジル(+179%)、ドイツ(+196%)、英国(+342%)、ロシア(+392%)、米国(+485%)、フランス(+592%)、オランダ(+893%)で増加しています。
ブランコや遊具の売上は、1月と比較して米国(+694%)、ドイツ(+824%)、フランス(+1387%)で極めて高くなりました。
音楽・美術、お絵描き用玩具
学校での美術の授業は受けられなくなりましたが、多くの子どもたちが自宅で鉛筆やペンを使って絵を描いています。絵の具を使って絵を描いたり、色を塗ったり、彫刻や工作を楽しむ子もいます。学校での音楽の授業も中止され、ライブフェスティバルやコンサートなども当然ながらキャンセルされています。一方で、子ども向けの音楽ストリーミング配信は、ここ数週間で2桁の増加を記録しています。
アート・お絵描き用玩具(粘土、スライム、絵描き用タブレットを含む)の売上は、1月と比較してロシア(+35%)、英国(+141%)、ドイツ(+159%)、フランス(+261%)、米国(+653%)、ブラジル(+674%)で増加しました。
音を使った玩具の売上も、オランダ(+40)、ブラジル(+166%)で増加しています。
ソーシャル・ディスタンシング2.0
新型コロナウイルスによるパンデミックからの再起を考えるにあたって、また一部の国では一からビジネスを再開するにあたって、マーケターにはある疑問が浮かぶでしょう。それは「コロナウイルス感染拡大が終息した後、ショッピングのトレンドはどうなるのか?」ということです。
実際のところ、はっきりとしたことは誰にもわかりませんが、部分的にわかってきたこともあります。つまり、「経済が上向きになってからも、多くの人々は他者との距離を意識し続けるだろう」ということです。この「ソーシャル・ディスタンシング2.0」とでも呼ぶべき考え方が定着することによって、レストランやバー、店舗、劇場、イベントスペースなどは定員を半分程度に抑えて使われるようになり、次の消費者行動のトレンドを作る原動力となっていくでしょう。
マーケターができること
担当カテゴリーが玩具やゲームの場合はもちろん、そうでない場合も、マーケターには、顧客のニーズに応えるために今すぐできることがあります。
1.オフラインの顧客にアプローチする。
営業を停止している実店舗がある場合は、顧客や店舗の売上データを活用し、実店舗の買い物客に対してオンラインで広告を展開しましょう。困難な状況が続いている今現在も、そして感染拡大が終息を迎えた後も、顧客とのつながりを維持することは重要です。
2.関連性の高いオーディエンスを特定する。
カテゴリーの成長度を踏まえ、「インマーケットな」オーディエンスに直接アプローチし、商品の週単位のトレンドをモニタリングしましょう。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)による影響 – ダッシュボードが、役立つリソースとなります。
3.対象セグメントを拡大する。
Criteoではあらゆるニーズに対応できる選択肢をご用意しており、特定の購入・閲覧傾向を分析して御社にとって理想的なオーディエンスを構築したり、オーディエンスにアプローチしたりすることができます。たとえば、「子どもの過ごし方」「自宅でのエクササイズ」「在宅勤務」などのグループをターゲットにすることも可能です。
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