今や企業のオンラインマーケティング活動において欠かせない存在になった「ダイナミックリターゲティング」。この最先端の広告手法はいったいどのような背景で生まれたのでしょうか?今回から複数回に分けて、ネット広告の歴史を振り返りつつ、ダイナミックリターゲティング誕生の背景を解説します。第1回のキーワードは「ターゲティング」と「リスティング広告」です。
- ネット黎明期のターゲティング
ネット広告の発展過程をたどる上で、「ターゲティング」の果たした役割を避けて通ることはできません。
ターゲティングは、ネット広告に関わらず、すべての広告において重要な要素です。例えば週刊誌は広告主に、発行部数や読者の平均年齢や平均年収、趣味趣向などのユーザーデモグラフィックを提示します。広告主はこれらのデータを参考に、訴求したい商品やサービスにマッチするメディアを選定していくわけです。これはインターネットにおいても同様で、ネット黎明期の2000年代前半までは、メディアから提供されるユーザーデモグラフィックが、ターゲティングの主な材料だったのです。
もう1つ、よく行われていたのが「プロパティ」機能を使ったターゲティングです。当時、ヤフーなどのトップページには、「プロパティ」と呼ばれる目次機能がありました。たとえば、カーナビについて調べようと思ったら、まずプロパティの中にある「趣味とスポーツ」をクリック、そして「車」⇒「カーナビ」とクリックして、やっと目的のサイトを探しあてていたのです。そのため、カーナビを取り扱っている企業は「趣味とスポーツ」「車」「カーナビ」の各ページに広告を出稿することで、ユーザへのリーチを測っていたのです。そう、基本的には、自動車専門誌に広告を出稿するのと同じ感覚です。
- リスティング広告の登場
そして2002年、ネット広告に一大革命が起きます。リスティング広告(検索連動型広告)の誕生です。2002年9月にGoogleが、11月にはOvertureが日本でサービスを開始しました。これによって、ユーザの性別や年齢、年収、趣味趣向などの統計データに頼らず、ユーザが「今」、「自らの意思で」探しているキーワードの検索結果にダイレクトに広告を配信することが、可能になったのです。例えば東京に出張予定のあるユーザが「東京 ホテル」と検索したまさにそのページに、関連性の高いサイトが表示されるのですから、広告効果がUPしたことは言うまでもありません。
当然、リスティング広告は、瞬く間にネット広告市場を席巻。サービス開始からわずか5年後の2007年には市場シェア30%に達し、2011年にはシェア40%、その市場規模は2500億円を超えるまでに急成長を遂げました。
- リスティング広告がもたらした変化
また、リスティング広告は、一般的に「運用型広告」と呼ばれるようになる、新しい広告の形を生み出しました。それまでの広告は、配信される「枠」や配信期間、配信するインプレッション量があらかじめ決められていて、広告掲載中に広告原稿やデザインなどのクリエイティブを変更することは、ほとんどありませんでした。
しかし、リスティング広告では、入札単価のオークションにより表示箇所や「枠」が決まります。すなわち、入札単価を「運用」することが、よりよい「枠」に広告を掲載するための重要な役割を果たすのです。加えて、入札単価調整、クリエイティブのテスト、効果検証といった「運用」を日々行うことによって、効果を改善していくことも可能になりました。
リスティング広告の登場が、その後のネット広告業界にいかに大きな影響を及ぼしたかは、皆さんもご存知のとおりです。
次回はオーディエンスターゲティングの誕生とその影響について振り返ります。