長引くコロナ禍で外に出る機会が減り、体が重い・・・という方も多いのではないでしょうか。特に自宅でテレワークをしている場合は、平日はほぼ1日中自宅で仕事という生活で運動不足になり、体重増加や精神的なストレス、睡眠障害などに悩む人も少なくないでしょう。
そんな悩みを解消する手段として、「断食」や「ファスティング」に注目が集まっています。
断食とは、食べものを極力摂取しないことで内臓を休ませ、活性化させることによる健康法のこと。ダイエットや自然治癒力向上を目的に行われることが多く、仏教の僧侶などが「修行」として行う断食とは別のものです。実施期間中もまったく飲食をしないというわけではなく、一般的には、酵素ドリンクや野菜ジュースや重湯などで必要最低限栄養を摂りながら行われることが多いようです。会食の機会が少ないコロナ禍は自分で食事の内容や回数をコントロールしやすく、実は断食に挑戦しやすい環境ということもあり、断食をテーマにしたイベントや宿泊プランも相次いで登場しています。その概要やダイエット以外の効果について探ってみました。
仕事をしながらホテルで断食。その効果は?
「適切な方法がわからない」「食欲に負けてすぐに挫折してしまいそう」という断食初心者に人気なのが、ホテルや専用施設で行われている断食プランの利用です。日帰りから1か月近く滞在する長期プランまで様々なプランがあり、その内容も様々ですが、一般的には専門家監修のもと、施設側が用意した栄養補助食品を採りながら断食を行い、合間にヨガレッスンやトレーニング、瞑想などのアクティビティを行うプランが多いようです。
静岡県伊東市の「アイウェルネス伊豆高原」では、テレワークをしながら断食体験ができる「スーパーシンプルプラン」を発売しています(1泊1万1000円~)。滞在するのは、無料Wi-Fiとライティングデスクが完備された完全個室。希望すればカラープリンターや作業デスクも無料で借りることができ、ワーケーションにはもってこいの環境が整っています。ファスティング(断食)コースとプチファスティングコースの2つがあり、ファスティングコースを選ぶと、宿泊期間の半分は酵母ジュースやお茶、水のみで過ごしますが、残り半分の期間は「補食」とよばれる軽い食事を食べることができ、チェックアウトの朝には「ご褒美食」が提供されます。前半がきつそうですが、実際にやってみると酵素ジュースなどを自由に飲むことができるので、意外と空腹は感じないそうです。また、仕事の合間や余暇には館内の温泉に入ったり周囲を散歩したりしてリラックスしたり、気分転換にヨガやピラティス、気功などの日替わりプログラム(1回550円)で体を動かすことができるのも魅力ですね。
アイウェルネス伊豆高原 出典/詳細:アイウェルネス伊豆高原プレスリリース
実際にテレワークをしながら断食を体験した人からは、次のような声が聞かれました。
- 食事やその準備で仕事を中断しなくて済むので、すごく集中できた。
- 自宅だと仕事の合間に間食してしまうが、ここでは散歩や温泉で気を紛らわすことができた。
- 仕事を休まずに断食できたのがよかった。
- 自宅でのテレワークと違い、旅行気分を味わいながら働けるので心身ともにリフレッシュできた。
- 体重が減り、頭がクリアになったような気がする。
ダイエットできただけでなく、「集中力が増して頭がクリアになった」との声もあり、仕事への相乗効果も期待できそうですね。
京都観光しながらファスティングできるホテルも
GOOD NATURE HOTEL KYOTO(京都市左京区)の「ファスティング&リセットプラン」(2泊3日、1室1名6万円~税込)は、より手軽にプチ断食が体験できるプランで、次の2つを目的としています。
- 胃腸を休ませ、消化酵素の消耗を抑え、内臓をリセットする。
- 「食」から離れることで、自身の食生活を振り返り、より良い食生活を実践できるきっかけを作る。
プランは原則2泊3日で、スケジュールは以下の図の通り。1泊目はチェックイン後に管理栄養士のカウンセリングを受ける必要がありますが、2泊目以降は基本的にフリーなので、仕事や観光をすることも可能です。食事は1泊目夜の準備食と3日目朝の回復食。2日目はスムージーと酵素ドリンクのみです。食べ歩きを我慢できるなら、2日目に京都観光・・・というのも良さそうですね。
ファスティング&リセットプランのスケジュール 出典/詳細:GOOD NATURE HOTEL KYOTOプレスリリース
16時間断食するオートファジーダイエットも人気
普段の生活を続けながら1日のうち16時間だけ断食する、通称「オートファジーダイエット」を実践する人も増えています。オートファジーの本来の意味は、酵母や植物、動物など、すべての生物に備わっている細胞内の浄化・リサイクルシステムのこと。人間の場合、16時間食事をしない時間を設けると、このオートファジーの機能が発動し、古くなった細胞の浄化・リサイクルが活発に行われるようになります。オートファジーが適正に機能することによって、血液中の糖質や脂質が減り、血液や血管の状態も改善され、体内の余計な脂肪は分解されてエネルギーとなる・・・というのが、このオートファジーダイエットの考え方。内科医の青木厚さんが自著「『空腹』こそ最強のクスリ」という著書の中で「8時間食事術」として紹介したことで、一気に知られるようになりました。今では雑誌やウェブメディアでも広く紹介され、「半年で15キロやせた」「アレルギーが改善した」という体験談をあちこちで読むことができます。
オートファジーダイエットの方法は実にシンプル。ルールは1日24時間のうち16時間断食し、残りの8時間で食事を済ませることのみ。8時間で食べる食事についてもその内容に特に制限はありません。ただ、当然ながら暴飲暴食やカロリーの高いものは避けた方が、効果を得やすいそうです。8時間を1日のうちのどこに設定するのかも自由ですが、16時間の断食時間には睡眠時間も含まれるので、前述の青木先生は「朝食を抜いて12時から20時の間にランチとディナーを済ませるのがおすすめ」としています。なお、16時間の断食中もノーカロリーの飲み物は摂取が可能です。社会人の場合、接待や取引先との付き合いもあるので、通常の生活では16時間の断食は至難の業ですが、コロナ禍で飲み会や宴会が激減し、テレワークも可能な今のタイミングなら、比較的挑戦しやすいと言えるでしょう。
コロナ禍による自粛で心も体も重くなってしまいがちな日々が続きますが、この状況を逆手にとって、断食に挑戦し、心身の変化を確認してみるのも良いかもしれませんね。もちろん、行き過ぎた断食は体に害を及ぼします。特に健康に問題がある人や治療中の人は医師に相談してから行うようにしてください。