「使い捨て」の価値、高まる。コロナで揺らぐ「脱プラ」

更新日 2020年12月21日

世界的に鈍化する「脱プラ」

環境汚染への配慮から世界的に広がりつつあった「脱プラスチック」(脱プラ)の動き。スーパーやコンビニではレジ袋の有料化が進み、カフェやレストランでは使い捨てのプラスチック製の食器やカトラリーが紙や竹など植物由来の材質でつくられたものに替えられるなど、日本でも脱プラの動きが加速しました。毎回新しいプラスチック製の使い捨てカップを使うよりも、持参したタンブラーを使うほうが「環境に優しい」として評価されるようになったのです。しかし、2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、思わぬ「異変」が起きているようです。

その元凶は世界中でいまだに猛威をふるいつつある、新型コロナウイルスです。濃厚接触のみならず、日常的な接触や呼気に含まれる飛沫ですら感染の恐れがあることが明らかになるにつれ、使い捨て製品が「衛生的だ」という理由で、その価値を見直されつつあるのです。

この動きは日本だけでなく、「使い捨て」に厳しかった欧米でも起きています。イギリスでは使い捨て可能なプラスチック製のストローの禁止を当初予定していた2020年4月から10月に延期されることが決まっています。日本経済新聞の報道(2020年8月21日)によると、EUでも、2021年に発泡スチロール製の食品容器の流通などを禁じる方針について見直しを求める声が出ているということです。

「レジ袋有料化」は、効果なし!?

日本でも明らかに「脱プラ」と逆行する動きが出ています。経済産業省の調べでは、2020年4月の食品トレー等に使われる発泡製品の国内生産は、前年同時期の6.7%増、その後も増加傾向が続いています。レジ袋など放送用フィルムの国内生産も3.5%増を記録。飲食店の営業自粛で持ち帰り食品の需要が伸びたことにより、レジ袋や包装材の消費が増えたことが原因と考えられます。

そもそも、レジ袋のプラスチックごみに占める割合はわずか2~3%にとどまっており(※)、レジ袋の有料化は、プラスチックごみ削減に大した効果をもたらさないという見方も。このまま新型コロナウイルスの感染拡大が収束しなければ、使い捨て製品の需要がさらに増え、脱プラの流れが鈍化する可能性は極めて高いと考えられます。期待されるのはプラスチックに代わる新素材の開発です。しかし、注目されたバイオマス由来のバイオプラスチックについては、必ずしも微生物によって分解されるとは限らず、場合によっては全く分解されないこと、埋めると温室効果のあるメタンを発生させることがわかっており、国連環境計画(UNEP)では、地球温暖化に悪影響を及ぼす可能性があるとの見解を示しています。脱プラの動きを加速し、新たな市場を切り拓いていく代替素材の登場が待たれます。

※プラスチック循環利用協会調べ